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【埼玉県】教師海外研修 授業実践レポート② 埼玉県川口市立仲町小学校

2025.11.26

授業の様子

今回は、JICA教師海外研修(教師海外研修 | 日本国内での取り組み - JICA )に参加し、バングラデシュを訪れた川口市立仲町小学校の大野健一 先生による公開授業を見学しました。その様子を、JICAインターンがお伝えします。

「母語が使えなくなるとはどういうことだろうか?」

説明をもとに絵を再現中!

今回見学した授業では、「母語が使えなくなるとはどういうことか」をテーマに、言葉の大切さを体験的に学ぶグループ活動が行われていました。
このクラスには、外国につながる児童が全体の3分の1ほど在籍しており、そのうちの多くは中国語を母語とする国から来ています。授業の導入では、前回の授業で「母語とは何か」について考えた子どもたちの意見が振り返られました。

・生まれたときから家族に習った特別な言葉だから大切にしたい
・自分だけの言葉だから守りたい
・自分の子どもにも教えたい
・もし言葉を失ったら、家族のつながりも意味を失ってしまうと思う

このように、自分なりの母語とは何かということについて考えたうえで始まった今回の授業。
班ごとに分かれ、絵を再現するワークを行いました。各班は5人ほどで構成され、4人は実際に絵を見て記憶し、その内容を言葉で説明します。絵を見ていないひとりがその説明をもとに絵を再現して完成を目指すというワークです。ただしここには一つのルールが――日本語・中国語は禁止。短い時間だけ日本語や中国語を使ってもよい「ボーナスタイム」はありましたが、それ以外は使えません。
それでも児童たちは、英語と、身振り手振りを交えながら一生懸命に伝えようとしていました。完成した絵を見ると、驚くほどそっくりなグループが多く、限られた言語の中でもしっかりと意思疎通できている様子が印象的でした。授業中の発表やワークシートからは、児童の素直な気づきが数多く見られました。一部を抜粋してご紹介します。

・(母語を使わないと)説明するのも、理解するのも難しい
・友達が伝えにくそうだった
・簡単だと思っていたけど意外と難しかった
・全然わかってもらえなくて困った
・母語を禁止されそうになったときのバングラデシュの人の気持ちが少し分かった

授業のはじめ、「母語を奪われる」なんて本当にあるの?と首をかしげていた児童たちも、この体験を通して、言葉が持つ力と重みを実感したようです。

言語は、多様性をうつす鏡

ジェスチャーを交えての説明

今回訪問させていただいた川口市立仲町小学校は、学級の3分の1が外国にルーツを持つ児童がクラスに混在する学校です。中にはそもそも自分の母語が何かが分からないという子や、母語と第二言語のどちらも習得が不十分な状態にある子も少なくないとのことでした。
そうした中、大野先生が子供たちに伝えたかったのは「『母語』のもつ可能性」であったように思います。今回のバングラデシュ派遣で先生が訪れたショヒドミナールは、母語であるベンガル語を守るために犠牲になった人々を慰霊する塔です。その場に立った大野先生は、「命を懸けてまで守られた言葉」の存在に強い衝撃を受け、言語が持つ尊厳と意味を改めて感じたといいます。
授業では、子どもたちが日常的に使っている言葉をあえて制限する体験を通じ、「母語」がいかに自分にとって大切なものなのか、それが奪われるとはどういうことなのか。子どもたちは言葉の大切さを体感するとともに、国際的な課題や文化の多様性にも関心を広げるきっかけになるのではないでしょうか。多文化が共に存在する教室で、身近にいる友達の困難さに気づくこと。無関心でいないこと。その積み重ねが、子どもたち自身の「多文化共生」への姿勢を育んでいくのだと思います。

国際母語デー

国際母語デー(2月21日)は、バングラデシュで母語のベンガル語を守ろうとした人々が犠牲になった出来事をきっかけに、言語と文化の多様性を尊重し、母語の重要性を促進するために設定された記念日です。日本にも、大野先生がバングラデシュで訪れたショヒド・ミナールを模した記念碑があり、言葉を通じて人と人が理解し合うことの大切さを伝え続けています。
文責:JICAインターン 菅澤愛奈・橋本凛花

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