「長期研修員の素顔と魅力⑮~」
2026.03.09
JICA東京センター長期研修課では、2025年JICAインターンシップ・プログラムに参加している日本の大学生・大学院生を受け入れています。本記事では、インターン生による開発途上国からの留学生へのインタビューをご紹介します。
インタビューアー:五味颯真(東京外国語大学)
旅行中の五味さん
今回は、エジプト出身で政策研究大学院大学(以下GRIPS)に在学中のELSISI Mohamed Osama Mohamed Ibrahem Aboualyさん(以下、ムハンマドさん)にインタビューしました。エジプトでは電力規制庁のエネルギーエンジニアとして勤務し、技術評価・ライセンス関連業務などに携わってきました。今回はムハンマドさんに日本での暮らしや学業、将来の展望についてお話を伺いました。
JICA長期研修に応募した理由は、「日本の高度な教育や実践的な学びに触れ、将来エジプトに貢献したい」という強い思いからです。国際的な人材育成制度や奨学金について調べるなかで、JICAの*GX(Green Transformation)プログラムを知り、応募を決めました。
実はムハンマドさんは、日本以外にもカナダや中国の奨学金に合格していました。それでも日本を選んだのは、日本の文化や日本人の人柄、学びに対する姿勢が、自分の性格に一番合っていると感じたからです。また、子どもの頃から親しんできた日本文化への憧れも、日本を選ぶ後押しになりました。
*化石燃料中心の経済・社会構造から、クリーンエネルギー中心の持続可能な構造へ転換するための取り組み
ムハンマドさんの研究テーマは、母国エジプトの産業部門における太陽光発電の導入促進です。
1年目には、太陽光発電プロジェクトを対象とした経済性・環境性・技術面の評価を行い、その結果を踏まえて政策提言を作成しました。2年目の現在は、TIS(Technological Innovation Systems/技術革新システム)の枠組みを用い、産業分野で太陽光発電をどのように普及できるかを総合的に分析しています。技術・政策・市場の三つの側面から課題を整理し、エジプトに再生可能エネルギーをより効果的に普及させるための方法を探っています。
ムハンマドさんにとって、日本での生活は初めての海外経験でした。来日してすぐに直面したのは言語の壁で、大学では英語が通じる一方、日常の買い物では日本語しか通じず、戸惑う場面が多かったです。特に、コンビニで日本語でのコミュニケーションに苦労した経験をきっかけに、来日初日から日本語の勉強を始めました。ただ、苦労以上に印象に残ったのは日本人の親切さです。言葉が通じなくても、身振り手振りで助けてくれる人が多く、丁寧で礼儀正しい雰囲気は、自分の性格とも合っていました。
また、JICAの地域理解プログラムで訪れた新潟県・佐渡島は特に思い出深い場所です。
佐渡金山の見学ではその歴史の深さに驚かされ、酒蔵では日本酒づくりの工程を学んだことで、日本文化への理解が大きく広がりました。さらに、地元の祭りにも参加し、地域の人々と交流できたことが日本の温かさを実感した瞬間でした。
日常生活でも、日本の冬の寒さや、中野の静かで住みやすい環境、ハラール対応の食事探しなど、さまざまな発見がありました。
GRIPSでは、エネルギー政策を中心に、経済学・国際関係・安全保障など幅広い分野を学んでいるムハンマドさん。なかでもエネルギー関連の講義が最も興味深いです。実務経験のある教授陣や国内外の専門家から最新の知見を学べる点が大きな刺激になっています。
また、GRIPSは国際色豊かで、かつ学生同士の交流も盛んで、異なるバックグラウンドの仲間と議論することで、新しい視点を得られます。
プログラム修了後はエジプトに戻り、これまでの経験を活かして再生可能エネルギー分野の発展に貢献することが目標です。特に、GXを推進する政策立案や、エネルギー分野の国際協力に携わりたいと考えています。さらに、機会があれば博士課程進学のために、再び日本で学びたいです。日本の生活や文化、人との関わりを心から楽しんでおり、その経験を将来のキャリアに必ず生かしたいと強く願っています。
インタビューを通じて感じたのは、ムハンマドさんの「日本への深い敬意」と「祖国の未来をより良くしたい」という確かな信念でした。日本での学びを単なる留学経験で終わらせるのではなく、エジプトのエネルギー政策に還元しようとする姿勢からは、将来のリーダーとしての責任感と情熱を強く感じました。また、日本に来られる機会があれば、ぜひ戻ってきたいと語ってくれたときの真っすぐで温かい笑顔が、とても印象的でした。
ムハンマドさんがこれからエジプトと日本の架け橋として、活躍されることを心から期待しています。