ラオスの水道を支える!さいたま市水道局とラオス水道公社の協働プロジェクト
2025.11.07
さいたま市水道局は、現在、ラオス国首都ビエンチャン、ルアンパバーン県、カムワン県にてJICA草の根技術協力事業「ラオス国水道公社における無収水削減推進体制強化支援事業(地域活性型)」を実施中です。無収水とは、収入の機会を逸した水のことを言います。例えば、浄水場で水が生産されたにも関わらず給水管から水漏れがあるために、水が無駄になる場合があります。水道メーターの故障等によって水道料金を回収できない場合もあります。このプロジェクトでは、①給水管施工マニュアルの改善/施工関係者への展開、②漏水修繕対応マニュアルの作成、③水道メーター検針業務の改善、④水道メーター更新計画の策定支援により 、浄水場から送られた「水」の無駄をなくし、給水された水の料金を回収できるようになることを目指します。
さいたま市水道局は、7月にカムワン県水道公社を訪問し、主要活動の一つとして検針業務の効率化のための改善点を水道公社とともに考えました。
さいたま市水道局は、まずカムワン県での検針業務の状況について、同行調査を実施しました。カムワン県水道公社における水道メーター検針では、検針員が紙の検針リストを現地に持参し、検針結果を手書きで記録した後、入力担当者が請求システムに転記する方法により実施されていました。また、利用者からの水道料金に関する問い合わせに対応する資料として、全戸を対象に水道メーターの写真撮影を行っていました。検針員1名あたりの担当件数は月約1,500件に達しており、業務負担が大きい状況にあることも分かりました。
特に、検針員が個々の経験に基づき検針ルートを判断しているため、効率的な検針ルートが共有されていない部分があることが分かりました。また、郊外部では住宅密度の低下に伴い移動距離が増加し、検針業務の負担が大きくなることも分かりました。
そこで、カムワン県水道公社と協議し、上記の課題を踏まえた次の改善策を進めていくことになりました。
① 実際に検針する順序に基づいて検針リストを作成(効率的な検針ルート)
② 検針順序を可視化する地図の作成
③ ベテラン検針員の経験知を形式化する研修用教材の作成(業務標準化を推進)
水道メーター検針業務の視察
さいたま市水道局は、カムワン県水道公社内で検針員から上がってきた数値を確認し、請求書を作成、実際に請求を送るまでのプロセスについても調査を実施しました。まず請求書を作成するときには、検針員から送られて来た検針金額の表の数字をパソコンに入力をして、SNSで同時に送られてくる水道メーターの数字を確認するという作業が行われていました。水道料金の確認ができた後には、それに基づいて請求書作成システムより請求を作成し、検針員がそれを持って、各利用者に水道料金の請求書を配布するという方法を取っていました。
さらに、一連の業務を確認する中で、検針や請求にも関わる利用者情報や水道メーター管理などの情報が各セクション間で共有できていない、あるいは紙ベースでの共有を行っている様子が見受けられました。これは共有用のサーバーが導入されていないことに起因していたため、草の根事業で使用しているクラウドサービスを試験的に使い、カムワン県水道公社内のデータ共有を進めることで業務改善をできないか水道公社職員と検討することになりました。
水道料金の計算作業を確認
水道メーターの数字を確認
今回のカムワン県水道公社の訪問では、業務の効率化という部分でいくつかの問題が見つかり、解決方法についてカムワン県水道公社と話し合い道筋をつけることができました。これから実際に今回の解決方法を試行していくことになります。ラオスの多くの水道公社が、カムワン県水道公社と同じシステムを使っていることから、カムワン県水道公社の業務改善方法を他の県の水道公社の業務効率化にも伝えていくことができます。
今回、初めてラオスで活動をしたさいたま市水道局の澁谷彩南さんは次のように語っています。
「初めてのラオス派遣では、現地の方が課題を十分に認識していない場面も多く、丁寧に耳を傾けながら一緒に課題を見つけ、その必要性を理解してもらう経験を重ねました。先輩の姿勢から学んだのは、「解決策を押し付けず、自ら継続して改善できるよう支える」という支援の在り方です。文化や仕事の進め方の違いに戸惑うこともありましたが、共に課題を見つけ、解決策を考える過程に国際支援の魅力を実感しました。」
さいたま市水道局は引き続き、ラオス水道公社の運営改善に向けて活動を行います。是非、本プロジェクトにご注目ください!
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案件概要表
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