組織概要・沿革

研究所設立を主導した故緒方貞子氏

2020年4月1日、国際協力機構(JICA)研究所は国際協力機構(JICA)緒方貞子平和開発研究所と名称を変更しました。

緒方貞子氏は国連難民高等弁務官を10年間務めた後、2003年10月から2012年3月まで、初代理事長としてJICAを率いました。2003年10月は、特殊法人「国際協力事業団(JICA)」から独立行政法人「国際協力機構(JICA)」へと移行した時でした。緒方貞子氏は、現場のニーズやコンテキストを捉えて事業を行う「現場主義」を重視し、「人間の安全保障」の実践に力を注ぎました。

2008年10月1日には緒方理事長の下で、我が国の開発援助において主に技術協力を担っていたJICAと、有償資金協力を担っていた国際協力銀行(JBIC)の海外経済協力部門が統合し、新JICAが発足しました。これにより、JICAは有償資金協力、無償資金協力、技術協力という3つのスキームを組み合わせて、より現場のニーズに沿った、インパクトのある事業を展開できる組織になりました。その際、国際協力機構法の改正によって研究業務が本来業務と位置付けられたことを受け、それぞれの組織が有していた研究機能[1]も統合されました。緒方貞子理事長は、開発途上国が現場で直面する課題について政策志向の研究を行い、国際社会における日本の知的プレゼンスの強化を目指して、2008年10月のJICA研究所設立を主導しました。

2019年10月22日、緒方貞子氏は92歳で永眠されました。緒方貞子氏によるJICA研究所の設立趣旨を継承・発展させ、世界の平和と開発への知的貢献を強化するために、2020年4月1日、JICA研究所はJICA緒方貞子平和開発研究所(JICA緒方研究所)と名称を変更しました。

JICA緒方研究所は、日本の開発経験や援助実施国としての知見を体系化し発信すると共に、国際秩序の変化、情報社会への転換、気候変動等の今日的な課題や脅威も踏まえて、研究・発信活動のさらなる充実に努めます。そして、世界をリードする開発・国際協力研究の拠点となることを目指します。

[1]従来、JICAの調査研究事業は、国際協力総合研修所調査研究課(1983年創設、その後、調査研究グループに改組)を中心に、技術協力の活動事例分析、国別援助研究、分野課題別の事業戦略および援助手法の分析・検討を行っており、内部向けの実践的なシンクタンクとして、事業に直結する知識・スキルの 提供を目的としていました。一方、国際協力銀行開発金融研究所の海外経済協力部門は、旧海外経済協力基金の調査開発部(1974年設置)から経済部(1988年設置)、開発援助研究所(1993年設立)の流れを引き継ぎ、国際協力銀行の調査・研究部門として、開発に関する国際潮流へ貢献すべく国際機関との共同研究に力を入れつつ、経済協力および開発援助理論に関する研究、開発途上国の開発課題に関する研究を蓄積・発信してきました。