コーヒーでつながる金沢市のコミュニティカフェとアフリカ

2021年12月1日

町家を改装したZenrin Cafe(ゼンリンカフェ)

JICAがエチオピアやルワンダでコーヒー農家を支援する技術協力を行ってきたこと、ご存知ですか?
これまで現地での技術指導にご協力くださっているUCC上島珈琲(株)は現在もプロジェクト地域からのコーヒー豆の買い付け・日本での販売をしています。この度、チャリティーの一環でUCC上島珈琲(株)から寄贈されたコーヒーを、金沢市の第一善隣館Zenrin Cafe(ゼンリンカフェ)に集まった認知症講座の参加者が楽しみました。(報告:JICA北陸 野吾奈穂子)

UCC上島珈琲(株)から金沢市内の社会福祉法人にコーヒー豆を寄贈

去る10月23日(土)に開催された「かなざわフェアトレードフェスタ2021」のトークショーでJICA北陸がこのコーヒーを紹介したご縁で、UCC上島珈琲(株)からコーヒー豆寄附のご提案があり、JICA北陸から金沢市の2つの社会福祉法人を紹介しました。第一善隣館のコミュニティカフェ「Zenrin Cafe」とひろびろ福祉会が運営する泉野図書館内の「エルカフェひなげし」ではどちらも障がいのある方が働いており、継続的に活動を続けている社会福祉法人を母体としています。UCC上島珈琲(株)の商品である「エチオピア・モカ ワイルド・ベレテ・ゲラ」と「ルワンダ フイエマウンテン」の2種類18袋を2ヶ所に分けて寄贈することになりました。

人が集まり、学びあい、楽しむ「オレンジカフェ」

店内の花嫁のれんが色鮮やか

地域の方々がコーヒーを楽しんでいる様子を取材するため、11月27日(土)に第一善隣館Zenrin Cafeで行われた「オレンジカフェ」(★注1)に私もお邪魔してきました。

町家を改装したZenrin Cafeは、2012年にオープン。畳敷きの店内には赤の華やかな花嫁のれんや水引き細工なども飾られていて、とってもおしゃれな空間です。

Zenrin Cafeで開催される「オレンジカフェのまち」は30分の認知症講座と1時間半のコーヒータイムがセットになっていて、参加費200円で誰でも参加できる憩いの場になっています。

宮田真佐美さんによる分かりやすい認知症講座

この日は、地域の方々や民生委員など5名が参加しました。まず、講師を務める主任介護支援専門員の宮田真佐美さんが認知症という病気について説明。誰でもなりうることや、周りから見ると不思議な行動も患者さんなりに一生懸命に考えた結果であることを踏まえて接すると良いことなどを、明るく分かりやすく話してくれました。集まった5人の参加者は、「こういうこと、実際にあるんだよね」とご自身や身近な人の体験を振り返りながら聞き入っていました。

コーヒーを飲みながらアフリカの生産者に思いをはせて

高級感のあるカップに注がれたエチオピアコーヒー

講座の後は、お楽しみのコーヒータイム。私から、このコーヒーはもともとエチオピアの森林の木陰で育った野生のコーヒーであることや、最近ローソンのマチカフェでも使われているカエルのマーク「レインフォレストアライアンス認証」を取得した森林保全をしながら作られたコーヒーであること、UCC上島珈琲(株)にJICAのプロジェクトにご協力頂いたことなどをご紹介しました。
高級感のあるカップに注がれたエチオピアのコーヒーが配られると、民生委員の岡さんから「エチオピアでもコーヒーは飲まれているんですか?」と質問が。私が、エチオピアには「コーヒーセレモニー」というお客様をおもてなしするしきたりがあると話すと、初めて聞くエチオピアの文化にみなさん一様に驚いた表情。コーヒーを口にした参加者の宮田政子さんは「すっきりして飲みやすいね」と笑顔を見せてくれました。

右から参加者の宮田政子さん、松本幾子さん

「どこでこのコーヒーを買えるの」という質問もあったのですが、実は北陸にはUCC上島珈琲(株)の店舗が少なく、福井県の店舗で飲むかネット通販でコーヒー豆を買えるとご説明すると、「なら、ここに来て飲めばいいね」と宮田さん。遠くアフリカから届いたコーヒーが、またひとつ、Zenrin Cafeに集まる地域のみなさんの楽しみとして加わったようです。

人と人がつながる場づくりを目指して-Zenrin Cafe施設長宇野孝一さん

大正琴イベントの話でスタッフと盛り上がる(手前左から岡さん、松本さん)

この日の参加者の一人、松本幾子さんは大正琴の先生でもあり、第1・第3木曜に、なんと無料で(!!)Zenrin Cafeでレッスン指導をしているそうです。他にもZenrin Cafeではクラフト教室などみんなが集まれるイベントをたくさん企画していて、こうした気軽さが魅力ですね。
施設長の宇野孝一さんに伺ったところ、つながりの場を作るために2012年にこのZenrin Cafeをオープンしたそうです。金沢市役所で長く福祉行政に携わってきた宇野さんは高齢者の孤立や孤独死の問題に心を痛めてきました。「特にコロナ禍でこうした問題が顕在化した」と言います。

この日は北國新聞と朝日新聞の記者が取材に訪れて、それを見たみなさんが「私たち新聞に載るのかな!」と盛り上がって笑い合っていました(★注2)。和気あいあいとおしゃべりを楽しむ参加者のみなさんを見ていると、誰でも気軽に集まれる場を作り守ってくださる方々の存在がいかに大切であるかを、コロナ禍を経て私も改めて痛感しました。施設長の宇野さんを始め、スタッフさんも気さくでおしゃべりが好きな温かい方々です。是非みなさんも、Zenrin Cafeを訪れて楽しくコーヒーを飲みながら、コミュニティカフェの温かさにふれてみてください。

(★注1)オレンジカフェ(認知症カフェ):「認知症の人やその家族の方など、誰もが気軽に集うことができる認知症カフェ(金沢市ホームページより)」のことで、市内各地で定期開催されています。認知症の当事者でないと参加できないわけではなく、誰でも参加できるコミュニティのための場です。以下の関連リンクから、お住まいの地域にあるオレンジカフェの開催情報が見られます。
(★注2)新聞取材:その後、無事に北國新聞と朝日新聞に当日の様子が掲載されました。朝日新聞の記事が以下の関連リンクのデジタル版からも読めます。