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授業実践紹介vol.3 「ジブンゴト化して考える」が根付いた教室(栃木県宇都宮市立岡本北小学校)

2020年11月12日

今回訪問したのは宇都宮市立岡本北小学校4年2組の教室。
担任の仲田先生は今年度力を入れている取り組みについて以下のように話す。

「総合的な学習だけでなく、様々な教科とSDGsや自分たちの社会について考える授業を結びつけていきたい。その過程で学年や校内の他の先生を巻き込んだ実践を行っていきたいです」

今回は地球ひろば主催の国際理解教育×開発教育指導者研修を通して作成した学習指導案の単元「われら環境調査隊」(全30時間)の最後の部分を見学させていただいた。

授業見学:4年2組 地球サミット

8チームに分かれて取り組みたいアクションを提案

他のチームの提案に興味津々

「持ち主が現れなければ、忘れ物をした人が自由に使える」落とし物箱。モノを大切にするアクションの一つ

「それではただいまより、4年2組地球サミットを始めます」
司会役の宣言で、この日の授業は始まった。

子どもたちは「食品ロスチーム」「パーム油チーム」「児童労働チーム」等8チームに分かれ、1チームずつ今後クラスで取り組みたい行動についての提案を順番に行った。

事前に自分たちで用意した写真やデータを用いながら、身の回りの生活でどんな点に課題を感じているか、クラスとして何に取り組むべきかを提案していく。

「1週間の中に”NO”ストローデーを作る」
「月3回給食完食の日を作る」
「パーム油が使用されている給食のメニューを調べて書き出す」
といったクラスで取り組む単位の目標から、

「自分のものに名前を書く」
「落とし物箱の中身を定期的に確認する」
といった今すぐにできること、

「フェアトレードマークの付いた商品を買う」
といった家庭を巻き込むような取り組みまで、「自分たちにできること」という目線で考えられた提案が並んだ。

また、多くのチームが「ストローの利用状況」や「給食を残す理由」について事前アンケートを行い、現状の聞き取りを行っていた。

教室に根付く「ジブンゴト」の姿勢

身の回りから環境につながるアイデア。それぞれが「ジブンゴト」として考えられたもの

環境サミットの後、各提案がSDGsのどのゴールと結びつくか考えるグループワークを実施

提案の後は、他チームからの質問やコメントの時間となった。

ここで驚かされたのは、子どもたちの質問力の鋭さと具体性である。

「月3回給食を完食する日を設定ということだが、そのゴールは簡単すぎないか?」
「パーム油を使った食品を調べて書くだけでは意味がないのでは?」
「フェアトレード商品を買う、だけでは効果が薄いと思う」
「”NO”ストローデーに関するアンケートでは反対意見もあったが、その意見は気にしなくてよいのか?」

質問が次々にあがる。

「す、鋭い。。。聞かれたチームは答えられるかなぁ」と心配していると、「そういえば、先月は1回も給食完食できていないよね」と仲田先生。

ある子にとっては毎日給食を完食することは当たり前でも、そうでない子もいる。簡単そうに見えた目標も、クラスの現状を確認すると少し達成が困難であったことに子どもたちは気付いた。

目標としてふさわしいレベルについて再度話し合いが行われた結果、「まずは月に1日完食する日を設ける。達成できれば月に2日、3日、と増やしていく」という結論に至った。

あくまで先生はフォローに徹し、話し合いは子どもたち主導で進んでいく。
「ジブンゴト」という言葉の主体が、いつの間にか一人ひとりから「クラス」という集団になっていた。

質疑応答の後は採決へと移っていった。
8チームの提案を全員で検討し、そのアクションを実施するか、しないか、1つずつ確認していく。

ここにも仲田先生が力を入れる「ジブンゴトとして考える」視点が反映され、実際に取り組むアクションを「自分たちができるかどうか」という視点を持って議論が行われた。

各チームの提案をそのままアクションへつなげるのではなく、「何のためにやるのか」「立てた目標は自分たちにとって実現可能か」「みんながやりたい・できると思えるような内容か」を吟味して決定する。そんな点もSDGsの「誰一人取り残さない」という視点を育むうえで大切なポイントだ。

「ジブンゴトとして考える」姿勢が一人ひとりに根付いていくことを感じた45分間の地球サミットであった。

教科×国際理解教育と汎用性

「国際理解教育は海外のことを学ぶだけでなく、自分たちの社会をより良くするための教育と考えています」と話す仲田先生

授業後、仲田先生に今回の全30時間の単元についてポイントをうかがった。

「学年の他の先生も活用できることを意識しました。今年度は特に新型コロナウイルスの影響もあり、総合的な学習の時間を確保することが難しくなっています。そのような状況で、どうすれば国際理解教育を実施できるかを考えたときに取った方法が、国語や社会といった教科科目の内容と、総合的な学習の時間の内容とを関連付けて学びを進めることでした」

今回の全30時間の指導案を見てみると、総合的な学習の時間を軸に、社会7時間、国語6時間、外国語活動1時間と、様々な教科と関連づけて構成されている。


「教科科目に国際理解教育を取り入れることで、より多角的な視点から学ぶことができます」
「今回であれば、社会の時間でゴミ問題をはじめとした環境について学び、国語では環境問題について学んだことをより多くの人に知ってもらうことを目的に新聞作成を行いました。各教科の内容を関連付け、国際理解教育の視点を取り入れながら学びを進めたことで、子どもたちの学びもさらに深まったと思います」

「また、様々な教科との関連を図ったことで、他の先生が取り組みやすい環境を作ることができました。社会、国語、外国語活動などに国際理解教育の視点を取り入れたことで、他の先生も“国際理解教育は追加で行う取り組みではなく、既存の授業や教科の中で行うことが可能”という認識を持っていただけたのではないかと思います」
「今後は、学年を超えて校内で一緒に取り組みを進められる仲間を少しずつ増やしていきたいと思います」

最後に、授業に生かせるポイントをたくさん学んだという国際理解教育/開発教育指導者研修について尋ねてみた。

「授業を作る際の教師の気持ちの持ち方、発言一つに込める気持ちの重要性を学びました。研修で講師の方が“キレイゴトからジブンゴトへ”と表現されていましたが、まずは教師が“ジブンゴト”として考え、子どもたちに伝える、その過程の重要性に改めて気づきました」
「また、教師が教えることが子どもたちにどう伝わるか常に考える必要がある、“教える”よりも“ともに学ぶ”姿勢を持つことが重要だと感じました」

今後、仲田先生だけでなく周囲の先生や子どもたちを通して、校内や家庭内に身の回りや世界の課題を「ジブンゴト」化して考える姿勢が広がっていく、そんな未来の様子が浮かんだ。

(報告:地球ひろば推進課 濱小路 元)

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