世界遺産の街から始まる干し柿プロジェクト-農村に笑顔と収入を
2026.01.06
中央アジアに位置するウズベキスタン。ウズベキスタンの古都サマルカンドは、2001年に世界遺産に登録されました。ウズベキスタンは近年、高い経済成長率を維持しているものの、都市部と農村部での所得格差が依然として存在していることが課題となっています。世界の柿生産量は第6位ですが、生食することが多く、柿の市場価格は1キロあたり1米ドル以下と、他の果物と比べてとても安いため、生産した柿は自家消費用のみで、半分近くは樹に実を放置したままの状態で廃棄されています。SDGsの観点からも、食品ロスを減らすために廃棄している柿を商品化することは重要です。
こうした背景をふまえ、特定非営利活動法人日本ウズベキスタン協会は、現金収入が見込めなかった柿を、農家に加工技術を指導することで、長期保存できる干し柿に加工し、付加価値をつけて販売し、サマルカンドのデフカン農家の副収入向上につなげようと、現地のサマルカンドアグロイノベーション大学と共に取り組んでいます。今回は、JICA草の根技術協力事業として実施されている「干し柿を用いた副収入向上のための技術移転モデルの確立」をご紹介します。
原点は、一人のウズベキスタン人留学生の感動でした。日本で干し柿を味わい、「なぜウズベキスタンにはこんなに美味しいものがないのか」と発した一言。この言葉を発端に、本プロジェクトマネージャーの川端氏、東京農工大学の伴教授、乃万専門家が技術移転を構想し、現地のアグロイノベーション大学と手を携えてプロジェクトが動き出しました。川端氏、伴教授、乃万専門家の“現地に技術を届けたい”という真摯な想いが、アグロイノベーション大学のスタッフの共感を呼び、強い信頼関係の基、プロジェクトが進められています。このように、留学生の体験と感動が国際協力の新たな展開へとつながったことは、本事業のユニークな特徴であり、また、大学関係者同士の連携と信頼関係によって事業が着実に効果的に推進されていることは、本事業の最大の強みです。
2025年11月3日と4日、農家や大学生を対象に、日本人専門家による「柿の木の剪定に関する講習会」、及び、「干し柿の製造講習と実習」を行いました。2日間のワークショップには、150名を超える参加者が集い、質疑応答セッションでは、多数の質問が寄せられ、高い関心がうかがえました。
日本人専門家による丁寧な指導と、分かりやすいマニュアルが、農家のやる気を後押ししました。マニュアルは農家の方が理解しやすいよう、ウズベク語で作成され、またイラストが多く用いられています。各農家が自宅で自主的に干し柿の製造に取り組むことができるように、全員にマニュアルが配布されました。
また、干し柿製造に加えて、柿チップス、押し寿司の型を使った柿とクリームチーズのアレンジ、柿をウォッカに漬けて甘みを引き出すアイデアなど、創造的な提案が次々に披露されました。
実習や試食を通じて、「家庭でも試してみたい」「商品化できそう」と、若い世代や女性たちから声が聞こえてきました。干し柿の加工は重機や大規模設備を必要とせず、家庭内での作業が可能です。農村に新しい参加の扉を開き、女性や高齢者の活躍の場を広げることにも期待が寄せられています。
本事業の展開のスピード感も特筆すべき点です。事業2年目には干し柿の品質が向上し、バザールでの販売に加え、大手スーパーマーケット「オプトビック」で販売が開始されました。現在、継続的な技術フォローアップを通じて品質を磨き、販路を整え、学ぶ人が教える人へと成長していく循環を育てています。
また、現地の農業セクター向けの金融機関であるアグロバンクは、本事業が農村地域への収入向上に資するものとして高い期待を寄せており2026年1月には、日本の柿の生産地、干し柿の製作現場や販売などを視察する予定です。
地域全体の支えが、農家の自立的な加工・販売能力を引き上げ、干し柿がサマルカンドの「一村一品」として、ウズベキスタンの他の地域にも広がっていくことを期待したいです。
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