【研修員受入事業】オンラインで、エチオピアの地すべり対策研修を行いました!

2021年6月16日

時差の関係で夜9時頃まで続いた講義(写真左:榎田充哉常任顧問、右:研修運営を補助した深田千晶研修監理員))

社会インフラにおけるアセットマネジメントとは、インフラの不十分な維持補修が問題化した1980年代のアメリカで生まれた考え方で、「社会インフラを国民の資産(アセット)として位置づけ、計画的かつ戦略的に、アセットの価値を維持し、高める」という考え方です。
道路アセットマネジメントは、こうしたアセットマネジメントの考え方を道路や橋梁などの道路資産の維持管理に適用した考え方です。現状を適切に把握し、資産の劣化や損傷を予測し適切な時期に補修及び補強を行うことで資産の長寿命化を図り、ライフサイクルコストの最小化を目的とした維持管理計画を実現させるものです。
エチオピアでは、道路アセットマネジメントの推進に向けた現地関係機関の実施体制が整備されるよう、日本人専門家が技術支援を行っています。その協力の一環として、JICA北陸では2021年3月22日~3月26日に「地すべり対策」に焦点を当てた研修をオンラインで実施しました。

専門分野の計算演習も行いました(写真右上:古谷元准教授)

地すべりとは、「岩や土、またはこれらが混ざったものが斜面をすべり落ちる現象」を指し、発生すると、道路の寸断や町が壊されるなどの土砂災害が起こります。毎年各地で地すべりが発生する日本には地すべり対策のノウハウがあるのです。この研修ではエチオピア道路公社(ERA)の職員12名を対象に、日本における地すべり防災政策や対策技術について、講義や質疑応答を行いました。講師は、富山県立大学環境・社会基盤工学科の古谷元准教授、国土防災技術株式会社の榎田充哉常任顧問に務めて頂きました。

いざ、立体視に挑戦!

研修員が熱中した講義のひとつに、立体視の演習がありました。この立体視を身につけると、航空写真から斜面災害の危険性の高い地形の分布を把握して道路建設の計画を立てるのに役立ちます。真ん中に厚紙を立てて、両眼の視界を区切って立体視のトレーニングを行いました。演習で使った2枚の航空写真を立体視すると、圧倒的な標高差や、河岸段丘のようななだらかな地形の微妙な標高変化もハッキリと認識できることが分かりました。

感染対策をしながらグループで意見交換

1週間の研修が終わって、研修員からは、「あっという間だった、時間が足りない」、「人の命を守るために、地すべり対策・防災が重要だと改めて学ぶことが出来た」という声が聞かれました。

修了証書のバーチャル授与式に臨む研修員代表

最終日の閉講式では、修了証書の「バーチャル授与式」を行いました。カメラに向かってJICA北陸所長が修了証書を差し出すと、研修員代表のイタゲスさんが一生懸命にそれを受け取ろうとする姿に、これまで大真面目に参加していたエチオピア人も日本人も思わずみんなで大笑い!
本来であれば来日して開催されるはずだったこの研修、「コロナが収まったら日本の地すべり対策の現場を見に行きたい」と研修員一同、思いを新たにそれぞれの業務に戻っていきました。

ようやく対面で修了証書を渡せました!

そして、研修終了から3ヵ月が経った6月、一人一人の名前が印刷された修了証書がようやくエチオピアに届きました。ERA職員の地すべり対策の取組みはこれからも続いていきます。


(JICA北陸 野吾奈穂子)