JICA緒方研究所

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【JICA-RIフォーカス 第27号】 ドイツ開発研究所 ステファン・ライダラー主任研究員に聞く

2014年4月8日

ドイツ開発研究所のステファン・ライダラー主任研究員に聞く


ライダラー氏は、JICA研究所とドイツ開発研究所(DIE)との間で2013年から開始された人事交流プログラムの最初の客員研究員として、JICA市ヶ谷の研究所に約3週間滞在しました。ライダラー氏にDIEでの活動内容や研究所との共同研究を中心にお話を伺いました。


まず、ご自身の学歴とDIEに入られたきっかけについてお話しいただけますか。

わたしは、ドイツのマンハイム大学とハイデルベルク大学で開発経済学、産業経済学、国際経営学を専攻し、経済学者としての教育を受けました。学生時代は主にドイツで過ごしましたが、高校・大学時代には海外生活も経験しています。まず高校生の時に1年間アルゼンチンに留学してスペイン語を学び、フランス語は高校卒業後、フランスに1年間留学して習得しました。その後、中国にも8か月間滞在し、中国語の習得を試みました。特にフランス語は、サブサハラアフリカを主な研究対象地域としていることから、フランス語圏の国が多い西アフリカなどではその知識が役に立っています。

マンハイム大学の修士課程を修了後、DIEの研修コースに参加しました。これは開発政策・開発協力分野への就職を希望する大学院生向けの9か月間にわたるプログラムです。2003年に9か月間の研修を終え、そのまま研究員としてDIEに着任し、現在に至っています。当時のDIEは、地域ごとに部署が分かれていたため配属されたのはアフリカ部でしたが、後に組織の構成が変わり、現在の二国間・多国間・協力部に所属することになりました。
主な研究テーマは援助効果、財政支援、援助形態、パブリック・ファイナンスなどで、地域はサブサハラアフリカを中心としています。最近ではインパクト評価の手法にも強い関心があり、研究・適用の両面で取り組んでいます。

DIEでは、どういった分野を担当されていますか。

DIEでは研究、政策アドバイス、研修という3本の柱を中心に活動を行っています。これらの3本の柱の中で、先ほどもお話したように、研究では主に援助効果と援助形態、とりわけ財政支援に焦点を絞り、論文や記事を発表してきました。また財政支援の評価に携わる機会も増えており、最近では、ザンビアへの財政支援に関する国際的な評価プロジェクトに参加しています。ここでは主に評価の手法に着目し、財政支援のような複雑な援助介入をいかに適切に評価し、効果を向上させるかについて研究を進めています。

一本目の柱として、DIEには"co-lead"という言葉があり、共同で先導することを意味します。現在進行中のものでは、援助効果を異なる側面から分析している研究として、キャパシティ・ディベロップメント(CD)、カントリー・システムの活用、成果重視のアプローチ、結果のモニタリングとパフォーマンス評価のための指標の利用、そして援助効果と配分効率の関係など、複数の角度から研究を進めています。

次に2本目の柱である政策アドバイスの活動内容ですが、DIEの研究や一般的な学術研究を、ドイツの連邦政府や援助実施機関をはじめ、欧州委員会やパートナー国政府などに向けた政策アドバイスに応用する業務が中心になります。例えば、援助効果に関する研究を踏まえた、ドイツ経済協力開発省への政策の助言などが挙げられます。その他にも財政支援の専門家としてドイツ連邦議会の公聴会で発言したり、欧州の財政支援政策の展望について欧州委員会で発表しています。

次に3本目の柱として、ドイツの援助システムについての研修があります。本コースは1964年のDIE設立当初から提供されているもので、以前に生徒として受講したコースに、今は講師として関わっている形になります。DIEの全スタッフが貢献することを求められており、私はドイツの援助システム、援助の手段や形態、評価手法などの講義を担当しています。毎年20名の生徒が参加し、4つのグループに分かれ、研究プロジェクトを立案し、3か月かけて海外での現地調査を行います。これまでマラウィとザンビアでカントリー・ワーキング・グループを先導する機会があり、2回とも被援助国政府の財政マネジメントと公共サービス提供の効率性に関する調査を行いました。

今回、JICA研究所に客員研究員として滞在されている目的などについてお話しいただけますか。

きっかけは、2011年に財政支援の合同ワークショップをJICA研究所と共同開催した事から始まりました。人事交流では、今回、光栄なことに私がJICA研究所に招待されました。訪問の大きな目的の一つは、先日行われた合同ワークショップ「国際援助における非援助協調の政治と影響」の開催です。DIEからは二国間・多国間協力部の部長ステファン・キリンゲビィール、JICA研究所からは古川光明主席研究員と三上主任研究員(当時)が、発表を行いました。

日本滞在中は、JICA研究所の仕組みや研究テーマを理解し、共通の領域を探し、今後の協力の可能性も模索していきたいと思っています。中長期的な目標としては、合同ワークショップ開催だけでなく、理想的には論文や学術誌用の共同研究などを考えています。そして訪問のもう1つの目的は、現在私自身が進めている研究を研究所で発表することで、研究のテーマは「ザンビアにおけるインフラ投資の地理的分布と政治的ターゲティング」で、私自身のテーマでもある財政の政治経済に関するものです。

今後もJICA研究所との協力を強化していきたいとのお話がありました。具体的にどのような事をお考えですか?例えば研究員の人事交流や、日本への再訪問などでしょうか。

DIEでは、他の研究所との人的交流に強い関心があります。実際に様々な機関から定期的に客員研究員を受け入れています。これまでは研究員を送り出すよりも受け入れる事が圧倒的に多かったようですが、今後はDIEも、出向の機会を増やしていきたいと考えています。私自身も約2年前にUNU-WIDERの客員研究員として3か月間フィンランドに滞在した経験があります。今後も、共通の関心領域が見つかった場合は、DIEもJICAに客員研究員として研究者を送り出すか、またはDIEに受け入れることを継続したいと考えています。実際、東京に来ることに興味を持っている同僚も複数います。

組織としての仕組みは、両機関で異なります。JICA研究所にはJICAの一部であるという大きな利点があり、これは組織の仕組み、例えば予算の面などで大きな違いを生みます。他方、研究対象やテーマの面では、多くの共通領域があると思います。例えば、中国やアフリカ諸国などの新興国から援助形態や財政支援などのテーマなど、協力できる分野の余地は大いにあると思います。さらに、共同ワークショップでは、2014年の後半にボンで開催する話が挙がっていますので、この実現も期待されています。

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