フェアトレード=買い物で参加する国際協力

2021年11月10日

JICA北陸、トークショーに参加!

原材料の産地の環境を守りながら生産者がきちんと収入を得られるよう商品を販売する仕組み、それがフェアトレードです。ここ金沢市では1986年頃からフェアトレード活動が始まり、フェアトレード商品を扱う店舗数は「フェアトレードタウン」認定にあと一歩のところまで増えてきました。市民の皆さんが続けてきた取り組みが実って、今年初となるフェアトレードフェスタが開催されました。
この記事では、JICA北陸が参加したトークショーについてご報告します。(報告:JICA北陸 野吾奈穂子)

金沢市でフェアトレードを発信~「人権」と「環境」にまつわるトーク

高校生・大学生もモデルをしたフェアトレードファッションショー

10月23日、土曜日。27団体のブース出展やフェアトレードファッションショーなどのプログラムが行われた「かなざわフェアトレードフェスタ2021」には1日だけで約3,000名が来場し、トークショーには約50名のお客様が参加してじっくりと耳を傾けてくださいました。

パネリストは、今年で10周年を迎える金沢大学フェアトレード推進サークルKuLOs(クロス)のメンバー倉田佳祐さん、タイやフィリピンの布製品に関わってきた金沢星稜大学人文学部の高原幸子准教授、そしてJICA北陸野吾の3名です。

高原先生がステージで見せてくれたフィリピンのポーチ

タイなどで農家の副業として縫製に携わる女性たちに関わってきた高原先生。これらの地域では伝統的な布製品を文化として守っているそうです。水色や赤、黄と色とりどりのポーチやランチョンマットを手にして、「これはフィリピンやネパールの製品。商品の収益が女性たちの人身取引や性産業への従事を防ぐことができ、製品を作る作業は傷ついた女性たちの心を癒す効果もある」と説明すると、倉田さんは「純粋に商品として魅力的。自分が今着ている服もフェアトレード商品だが、『開発途上国を支援するために協力する』というだけでなく商品の魅力に目を向けて欲しい」と話しました。

愛知県6個分の森林が消失?エチオピアコーヒーと森林を守るJICAの取り組み

森の見回りをするエチオピアの人たち

高原准教授の「人権」に関わる話に続いて、JICA北陸からは「環境」の視点で、エチオピアのベレテゲラという地域での国際協力プロジェクト(★注1)をご紹介しました。
エチオピアのおもてなしに欠かせないコーヒー。お客様を迎える時はコーヒー豆をじっくり時間をかけてローストして、大切に淹れたコーヒーを出す「コーヒーセレモニー」という文化があります。そんなエチオピアのコーヒー「アラビカ種」は大きな木の木陰で育つのですが、収入を増やそうと農地を広げたり、家で使う薪を確保するために人々が木を伐採して、エチオピアの森林はみるみる減少(なんと1990年から2010年までの20年間で、愛知県の面積6個分の森林が消失!)。野生のコーヒーが育ちにくくなっていきました。そこでJICAは、森林を守りながらコーヒー農家の収入をアップさせる活動をエチオピアで始めたのです。その結果、収穫された高品質な豆が50%も高い値段で日本で売れるようになり、森林減少率もこれまでの約3分の1に食い止めることが出来ています。

このコーヒーはUCC上島珈琲で販売されており、「フェアトレード」の認証は受けていませんが、レインフォレストアライアンス認証(★注2)を取得しています。品質の良いものを適正な価格で売ることで生産者がきちんと収入を得られる状態になる、そのために、JICAが現地で生産者のスキルアップのための技術指導を行ってきた様子を写真などを交えてご紹介しました。

JICAでは他にも、2020年1月に「開発途上国におけるサステイナブル・カカオ・プラットフォーム」を設立して、児童労働や森林減少など複雑な課題を抱えるカカオ産業を持続可能にするため、関係者による知見共有や情報発信の場を作りました。チョコレートやココアの原料となるカカオ、こちらも私たちの生活にとても身近な存在ですね。

(★注1)エチオピアでのJICAプロジェクト:2003年から始まった活動は現在第3期に。現在実施中のプロジェクトは、「REDD+及び付加価値型森林コーヒー生産・販売を通じた持続的な森林管理支援プロジェクト」。
(★注2)レインフォレストアライアンス認証:その認証製品または原料が、持続可能性の3つの柱(社会・経済・環境)の強化につながる手法を用いて生産されたことを証明する制度。認証商品のパッケージには、緑色のカエルのマークがついている。

商品の背景に思いをはせて

認証はあくまでも消費者が商品を選ぶ時の基準です。大切なのは商品の背景にある生産者に思いをはせてみること、価格や品質など様々な価値基準がある中で本当に良いと思ったものにあなたの大切な「一票」を投じることです。あまりにも安い商品があったら一度立ち止まって、この商品の売り上げで、生産者を始めとするサプライチェーン(★注3)全体が本当に潤うのか考えてみることも重要です。

今すぐにあなたも参加できる国際協力、それがフェアトレードです。無理して高いものに手を出す必要はありません。まずは身近なもの、好きだなと思えるものから生活に取り入れて、開発途上国の人たちとのフェアなトレード(公正な取り引き)に参加してみませんか。

(★注3)サプライチェーン:原材料の調達から加工・製造、在庫管理、配送、販売、消費までの一連の流れ。供給網。

エチオピアの民芸品やプロジェクトについて学べる展示を実施中!(12月28日まで)

リファーレ3階で展示中です!

トークショーでご紹介した民芸品を始め、実際にエチオピアで使われているものをご覧いただける展示を行っています。コーヒーのプロジェクトだけでなく、金沢市の特定非営利活動法人砂漠を緑で包む会によるJICA草の根技術協力事業「在来種による植林と環境教育を通じた住民組織による里山復元事業」の様子もご覧いただけます。
場所は石川県国際交流協会交流サロン(リファーレ商業公益棟3階、パスポートセンター前)、12月末までの企画展ですので、一度足を運んでみてください。