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竹炭でインドの土壌改良!~ガンジス川流域でのNGOオイスカと農民たちの挑戦~

2025.10.06

日本でも馴染み深い竹炭を活用し、自然の恵みを持続的に活かす農法をインドで広める取り組みをレポートします。

ガンジス川流域の暮らしに立ちはだかる課題

インドと聞いて、多くの方が思い浮かべるのは、ガンジス川で沐浴する人々の姿かもしれません。しかし、ヒンドゥー教の聖地であるバラナシ周辺では、川の汚染が深刻化しており、農業用水として川の水を利用する住民の生活に大きな影響を及ぼしています。

この地域は肥沃な土壌を背景に、古くから農業が盛んですが、近年汚染された水の長期的な使用により土壌の劣化が進行、さらに化学肥料や農薬の過剰使用、また森林伐採などにより、農業の生産性や品質の低下を招いています。一部では農地として使えなくなるケースもあり、農業に依存する住民の暮らしを脅かす事態となっています。こうした負の連鎖を断ち切るためには、自然環境に配慮した農業の推進と森林保全が必要です。

◆関連リンク:案件概要表

農村近くを流れるガンジス川

持続可能な暮らしを目指して

ガンジス川流域の農民が持続可能な暮らしを営めるよう、JICAは公益財団法人オイスカと連携し、草の根技術協力事業「ガンジス河流域村における水・土・森の自然資源共生型農業技術普及による持続可能な生計向上支援プロジェクト」を2023年10月から開始しました。JICA担当者が現地を視察した様子をレポートします。

この事業では、以下の3つを柱に取り組んでおり、特に日本で実践されてきた竹炭をつかった有機農法の紹介に力を入れています。

1.竹炭を使った有機農法の普及
2.果樹・ハーブの植林
3.環境意識改善のための啓発活動

村のヒンドゥー教寺院を会場にした、農民組織集会の様子

なぜインドで「竹」?

日本人にとって馴染み深い「竹」は、インド北東部にも広く自生しており、ガンジス川では船のオールの材料に使われるなど、古くから現地の暮らしに根付いた植物です。ただし、これまでは主に建築資材として利用されてきました。このプロジェクトでは、未活用資源としてポテンシャルを秘める「竹」を活かした農法に地域の農民が挑戦しています。

日本でもよく知られているように竹炭には様々な効果があります。竹炭を土壌に混ぜることで、保水性や通気性が向上し、養分を生み出す微生物の住みかとしても有効に機能するため、土壌が豊かになり、農作物の収量や品質の向上が期待されます。プロジェクトでは日本から竹炭づくりや農業の専門家が現地を訪問し、竹を炭にする方法や農業への活用などの技術指導をしています。

雨季が始まりつつある7月上旬、ウッタル・プラデシュ州バラナシ近郊の3つの村では、炎天下の中、モデル農家の畑で竹炭の散布が行われていました。地面を計測し、比較用のエリアを残しながら、住民が自ら作った窯で焼いた竹炭を丁寧に撒いていました。

オイスカの農業専門家によると、本格的な土壌改良にはまだ炭の量が足りないとのことですが、雨季の間は炭焼きが難しいため、乾季に再開する予定です。また、炭の原料となる竹も、3つの村で植林される予定です。

別の田んぼでは、数日前に炭が撒かれた場所で女性たちが田植えをしていました。こうした地道な営みが持続可能な方法へと転換されることで、次世代へ肥沃な土地が受け継がれていくことを願っています。

(右)水田への竹炭散布の様子
(左)現地の名産品であるレンガと竹を組み合わせてつくられた竹炭窯

サリーを着た方々が田植えをしていました

豊かな自然の恵みを守るために

同じ3つの村では、住民の自然保全の意識向上と生計向上のため、現地の植生に即し、かつ換金作物となるマンゴーやグァバ、パパイヤなどの果樹の植林も進められています。

モデル農家の土地には数本ずつの苗木が植えられ、順調に育っている様子が確認できました。3村で合計約500本の苗木が植えられ、大切に育てられています。時間はかかりますが、街で販売できるような立派な果実が実ることを期待しています。

植林された果樹の苗木

時間はかかるが、確かな一歩

農業は自然を相手にすることもあり、想定どおりにいかないことも多く、土づくりや樹木の成長には長い時間がかかります。そのため、すぐに「生活が改善した」「収入が増えた」というような目に見える成果を得るのは難しいかもしれません。

しかしながら、地道な活動を継続しているコーディネーターや農民の方の活動を見て、時間はかかっても、彼らの生活をより良いものにしていくために必要な取組であることを実感しました。

ウッタル・プラデシュ州森林局の局長も「今回の取組が農民にとって持続的な農業を考えるきっかけになり、更なる取組に繋がってくれることを期待している」とコメントしており、この活動が長い道のりの第一歩であることを感じさせてくれました。

悠久の時の中で、人々の生活の恵みや心のよりどころとなってきた聖なる川、ガンジス。そのすぐ近くで、自然の恵みを大切にしながら持続的に活用する営みが、静かに動き出しています。

農業技術セミナーでは真剣に話を聞く農民の方の姿がありました

◆実施団体WEBサイト:公益財団法人オイスカ

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