JICA緒方研究所

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【JICA-RIフォーカス 第24号】 岡部恭宜主任研究員に聞く

2013年9月12日

JICA研究所、岡部恭宜主任研究員に聞く


JICA研究所では、人類学、経営学、政治学、社会学など様々な学問から、青年海外協力隊(JOCV)事業の研究に取り組んでいます。この学際的アプローチによって、JOCVの国際的、社会的、歴史的な役割や意義を捉えると同時に、日本人の国際貢献のあり方を考えようとしています。また、この研究プロジェクトは、効果的なボランティア活動、グローバル人材の育成、日本社会への還元などの政策的な課題に応えることも目的としています。


青年海外協力隊(JOCV)の学際的研究

—青年海外協力隊というテーマに興味を持ったきっかけは何ですか?

私は協力隊の経験者ではありません。しかし、2011年頃にこの研究を始めようと着想したのは、JICA研究所で勤務している以上、その立場を活かすためには、JICA固有の事業を研究すべきだと思ったからです。当時、研究所に協力隊の研究をしている人はいなかったので、取り組む意義は大きいと感じました。

最初は、過去の隊員が提出した報告書を片端から読めば、そこから何か分析できるのではないかとぼんやり考えていました。ところが、報告書は過去の隊員の数だけ、つまり約3万7千人分以上ありますので、仮に、一人で毎日欠かさず20通読んでも5年以上かかる計算になります。そこで誰か周りの人を巻き込もうと思いつきました。

—研究所でのプロジェクトに至るまでの経過について教えてください。

報告書の読解にこだわらず、どのような研究が出来るのかということを、協力隊経験者を含めた同僚達と話し合ってみました。すると、様々なアイデアや視点が出て、実際に研究に取り組みたいという声も寄せられました。そこで、研究所の有志を集めてチームを作ることにしました。 最初は7名でしたが、その後人事異動などもあって、現在は外部の研究者も含めて8名で構成されています。

2011年末のプロジェクト発足時に私が強調したことは、協力隊事業は、開発援助だけでなく、人材育成や国際交流など多様な側面を持っているので、様々な学問から研究する必要があるということでした。プロジェクト名を「学際的研究」としたのは、この理由からです。私の場合は政治学や歴史学の視点から、ほかの研究分担者は人類学、経営学、社会調査論、統計学の立場から研究に取り組んでいます。

—この研究プロジェクトには、どのようなテーマがあるのでしょうか。

協力隊という研究対象にどのように接近していくか、その視点は大きく二つに分けられると思います。一つは、協力隊員の活動自体を取り上げるミクロの視点、もう一つは、協力隊を国家の制度やプロジェクトとして取り上げるマクロの視点です。

ミクロの視点で見た場合、隊員の活動について、様々な研究テーマが浮かび上がります。例えば、個々の隊員が、何を学び、様々な能力をどのように、どの程度向上させたのか、また、隊員が現地で行った活動が成果を上げるには、どのような条件が必要なのかというテーマが考えられます。さらに、こうした隊員の能力や活動成果をどのような基準で評価するべきかという課題も、難しいけれど大切なテーマです。

ミクロの視点の対象は、隊員の活動期間だけに限りません。帰国した隊員が就職や進学など、その後どういう分野に進んだのか、企業や学校の受け入れ状況はどうなのかというテーマは、隊員個人だけでなく、日本社会にとっても重要な問題です。最近は、海外での仕事や外国関連の業務に従事できる人々を、グローバル人材などと呼んでいますが、こうした人材になる可能性が高いという観点からも、帰国隊員の経験や能力に関心が寄せられています。これは、隊員の就職状況の改善にも関わってきます。

他方で、マクロの視点は、国際ボランティア活動の制度として協力隊を見ることです。例えば、国際比較という興味深いテーマが出てきます。海外では、米国や英国が昔から国際ボランティア活動をしてきましたし、韓国も類似の活動を行っています。体系的な比較研究をすることで、日本の協力隊の独自性や各国との共通性がわかります。

また、協力隊という制度がどのような経緯で1965年に始まったのかという歴史研究も必要です。制度というものは、単に合理性や機能性だけで作られるものではなく、歴史的に形成される面があるからです。

—岡部さんの研究テーマについてお話しください。

私個人は、マクロの視点に関心があり、国際比較と協力隊創設の歴史を担当しています。これまでに米国の平和部隊(Peace Corps)と英国の(Volunteer Service Overseas: VSO)について、研究助手の協力を得て調査を進めてきましたし、アジアでは韓国とタイの事例を調べてきました。創設の歴史は、過去の外交文書や協力隊の古い資料などを漁りながら、研究をしています。

—協力隊員へのアンケート調査を実施されていると聞きましたが、具体的にはそのような内容でしょうか。

アンケートによる隊員への意識調査を行っています。この調査は研究プロジェクトの発足前から検討してきたもので、発足後はチーム全員で知恵を出し合い、質問票を作成しました。当初は紙の質問票を配布していましたが、現在は半分以上を、インターネットのウェブサイト上でアンケート調査を行っています。

調査対象の時期は、①派遣前、②任地に赴任して約1年経った頃、③帰国時です。つまり、同じ隊員に3つの異なる時点で回答していただくことで、個々の隊員の意識や考え方がどのように変わっていくのか、時系列で比較することを目指しています。ただ、隊員の任期は通常2年間ですので、3時点のデータを集めるには、もう少し時間と労力がかかります。

こうした継続的かつ大規模な調査は、かつてない試みですし、JICAの研究所だからこそ可能なものだと思います。これは協力隊研究のための調査ではありますが、最終的には、その研究成果が協力隊事業や隊員のために役立つものとなるように、チーム一同が希望しています。

これまで調査に御協力いただいた隊員の皆様には、本当に感謝しています。同時に、今後の調査の対象となる隊員の方々にも、御協力をお願いしたいと思っています。

 


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