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【高専生からのレポート】共創プロジェクト~KOSEN KYORYOKUTAI~

2025.09.30

JICAでは、NGO、大学、民間企業、公的機関など多様なアクターとの「共創」により、社会課題を解決する取り組みを推進しています。JICA東京ではこの取り組みの一環として、高等専門学校(高専)とJICA海外協力隊との共創プロジェクトを実施しています。

■KOSEN KYORYOKUTAIとは

このプロジェクトは、海外研修や留学に参加する高専生が、その一部の期間にJICA海外協力隊員の活動に参加することで、グローバルエンジニアに必要な国際的な視野を養い、グローバルな課題への意識を高めることを目的としています。
高専生にとっては、関心のあるテーマに関連する世界の課題や、それらの解決に向けて世界各地で行われている活動を体験する機会となり、JICAにとっては将来の国際協力人材の育成につながる取り組みです。
その試金石として、8月25日よりマレーシア・ボルネオ島でプロジェクトを開始しました。ボルネオ島のサバ森林公社エコフォレストパークに派遣されている隊員のもとに、昆虫が大好きで昆虫調査を行っている茨城高専の学生が1週間密着し、「KOSEN KYORYOKUTAI」として共に活動を行いました。

今回は、参加者である茨城高専・藤原さんの活動レポートをお届けします。是非ご覧ください!

(左)参加者の藤原さん、引率教員の横山さん

(右)密着したマレーシアで活動中の早川さん



■【高専生からのレポート】マレーシアのJICA海外協力隊への密着活動

私は8/25(月)~8/29(金)の5日間、マレーシアに派遣されているJICA海外協力隊の早川さんの活動に密着させていただき、様々な経験をしました。

初日は、午前中に緊張とともに早川さんの配属先であるサバ州森林開発公社(SAFODA)  Eco-forest parkのスタッフの方々に挨拶をしに行きました。スタッフの方々はとても親切で、私たちを快く受け入れてくれました。

あいさつの後はUMS(University Malaysia Sabah)に行きました。 UMSではまず生物多様性保全研究所(ITBC)のビジターセンターを見学させていただきました。そこでは様々な気候とそれに伴って変わる植物や動物の特徴や面白雑学などの説明を聞きました。また、そこにはものすごい量の蚊の標本が壁に掛けてあって、少し怖かったです。

その後、10,000種以上の昆虫標本がある標本庫に向かいました。そこは私にとって天国のような場所でした。コンテナのように大きい保管ケースから日本では見たことがないような形や模様を持つ個体がでてくるんです!特に印象に残っているのがケンランカマキリの標本です。図鑑で見たときは「なんだ、このカマキリ、なんかすごく気持ち悪いな」と思いました。ですが、実物は全くの別物でした。妖艶な色と光沢や立体感のある体。この機会がなければ気づけなかったことがたくさんありました。 実はこのプログラム期間中は体調がずっと優れなく、テンションが低めだったのですがこの時ばかりはとても興奮して、頭痛が悪化してしまいました。

そのテンションのまま、標本の作成実習をさせていただきました。甲虫の標本は作ったことがあるのですが、蛾の標本は初めてで、初めてのことをするときに感じるゾワゾワが、より僕の興奮を掻き立てました。実習後、教えてくれた方が何も言わずグッドサインを送ってくれたのが、とてもうれしくて、今でも覚えています。

(左)いろいろな昆虫に大興奮

(中央)これがそのケンランカマキリ!

(右)初めての蛾の標本作成

2日目は、初日にいけなかったSAFODA本部の方々に挨拶へ。自己紹介をした後、ボスの口からラグビーをしたことはあるか、という質問が飛び出したのには驚きましたが、Eco-forest parkの方々同様、快く受け入れてくれました。
Eco-forest parkに戻り、海外協力隊の短期隊員としてこられていた酪農学園大学の金子さんにGISの概要講義をしていただきました。GISの概要だけでなく効果的な使い方、使うに当たっての注意点や着眼点なども教えてくださいました。GISは、昆虫を探求するに当たって、ずっと学びたい分野だったので、とても貴重な体験となりました。これから、この知識を使ってより深く昆虫の探求をしていきたいなと考えています。

そしてその夜、早川さんとともにライトトラップを行いました。ライトトラップでもこれまた不思議な昆虫たちがたくさん集まってくれました。特に多かったのが蛾と蜂たちです。ミルフィーユのような模様だったりやけに赤い色だったりの蛾や、とても大きかったり、ライトトラップに来た他の子達を食べたりしている蜂たち。その中で気になった子を持ち帰り、後に標本にしました。誰かと一緒にライトトラップをすることが初めてだったこともあり、誰かと気持ちを共有する昆虫採集の楽しさを知れました。

(左)GISを教わる

(中央)昼も夜も虫捕り

(右)ライトトラップの様子

3日目、この日はピットフォールトラップ、バナナトラップを作りました。現地のバナナとビール、砂糖を使って作りましたが、昆虫たちがペットボトルの反射を避けるということだったので、外に落ちている枯れ葉などをカムフラージュに使いました。日本だったら黒い画用紙などを使っていたと思うので、現地の素材を活かしたトラップ作りができてとても面白かったです。また、このようなフルーツトラップは、周りの気候や食性、昆虫などによって効果が全く異なるため、その地域にあったトラップを作るのも醍醐味の一つです。
ライトトラップの配置や照らし方、ピットフォールトラップの材料選びなど、トラップを用いた活動には自分の経験・知識が役に立ったと思います。今回は1度しか行えなかったので、またマレーシアに行って、改良をしていきたいです。

4日目は体調不良で私は活動に参加できませんでした。この日に皆さんがトラップを設置してくれました。

(左)相談しながらトラップづくり 

(中央)トラップを仕掛ける

(右) こんな蝶もいました

そしていよいよ最終日の5日目。この日は前日に設置していただいたトラップを回収しに再びEco-forest parkへ。結果は、惨敗でした。いたのはアリたちばかり。目当てにしていたオサムシなどの甲虫類は全くいませんでした。とても改良のしがいのある結果に終わりましたね。やはりもう一度来るしかないな、と思いました。 その日の午後にSAFODA本部で最終報告会をさせていただきました。また、報告会の後、アカシアで作られた記念品をいただきました。このプログラムのために作っていただいたらしく、とても感動しました。



このように、このプログラムがあったからこその経験や気づきがたくさんありました。プログラムに関わった皆様には感謝しかありません。

(左・中央)どんな虫がトラップにかかっていたかな~?

(右)こんな盾をいただきました!

■隊員活動への密着を通じての学びと気づき

私が今回の密着活動で学んだことは、目的意識をいつでも持っておくという事の大切さです。早川さんをはじめとするJICA海外協力隊の皆さんは、自分たちが今していることと、将来こうしたいというビジョンを常に照らし合わせながら活動していました。そうすることで、活動が本来の目的からそれてしまうということを防げるとともに、より効率的に動けたりもするそうです。

金子さんもそのひとりでした。GISの講義でも、目的を意識しながら活動することの重要性を教えてくださいました。また、その目的について、どのような目的を設定すべきかも教えてくださいました。先生は技術を「何のために使うか」、「どのように使うか」を重要視していて、国際協力の場では技術は「人のために」使うべきだとおっしゃっていました。そのような場では、確かに本来の目的を常に意識することが大切になってくるんだなと気づかされました。



対照的に、私は目的としている活動を照らし合わせて本来の目的を再確認することが苦手です。どうしても目先の面白そうなこと、気になることに惹かれ、そちらを優先してしまうからです。今回の留学でもそうでした。本来は、昆虫の体の機能を調べて、今後の製品の開発のヒントを得ることが目的でした。ですが、実際は日本では見られない多種多様な昆虫に目を奪われ、目的をすっかり見失ってしまいました。



私は今回初めて国際協力の現場に立ち会って、目的意識を持つことの重要性に気づかされました。これからは、この学びを活かし、探求などの活動につなげていきたいです。

(左)地元のスーパーでトラップ用のビール探し

(中央)おいしかった焼きそば

(左)空がきれいでした

■今後に向けて

今回のプログラムは「絶対にまた来よう」という気持ちになるくらい充実したものでした。

初日は不安や緊張もありましたが、SAFODAやUMSの皆さんが温かく迎えてくださり、安心して活動に取り組むことができました。特に印象的だったのは、昆虫標本庫の見学とライトトラップの経験です。図鑑や写真だけでは分からなかった昆虫の実際の美しさや迫力を感じられたことは、忘れられない経験となりました。また、標本作成実習では、初めての蛾の標本づくりに挑戦し、緊張と興奮と頭痛の中ではありましたが、とても新鮮で楽しかったです。



現地では、本当に様々な昆虫と出会いました。前述しましたが日本では見られないような形や模様、色などを持った昆虫たちです。それは恐らく、ITBCビジターセンターでおしえていただいたように、気候による違いが関係していると考えられます。私は昆虫の適応能力にも興味があり、茨城工業高等専門学校で行いたい研究の一つです。



そして、金子先生に講義をしていただいたGIS。これを活用することで、気候と昆虫の特徴との関連性をデータ化することが可能であり、これからの探求活動においてとても重要です。加えてこのデータでは、特定の形の昆虫がどの気候に多く生息し、その気候からどのくらいの距離離れるとその形が確認できなくなるかなども示すことができるため、農業などにおける、昆虫による被害の対策などにも活用でき、社会へ貢献できるものでもあります。 GISの知識はまだまだなので、これからも学びを深めていき、これを実現させます。



一方で、体調不良により参加できない日があったり、トラップの成果が期待通りにいかなかったりと、悔しい思いをすることもありましたが、それも含めて「研究や探求は思い通りにならないことがある」という貴重な学びになりました。特に、現地の素材を活かして作ったトラップが思ったほど成果を上げられなかった経験は、今後改良を重ねたいという意欲につながりました。



今回の活動を通じて、昆虫探求の面白さを再確認することができました。今後はGISを活用して昆虫分布や環境との関係を探ったり、現地でのトラップづくりを工夫して成果を比較したりしてみたいです。 この経験を大切にして、さらに探求を深めていきたいと思います。

(左)最終日の報告会の様子

(右)配属先の皆さんと集合写真



藤原さんとても素敵なレポート、ありがとうございます!

藤原さん、早川さんの現地での活動の様子をもっと知りたい方は、JICA東京のInstagramにて動画で紹介しています。こちらも是非ご覧ください。


参照リンク:JICA東京instagram

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