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ベトナム国クァンナム省山岳少数民族地域における地域資源を活用した持続的な農村産業促進のための基盤構築事業(草の根パートナー型)

2026.11.05

経済発展に沸くベトナム、ダナン市。その一方で、内陸部の少数民族が暮らす地域には発展の恩恵が十分に届いているとは言えず、多くの人々が取り残されていました。しかし、そこには豊かな自然や伝統文化、人々の知恵といった、少数民族の地域ならではの“宝”が息づいていました。
公益財団法人国際開発救援財団(FIDR)はそうした少数民族の“宝”を引き出し、持続可能な農村産業の振興や観光開発、そして特産品づくりへとつなげる取り組みを進めてきました。本記事では、少数民族の人々と共に、地域に眠る可能性を引き出し地域の未来を切り拓いてきたFIDRの取り組みを紹介します。

はじまりは・・・

30年前、まだまだ素朴さが残るベトナム中部にFIDRの大槻修子さんは足を踏み入れました。ベトナム政府の要請を受け、当時は外国人がほとんど入ることのできなかった内陸部の少数民族地域で村づくりに協力することになったのです。そうして10年ほどベトナムで活動するうち、ある問題が見えてきました。ベトナムの沿岸部では経済が急速に発展する一方、内陸の少数民族の人々との間には、経済や情報、教育、環境面などにおいて、大きな格差がありました。また、価値観や文化背景等の違いから、社会の中で能力や可能性を十分に発揮できる機会が少ないこともあり、自信を持てずにいる人々も多く見られました。
しかし、大槻さんの目に映った彼らは違いました。
「少数民族の方たちは、気さくで懐が深く、友人として訪ねると、自分の村での出来事を本当に楽しそうに語るのです。こうした彼らの文化や村の中にある『好き』を生かしながら支援ができないか、と考えたことがこのプロジェクトのきっかけでした」

“宝”をみんなで分かち合うコミュニティ・ベースド・ツーリズム(CBT)

大槻さんは地域資源の活用を考える際、まずは“宝さがし”から始めるといいます。
「自分が一番時間をかけているもの、ついやりたくなることは何か?そうして時間をかけて考えると、だんだん自分にとって特別なものが見えてきます。例えば、農具や自作の籠、こだわりのハーブや黒豆など、一見すると何気ないものばかり。日常の一部だったから気付かなかっただけで、彼らは暮らしの中で受け継がれてきた沢山の輝く“宝”を持っていました」

自分たちにとっては当たり前だったものも、少し視点を変えて磨けば、多くの人を惹きつける価値になります。FIDRは、地域の人々が自らの“宝”に気づき、その魅力を発信できるよう後押ししてきました。
こうした“宝”をより多くの人たちに知ってもらうため、少数民族の人々が主導して自分たちの村の観光プランを考え始める、これこそがFIDRが目指してきたコミュニティ・ベースド・ツーリズムの形でした。

こうして誕生した少数民族村落の観光は、今では「4時間のマジック」と呼ばれる人気プログラムとなっています。訪問者は単なる観光客ではなく、大切な友人や家族のように迎え入れられ、短い滞在の中で村の一員になったような温かな時間を過ごします。その評判は口コミで広がり、日本の大学生をはじめ様々な人が訪れるようになりました。

また、このプロジェクトは弱みではなく強みに目を向ける姿勢も象徴的です。美しい景観を持ちながらも道路事情により大型車でのアクセスが難しく、農村観光の開発が難しいと思われていた村では、その条件を逆手に取り、自転車で絶景を巡るツアーを企画しました。するとそれが村ならではの魅力となり、多くの人を惹きつける人気の観光スポットとなりました。

地域に足りないものを外から補うのではなく、地域の中に眠る価値を見つけ、磨き、未来につなげていく。FIDRは「強みを生かす地域づくり」を少数民族の皆さんとともに実践してきました。

711個もの“宝”が新たな特産品として誕生

地域に眠る“宝”を生かした特産品づくりも、大きな成果を生み出しています。
例えば、少数民族カトゥー族に代々受け継がれてきた伝統的な手織りを活用したペンケースや名刺入れなどは、今では日本企業から大量の注文が入るほど高い評価を受けています。また、有機栽培の黒豆などの農産物がオーガニック市場にて通常の数倍の価格で販売されたり、地域の食文化を生かした「たけのこのピクルス」がワークショップで即完売したりするなど、少数民族の暮らしの中にあった“当たり前”が新たな価値を生み出しています。
今では、少数民族たちによって711個もの特産品が開発されました。「自分たちの“宝”がこうして市場で認められる」ことは、少数民族の収入向上だけでなく、「自分たちの暮らしや伝統には価値がある」という誇りと自信を取り戻すきっかけとなりました。また、この取り組みは女性や高齢者の活躍の場も広げ、村の中でもより尊重されるようになってきているのです。

ベトナムと日本をつなぐ架け橋として

2026年10月、本プロジェクトはひとつの節目を迎えます。しかし、FIDRの挑戦はここで終わりません。中部ベトナムでは例年大雨や洪水など自然災害が繰り返し発生しています。こうした環境の中でも地域の人々が主体となって活動を続けられる仕組みを育て、そしてゆくゆくは、地域資源を活用した農村産業促進のモデルとして、他地域にも広げていくことを目指していきます。

この取り組みの恩恵はベトナムだけにとどまらない、と大槻さんは言います。
「ベトナムはどんどん発展しており、中には日本からの支援はもういらないのでは…という声もあります。しかし、経済発展が進むにつれ、人やモノ、企業活動などを通じた日本とベトナムのつながりはますます深まっています。こうした時代だからこそ、一方的に支援する・される関係ではなく、お互いを理解し、学び合いながら共に課題解決に取り組む国際協力が重要になっていると感じています。私たちはベトナムと日本の架け橋として相互に恩恵をもたらせるよう、これからも支援に取り組んでいきます。」

FIDRは、地域に眠る“宝”を見つけ、その価値を世界へつなげてきました。そしてこれからは、人と人、地域と地域、ベトナムと日本をつなぐ架け橋として、新たな歩みを続けます。少数民族の人々が自らの文化や暮らしに誇りを持ち、その輝きを次の世代へ受け継いでいく。そんな未来を支える挑戦は、これからも続いていきます。

関連リンク:事業提案書要約
実施団体:FIDR - 国際開発救援財団

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