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「世界のヤッカバグへ」ウズベキスタンの甘草から生まれる人と人とのつながり ~本邦研修レポート~

2026.10.06

JICA東京センター市民参加協力第二課では、2026年JICAインターンシップ・プログラムに参加している日本の大学生を受け入れました。今回、インターン生が草の根技術協力事業「ウズベキスタン国 甘草の栽培・加工技術導入を通じた地域産業振興プロジェクト」の本邦研修に同行しました。本記事では、研修への同行を通じて学んだことや感じたことを、本邦研修レポートとしてご紹介します。(執筆者:中家愛理、弓削吏久)

北里大学薬学部附属薬用植物園にて、プロジェクト関係者とインターン生

2026年8月、JICA草の根技術協力事業「ウズベキスタン国甘草の栽培・加工技術導入を通じた地域産業振興プロジェクト」(実施団体:㈱薬ゼミ情報教育センター)の本邦研修が行われました。

今回来日したのは、ウズベキスタン薬用植物栽培・加工科学生産センターをはじめとするプロジェクト関係機関の研修員4名です。
本プロジェクトでは、カシュカダリア州ヤッカバグ地区に自生し、甘味料や薬用として利用価値の高い植物資源である「甘草(かんぞう)」を活用し、栽培技術の向上や商品開発を通じて、地域産業の発展と住民の所得向上を目指しています。
活動は、主にタシケント地域とヤッカバグ地区の二つのサイトで進められており、タシケント側では品質分析や加工・商品化に向けた検討、ヤッカバグ地区では甘草の栽培や地域での普及に向けた取組が行われています。

研修員の皆さんは、北里大学等の研究機関や企業などを訪問し、講義の受講や視察を通して、薬用植物の栽培、品質評価や商品化の事例について学びました。私自身も研修に同行し、講義や視察だけでなく、研修員の皆さんとの交流を通して、本当にたくさんの学びを得ることができました。

なぜ甘草なのか

甘草は日本で広く利用されている生薬で、漢方薬だけでなく、お菓子や化粧品などさまざまな製品に活用されています。実は私たちの身近なところでも使われており、商品の成分表示に「甘草」と書かれていることもあります。

(上)漢方薬や食品などの原料となる甘草の根
(左)甘草の葉

お菓子の原材料にも使用されている甘草

プロジェクトを統括する鈴木良風さんによると、日本では甘草の需要が高い一方で、その多くを海外からの輸入に頼っています。そのような中、ウズベキスタンには甘草が自生しており、乾燥や塩害にも比較的強いことから、ヤッカバグ地区での栽培に可能性を感じたそうです。
現在は品質向上への挑戦を続けながら、お茶や石鹸などさまざまな商品開発にも取り組んでいます。

プロジェクトサイトでの甘草のストロン(地下茎)の植え付け作業の様子

本邦研修で学ぶ「現場の知恵」

今回の研修では、栽培技術や品質評価だけでなく、日本で甘草がどのように利用されているのかを実際に見て学ぶ機会が設けられました。
プロジェクトメンバーで、今回の本邦研修で通訳を務めたアブドゥカディロフ・ラスルベクさんは、本邦研修の意義について次のように話します。
「現地でも甘草について学んでいますが、日本でどれだけ活用されているか、本当に価値があるものなのかを実感する機会は多くありません。だからこそ、自分の目で見て、実感してもらうことが大切だと思っています」
また、品質管理の重要性についても、
「開発途上国では品質管理の重要性が十分に理解されていないこともあります。実際に日本の現場を見ることで、その大切さを感じてもらいたいです」
と期待を語っていました。
話を聞くだけではなく、自分の目で見て、自ら感じる。そんな学びができるのも、本邦研修の大きな価値の一つだと学びました。

北里大学薬学部生薬学教室にて、白畑辰弥准教授より化学分析手法の説明を受ける皆さん

古平栄一准教授(北里大学)の案内のもと、薬用植物園で栽培されている甘草に実際に触れながら理解を深める研修員の皆さん

日本での学びを自国へ

研修員の皆さんは、日本の研究機関や企業の視察を通して、それぞれ多くの学びを得ていました。
ウズベキスタンで甘草の品質分析を担当するボブルジョンさんは、
「日本から何かをもらうだけではなく、自分たちに足りないものを見つけたい」
とおっしゃっていました。
技術をそのまま持ち帰るのではなく、日本での学びを通じて自分たちの強みや課題を見出そうとする姿に感銘を受けました。
また、野生甘草の採取や人工栽培試験を担当するカユムクルさんの、
「ウズベキスタンには海がないので、一度見てみたいです」
という言葉も印象的でした。
私たちにとって当たり前の景色が、誰かにとっては一生に一度の憧れかもしれない。そんなことを改めて感じました。

SHEPアプローチから学ぶ「売れるものを作る」発想

研修後半では、プロジェクトで事業モニタリング等に携わる井上洋一氏によるSHEPアプローチの講義も行われました。
SHEPアプローチは、「作ってから売る」のではなく、「売れるものを考えてから作る」という考え方に基づく農業経営支援手法です。
従来のトップダウン型の支援ではなく、農家自身が市場を調査し、顧客のニーズを理解したうえで作物を選択することを重視しています。
また、
「農家に必要なのは知識だけではなく、自分で成功を実感する経験である」
という言葉も心に残りました。

技術だけではなく、信頼を育てる

今回の研修やプロジェクト関係者の方々からお話を聞く中で、私が特に印象に残ったのは「信頼構築」の重要性でした。
甘草は収穫まで約3年かかります。そのため農家の皆さんにとっては、「本当に売れるのか」「継続していけるのか」という不安があります。
鈴木さんのお話では、過去に海外企業による農業プロジェクトが途中で終了してしまった事例もあり、地域の人々が新しい取り組みに慎重になる背景もあるそうです。
だからこそ、このプロジェクトでは栽培だけではなく商品開発も並行して進めています。お茶づくりやマーケティングなど、少しずつ形になっていく様子を見てもらうことで、地域の方々に事業への理解を深めてもらうことを大切にしています。
国際協力というと、大きな技術や資金の話を想像しがちです。しかし今回のお話を通して感じたのは、それらを現地に根付かせるためには、人と人とのつながりや信頼関係の構築が欠かせないということでした。
相手の声に耳を傾け、歩みを重ねていく。その積み重ねこそが、国際協力なのだと学びました。

Project Design Matrix(PDM)の講義後、プロジェクトの目標や課題について議論を深める研修員の皆さん

世界のヤッカバグへ

プロジェクト開始から1年。
品質向上や販路開拓などの取り組むべき課題はあるものの、甘草栽培に向けたストロン(地下茎)の保存と再植栽による発芽成功など、少しずつ成果も生まれ始めています。
鈴木さんに今後の目標を伺った際、一番印象に残ったのはこの言葉でした。
「ウズベキスタン国内だけでなく、世界に名をとどろかせるヤッカバグにしたい。世界のヤッカバグへ!」
目指しているのは甘草の栽培に留まらず、ヤッカバグという地域そのものの未来なのだと感じました。

おわりに

今回、本邦研修への同行を通じて、私自身も本当に多くのことを学ばせていただきました。
研修員の皆さんとは様々なお話をし、ウズベキスタンの文化や暮らしについて教えていただいたり、お土産をいただいたりもしました。短い期間でしたが、とても温かい時間でした。
また、実施団体の皆さんが研修員一人ひとりと真摯に向き合い、「日本に来てよかった」と思ってもらえるよう準備されている姿も印象的でした。
今回の研修を通して感じたのは、国際協力は決して特別な人たちだけが行うものではないということです。異なる国や文化を持つ人たちが出会い、お互いを知り、理解しようとする。その積み重ねが信頼になり、未来につながっていくのだと思います。
そして個人的に忘れられないのが、甘草入りの緑茶の試飲です。
ほんのりと自然な甘さが広がりながら、後味はとてもすっきりしていて、飲んだ後には少し気持ちが落ち着くような感覚がありました。商品化された際には、ぜひ応援したいと思えるほどおいしいお茶でした。

甘草を使用した紅茶の試作品

世界にはさまざまな事情や課題があります。しかし今回出会った皆さんを見ていると、それぞれの立場でより良い未来をつくろうと努力している人がたくさんいることに気づかされました。
本邦研修で得た学びや出会いが、これからのヤッカバグの発展につながっていくことを願っています。
皆さんもぜひ、「世界のヤッカバグ」を目指すこの挑戦を温かく見守っていただければ幸いです。

本邦研修修了式


案件概要表:甘草の栽培・加工技術導入を通じた地域産業振興プロジェクト
実施団体:薬ゼミ情報教育センター

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