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モンゴル養蜂の進化 ~市場に選ばれるハチミツづくりを目指して~

2026.07.14

モンゴルでは、地域産業として期待される養蜂の発展に向けて、新たな挑戦が進んでいます。生産技術の向上に加え、「どう売るか」「誰に届けるか」を重視した市場志向の取組です。本記事では、公益社団法人国際農林業協働協会(JAICAF)が実施する市場志向型の養蜂振興プロジェクト(草の根技術協力事業パートナー型)の現場をご紹介します。

セレンゲ県 養蜂家グループ「オヒンディーン・ヒシグ」養蜂場

養蜂が担う地域産業としての役割

地方と都市の経済格差や産業の偏りが大きな課題となっているモンゴル。特に地方部では産業の選択肢が限られており、地域経済を支える新たな産業の育成が求められています。
その中で養蜂は、比較的小規模な投資で始められ、冷蔵施設などの大規模インフラを必要としないことから、地方における有望な産業として発展してきました。また、ハチミツの生産・販売だけでなく、ミツバチが農作物の受粉を支えることによる農業生産への貢献も期待されています。
公益社団法人国際農林業協働協会(JAICAF)は、2015年からモンゴルの養蜂振興に取り組み、これまで飼育技術の向上や品質管理、人材育成などを支援してきました。その結果、養蜂技術の向上や生産量の増加、品質管理体制の整備など、着実な成果が生まれています。
一方で、養蜂産業が持続的に発展していくためには、生産技術の向上だけでなく、「誰に、どのように売るのか」という視点が欠かせません。そこで現在実施中の「市場志向型の養蜂振興プロジェクト」では、養蜂家自身が市場ニーズを分析し、新たな販路や商品開発に取り組めるよう支援しています。

蜂群一つ一つ丁寧に観察し、状況を確認・指導する干場専門家

ダルハン県 養蜂家グループ「タンサグ・ノゴー」

フェーズを重ねた支援の歩み

本事業では、生産基盤の整備から品質管理、経営改善へと段階的に支援を進めてきました。これまでの取り組みにより、生産量の向上や品質管理の改善が進み、養蜂産業の基盤が整いつつあります。
現在の第3フェーズでは、その成果を土台に、市場ニーズを踏まえた商品開発や販路拡大に挑戦しています。「作る力」から「売る力」へ――市場志向の養蜂への転換が、着実に進んでいます。

市場志向の養蜂に向けたコスト管理研修

「市場志向」への新たな挑戦

これまでの事業を通じて、生産技術や品質管理の基盤は着実に整備されてきました。一方で、養蜂を持続的な地域産業として発展させていくためには、「良いハチミツを作る」だけでなく、「誰に、どのように届けるのか」を考える視点が欠かせません。そこで現在のフェーズ3では、養蜂家自身が市場を理解し、市場ニーズに応じた生産や販売ができるようになることを目指しています。
具体的には、

・消費者や小売店、飲食店などを対象とした市場調査
・養蜂家による販売計画の策定
・新たな商品開発やパッケージ改善
・観光市場や輸出市場を見据えた販路開拓

といった活動に取り組んでいます。
今回の現地訪問では、養蜂家グループが自ら市場調査結果を分析し、価格、包装デザイン、品質、販売先などについて活発に議論する様子が見られました。また、「何を生産するか」だけでなく、「誰に売るのか」「そのためにどのような商品や包装が求められるのか」という視点で商品を検討するなど、市場を意識した取組が実践されていました。
ある養蜂家グループは、「グループで蜜源となる花を育て、蜂場を運営し、自分たちで生産したハチミツを販売していきたい」と語っていました。その言葉からは、生産だけでなく販売までを見据えた主体的な取組への意欲が感じられました。
こうした活動を通じて、市場ニーズや競合製品への理解が徐々に深まり、商品改良や販売方法の見直しに向けた動きも見られています。一方で、安定した品質の確保や組織的な販売体制の構築、取組の継続的な実践など、さらなる発展に向けた課題も残されており、今後の取組が期待されます。

市場観察前と後の容器デザインの変化

ミツバチの健康を守る ―干場専門家が伝える養蜂の基本―

市場を意識した商品開発や販売戦略が注目される一方で、それらを支えるのは安定した生産です。どれほど魅力的な商品を企画しても、良質なハチミツを継続して生産できなければ、市場からの信頼を得ることはできません。
こうした技術支援を長年続けてきたのが、養蜂専門家の干場英弘氏です。干場氏から現場の声をお届けします。
「このプロジェクトが始まった当初、「日本の養蜂技術がモンゴルで通用するはずがない」という声もありました。しかし私は、「日本の技術ではなく、養蜂の基本を伝えに来た。基本技術はどこでも同じだ」と話し続けてきました。その結果、養蜂家の皆さんが基礎技術を積極的に学ぶようになり、1群当たりの年間収量は10キログラム以下から30キログラム程度まで向上しました。
今、モンゴルの養蜂産業にとって大きな脅威となっているのがミツバチヘギイタダニです。夏が短いモンゴルでも実践できるダニ管理技術を考案し、日本で検証した上で導入できたことは、このプロジェクトの大きな成果だと考えています。
また、モンゴルで作成した養蜂基礎技術マニュアルは、日本で『蜜量倍増 ミツバチの飼い方』として出版されるなど、日本の養蜂業界にも活用されています。」
市場志向の養蜂への転換は、こうした地道な技術の積み重ねによって支えられています。

養蜂技術を指導する干場専門家

持続可能な養蜂産業へ

プロジェクト・マネージャーの西山亜希代氏は、今後の活動およびモンゴル養蜂の未来について以下のように語ります。
「モンゴルでは近年、人々の嗜好や生活スタイルが多様化し、消費者は安全・衛生だけでなく、風味やデザインなど、自分の価値観に合った商品を求めるようになっています。
これまでのフェーズでは、安定した生産や品質向上のための技術を養蜂家の皆さんとともに築いてきました。現在のフェーズでは、そうした基盤の上に立ち、変化する市場のニーズを捉えながら、消費者が求める商品を提供していくことが重要です。
プロジェクトに参加する養蜂家は、自ら学び、考え、試行錯誤しながら新しい取組に挑戦しています。成功や失敗の経験を仲間と共有しながら前向きに取り組む姿に、モンゴル養蜂の未来を感じています。
養蜂は、地方で暮らす人々に副業の機会をもたらすだけでなく、農業生産性の向上や観光資源としての活用など、地域経済への貢献も期待できる産業です。世界的にミツバチの病害虫被害が拡大し、モンゴルの養蜂を取り巻く環境も決して容易ではありませんが、こうした課題を乗り越えながら、養蜂が持続的な地域産業としてさらに発展していくことを期待しています。その実現に向け、プロジェクトチーム一丸となって養蜂家を支援していきます。」

セレンゲ県ズーンブレンソム養蜂家とともに。左から2番目が西山亜希代氏

生産技術の向上と市場志向の取組、その両輪を支えながら、モンゴルの養蜂は持続可能な地域産業として着実に歩みを進めています。


◆実施団体の活動情報はこちらから: JAICAF 公益社団法人 国際農林業協働協会
◆本事業の案件概要はこちらから: 案件概要表

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