帰国研修員の活躍に迫る@グアテマラ ― 日本で学んだ「地域警察」は、現場でどう生きているのか ―
2026.04.14
JICAが実施する課題別研修「地域警察」。
日本の交番・駐在所制度や、住民と警察が協働して地域の安全を守る仕組みを学ぶ本研修は、これまで多くの国から研修員を受け入れてきました。
2025年度「地域警察」の閉講式の様子
では、日本で学んだ内容は、帰国後にどのように活用されているのでしょうか。
この度、2026年2月、JICA東京職員はグアテマラ共和国を訪問し、過年度に本研修へ参加した研修員へのフォローアップを実施しました!
1996年の内戦終結後に国家文民警察(PNC)が設立されたグアテマラですが、現在もギャングや組織犯罪による治安問題が深刻な状況です。こうした背景のもと、グアテマラ政府も、治安対策を単なる「取り締まり」に頼るのではなく、地域住民と警察が協力して安全を守る考え方へと舵を切っています。
JICAは2016年以降、技術協力を通じてコミュニティ警察の普及を目指した警察人材育成を支援してきました。
その支援を通じて、警察学校への科目導入や、組織内に地域警察調整課が設立されるなど、制度面での定着が進んでいます。
課題別研修「地域警察」も、こうした技術協力の一環で、継続的にグアテマラから研修員を受け入れてきました。
今回のフォローアップでは、7名の過年度研修員へのインタビューを行うとともに、5名の活動現場を訪問しました。
多くの研修員に共通していたのは、「日本で学んだ地域警察の理念が、現場での考え方を変えた」という声です。
フォローアップを通じて、参加年度や役職の異なる研修員が、それぞれの立場から地域警察の推進に貢献している姿が確認できました。
インタビュー実施時の集合写真
インタビューの様子
2025年度に研修へ参加した研修員(José Ronaldo Argueta Zúñiga氏)は、地域警察プロジェクトのプロジェクトリーダーとして中心的な役割を担っています。研修後、講師育成に取り組み、学校や自治体、地域団体からの要請に応じて研修を実施できる体制づくりを進めるなど、地域警察の理念を組織内外に広げています。
研修参加時の様子
帰国後の活動の様子
2024年度に参加した研修員(Jorge Alexander Aguilar Chinchilla氏)は、現在、広報部長として、市民に対して警察活動を分かりやすく伝える取り組みを主導しています。日本で学んだ「警察と市民の信頼関係の重要性」を広報活動に反映し、市民との距離を縮める役割を果たしています。事件解決に寄与した事例や地域警察の取組を積極的に発信することで、市民の関心と信頼を高めており、その結果、住民からの通報件数の増加につながっていることも共有されました。
研修参加時の様子(左から2番目)
広報部のスタジオにて(左)
2023年度に参加した研修員(Carlos Enrique Fuentes López氏)は、交通部の部長として、地域住民や大学生ボランティアと連携し、交通安全活動や予防的な警察活動を推進しています。地域社会と協働する警察のあり方を、現場から体現しています。交通事故ゼロを目標に、交通安全教室や交通安全フェアの開催に加え、交通事故被害者による体験共有や、バーチャル体験プログラムなど、若年層にも訴求力のある取組が行われています。また、18~24歳の若者が市民ボランティアとして活動に参加し、地域と警察をつなぐ役割を担っています。
研修参加時の様子(中央)
交通部訪問の様子(中央)
2020年度のオンライン研修に参加した研修員(Héctor Noé González Prera氏)は、副長官として警察組織全体を統括する立場にあり、地域警察の理念を組織の重点施策として位置付け、全国の警察署への展開を見据えた取組を進めています。日本で学んだ「地域警察の理念は警察官としての基本的な姿勢である」という考え方を、幹部層として組織内に浸透させる役割を担っており、研修やガイドラインの見直しを通じて、地域警察の全国展開に向けた基盤づくりを行っています。
オンライン研修参加時の様子(左下)
グアテマラ警察を代表してセミナーで登壇する様子(中央右)
こうした帰国研修員による取組は、JICAが技術協力を通じて進めてきた地域警察プロジェクトや制度整備と相互に補完し合いながら、現場レベルでの実践を後押ししています。警察学校での「地域警察」科目の導入、地域警察調整課の設立など、組織的な基盤整備が進む中で、帰国研修員が各部署・各階層で担う役割は、地域警察の定着に向けた重要な推進力となっています。
こうした取組の積み重ねの結果、グアテマラでは近年、殺人率が中長期的に減少傾向にあることも報告されています。治安指標の改善は、警察改革のみならず、地域社会との協働や予防的アプローチの広がりなど、複合的な要因によるものと考えられますが、地域警察の理念に基づく取組が、治安改善に向けた重要な一要素となっていることがうかがえます。
研修での学びは、警察官個人の意識改革にとどまらず、組織全体の方向性、人材育成、業務の進め方、さらには住民との関係構築といった面において、具体的な変化をもたらしています。
研修員達は「課題別研修『地域警察』に参加して以降、組織内で地域警察の考え方が徐々に浸透してきている」と実感を語るとともに、今後は全国展開に向けて、さらに地域警察の取組を広げていきたいと意欲を示していました。
今回のフォローアップ調査を通じて強く感じられたのは、帰国研修員一人ひとりの活動が、単発的な取組にとどまらず、時間をかけて組織や社会へと連なり、波及しているということです。
課題別研修「地域警察」で学んだ理念は、個々の現場実践にとどまらず、現場レベルから幹部層に至るまで幅広く浸透しつつあることが確認されました。研修成果は、個人の行動変容を起点として、制度、教育、組織運営へと連なっています。
制度改革、研修の実施、市民との信頼構築。これらは一人の研修員の努力だけで完結するものではなく、複数の帰国研修員の取組が時間軸の中でつながることで、初めて形になっていくものです。
日本での学びを現場に持ち帰り、試行錯誤を重ねる帰国研修員の姿からは、研修が単なる「一度きりの経験」ではなく、次の人材、さらに次の取組へとつながる「実践の連鎖」として着実に根づいていることが伝わってきます。
JICAは今後も、こうした帰国研修員の“線としての活躍”に寄り添いながら、技術協力を通じて、グアテマラにおける持続的な治安改善と人材育成を支えていきます!
プロジェクトサイト地訪問の様子
【参考・関連SNS/メディア】
・JICAホームページ:グアテマラで日本を含む6ヵ国の警察官が参加する地域警察国際セミナーを開催しました! | ニュース・広報 - JICA
・PNC–JICA 地域警察プロジェクト(Facebook公式):https://www.facebook.com/Policía-Comunitaria-PNC-y-JICA-105776392519135/
・PNC–JICA 地域警察プロジェクト(YouTube公式): https://www.youtube.com/@PolicíaComunitariaPNCyJICA
・グアテマラ国家文民警察(PNC)公式Facebook:https://www.facebook.com/PNCdeGuatemala
・グアテマラ国家文民警察(PNC)公式Instagram:https://www.instagram.com/pncdeguatemala/
・グアテマラ国家文民警察(PNC)公式X(旧Twitter):https://x.com/PNCdeGuatemala