山岳地域でも、安心して出産できる環境を ―現地で進む母子保健サービス改善の取り組み
2026.06.03
HANDSがこれまでに保健医療サービスの改善に取り組んできたエンガ州ケペラム地区を訪問。現地の方々が温かく迎えてくれました。(左手前:エンガ州保健局副局長兼公衆衛生局長のDr KOKA)
HANDSはこれまで、10年以上にわたり、都市部から遠く離れたエンガ州において保健医療サービスの改善に取り組んできました。保健知識を身につけた村落保健ボランティア(現在は村落保健アシスタント)の育成を通じて、家庭やコミュニティで健康啓発活動を行い、遠隔地でも定期的に産前健診が受けられる体制を整えるなど、地域住民の保健力を高める活動を行ってきました。本事業では、出産後の母子ケアを含む出産環境の改善や、新生児・乳幼児の健康管理体制の強化を目指し、母子保健サービスの改善に取り組みます。
エンガ州は、パプアニューギニアの中でも特に標高が高い山岳地帯に位置し、道路事情の悪さや治安上の課題から、妊婦が医療施設にたどり着くことが困難な地域となっています。こうした環境で、妊婦が安全に出産を迎えられる体制づくりは、地域全体の大きな課題となっています。
事業対象地は標高約2,000メートルの山岳地域。都市部と比べて保健医療サービスへのアクセスが困難な地域となっています(事業地域から市街地に戻る道沿いにて)。
山岳地域では、施設での出産を希望しても、病院まで歩いて何時間もかかることが珍しくありません。また、出産が近づいても、安全に過ごす場所がないことが大きな課題となっています。妊婦が余裕をもって医療施設へ移動し、出産までの期間を安心して過ごせる場所を確保すること。その改善活動の一つが、「お産を待つ家」の建設です。
「お産を待つ家」は、病院や診療所の敷地内、分娩受け入れ施設がある医療施設の建物の近くに建設され、妊婦が出産前から滞在できる施設となっています。
Kepelam Health Centerの敷地内に設置された「お産を待つ家」。(右:HANDSの現地スタッフ(建設、建築)のBakiさん、左:HANDSドライバーのDiaさん)
今回の視察では、Kepelam Health Centerの敷地内にある「お産を待つ家」を視察しました。
「お産を待つ家」は敷地の奥まった場所に位置し、妊婦や、そのそばで共に過ごす家族に配慮し、プライバシーが十分に守られた空間となっています。
遠隔地の村に暮らす妊婦たちは、出産が近づくと「お産を待つ家」に滞在し、安心して出産の時を待つことができます。夜間に険しい山道を移動する必要がなく、医療施設の近くで過ごせることは、妊婦にとって大きな安心につながることが期待されます。
また、「お産を待つ家」のすぐ裏手には、キッチン、トイレ、シャワー室が併設されており、水道や灯りといった生活に必要なライフラインも整備されており、妊産婦が安心して滞在できる環境が整えられています。
運用は開始されたばかりですが、今後は利用者の声を取り入れながら、産前から産後にかけて母子が安全かつ安心して利用できる施設となるよう、さらに環境整備が進められる予定です。
お産を待つ家建設予定地①(Tukusenda Health Center内)
お産を待つ家建設予定地②(Porea Community Health Post内)
続いて、本事業で建設する2か所の「お産を待つ家」の建設予定地を視察しました。建設は Tukusenda Health Center および Porea Community Health Post の敷地内を予定しており、いずれの施設も分娩の受け入れ体制が整っている点が特徴です。また、医療従事者が同一敷地内または近隣に居住しており、分娩が開始した場合には、速やかに医療サービスを受けることが可能な環境となっています。
特に、Tukusenda Health Centerには助産師が勤務しており、出産環境として十分な体制が整っています。一方、Porea Community Health Postはややアクセスしづらい場所に位置しており、「お産を待つ家」が建設されることで、妊婦が事前に滞在することが可能となります。これにより、安心して出産を迎えられる施設として、今後、コミュニティの人々に広く利用されることが期待されます。
Porea Community Health Postの施設内の様子。(中央:業務調整員として現地に駐在している服部さん)
本事業は、JICAの草の根技術協力事業として、地域に根差したNGOの知見を生かしながら、持続的な母子保健サービスの構築を目指しています。
今回の視察で、JICA担当者が最も印象に残ったのは、カウンターパートである保健局およびHANDSの現地スタッフの事業に対する強い思いです。
HANDSの事業は、現地主体性を重視し、現地スタッフやコミュニティが中心となって進めることを基本としています。今回の視察においても、そのコンセプトどおり、カウンターパートである保健局、HANDSの現地スタッフが、主体的に現場を案内し、事業に対して責任感を持って取り組んでいる様子がうかがえました。また、地域全体で保健力を高めていくというHANDSの取り組みが、コミュニティに着実に定着していることも確認できました。
今後、本格化する母子保健サービスの改善についても、JICAは今後もHANDSと連携し、地域に根付いた母子保健サービスの改善に向けた支援を継続していきます。
現地の医療従事者およびコミュニティの人々と。(右:HANDSの現地スタッフ(保健医療・研修担当)のMeckさん)
▼関連リンク
・実施団体HP:特定非営利活動法人 HANDS | HANDS(ハンズ)は、保健医療の仕組みづくりと人づくりをおこなう国際協力NGOです。
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