JICA緒方研究所

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【JICA-RIフォーカス 第3号】英国開発研究所研究員フレッチャー・テンボ博士にインタビュー

2009年4月20日

一村一品運動は本当にアフリカの役に立つのか——ODI(英国開発研究所)研究員 フレッチャー・テンボ博士にインタビュー

Dr. Fletcher Tembo

JICA研究所とODIは2007年よりタイ、マラウイ、日本の一村一品運動を比較する共同研究を行っています。今回はこの運動の発祥地、大分県での視察から帰られたばかりのODI研究員で共同研究者のフレッチャー・テンボ博士に、一村一品に対するマラウイ人としての率直な思いを伺いました。


日本の一村一品による社会効果

博士は今回、大分県の別府、湯布院、安心院、大山町を視察されました。一番有意義だったのはどのようなことですか。

一番印象に残ったのは「人」ですね。地元のさまざまな資源から商品を作り出すことに、大きな誇りを持っていました。一村一品の意義とはまさに人に投資すること、人材を育てることだと、改めて実感しました。

何かそういった人々の年齢層や性別に特徴はありましたか。

はい、特に女性の存在が印象的でした。例えば自分たちでそば粉とはちみつを混ぜてお菓子を作る小さな工場を経営しているのです。女性は製品の生産から販売のすべてにかかわっていました。ご主人やお子さんの姿はあまり見掛かけませんでしたが、それぞれの組織もしっかりしているし、皆さん非常に自信を持って自分たちのビジネスについて説明してくれました。マラウイの女性の多くも働き者ですが、もっと古風です。

一村一品がマラウイにもたらした変化

2003年以降、マラウイの一村一品政策は全国で46種の事業を支援し、受益者は12,943人にのぼります。この運動の前後で最も顕著な社会変化は何でしょうか。

大豆油などを生産・販売しているグループに一度インタビューをした例がありますが、大きく変わったのは自分たちのお金を子どもの教育や家庭の栄養改善に自由に使えるようになったということでした。 以前は食物をほかの農家に頼っていましたが、今は一村一品で得た収入を直接市場で使えるのです。ですから世帯収入の使い方の選択肢が増えてきています。

実際、どのくらいの経済効果を上げているのですか。

収益が増えることも一村一品の一面ですが、グループの団結の方が、一般の人々にとっての収穫でしょう。それが収益増加のみを目的とする従来の中小企業支援策と違うところです。数字は重要ですが、それで人々の生活の質についてすべてが分かるわけではありません。

他のアフリカ諸国での一村一品

マラウイはアフリカで唯一、政府内に「一村一品事務局」を設けています。他のアフリカ諸国に比べ、中央機関を持つことの利点は何でしょうか。

私はワークショップでタンザニア、ウガンダ、ブルンジ、ケニアの代表者たちと話をしてきましたが、どの国でもマラウイの一村一品運動に高い興味を示していました。アフリカのほとんどの政府はまだ民主化の途中で、言い換えれば部署の権力関係でその手順がねじ曲げられる可能性が高いのです。もちろん専門の事務所にその可能性がないとは言い切れませんが、独立機関であれば迅速・客観的に問題への対処に当たる余裕が出てきますし、独自の評価活動が可能です。

マラウイでの一村一品の可能性

日本ではおそらく現在、マラウイ産のバナナワインやバオバオジャムは手に入らないと思いますが、マラウイの人たちは海外市場の開拓に興味あるのでしょうか。それとも地元での消費で満足なのでしょうか。

いや、皆輸出に興味あると思いますよ。ですが難しいのです。われわれの一村一品市場を広げるにはJETRO(日本貿易振興機構)のような組織が必要です。JETROには今、一村一品ショップのように少量の輸出入を扱う所が日本の空港2カ所にあります。もし日本政府が日本の中小企業にさらに投資してマラウイの生産者と提携を結べるようにすれば、マラウイ製品の輸出に道が開けるでしょう。良い投資先だと思います。

すると、輸出に一番必要なのは製品の品質改善、効率の良い生産、販売網の充実のどれでしょうか。

そうですね、主に品質改善と包装の仕方です。これはすでに一村一品が製品に付加価値を付ける意味で取り組んでいて、JICAの協力隊も参加しています。また一村一品は生産技術や製品・包装の品質管理も支えています。マラウイに必要なのは助成金や長期借款などで機械を導入し、何とか生産規模を大きくすること、また農民の力の及ばない地域での拡販支援です。

製品によって海外輸出を目指すか、地元での販売に専念するか、市場目標を区別したほうがいいのでしょうか。

市場目標と言うより、最終的に決め手になるのは需要に合う品質ではないでしょうか。星取り制を取り入れているタイでの一村一品の例を見ると、5つ星製品のみが輸出され、ほとんどは国内市場で販売されています。タイの評価団体は製品の背後にある物語や環境・社会への影響などに着目します。商品がたとえ高品質でも、生産過程で環境に悪影響があれば輸出を取りやめるかもしれません。製品の輸出はさまざまな要素を総合評価して決定し、これも大切な一村一品の価値付加なのです。

マラウイでの一村一品の最大の課題は何ですか。

最大の課題は実のところローンを組むことです。ほとんどの製品は付加価値の上乗せにコスト増を要します。一村一品は自分たちの資源枠で事業を進めることを推奨していますが、交通や電気などインフラ課題がほとんどのグループで事業の障害になっています。コメをさまざまな製品に加工しようとしていたコメ農家のグループがあったのですが、一村一品事業で技術は提供されたものの電力が足らずに断念しました。一村一品支援でそういった大きな助成金は下りないのです。この場合、交通や電力、水供給は人々の創意工夫の域を超えています。

博士の説明では、マラウイの一村一品制度は各地域団体による企画書に基づいて助成金を認可するということでした。地元製品の売り込みに、当の住民たちはどのくらい積極的なのでしょうか。

たとえ一村一品というお題目を意識していなくても、彼らは積極的です。これまで行政は定価での農産物販売促進しかやっていませんでしたが、地方の農民は今、一村一品のキャンペーンを通じ自ら付加価値を付けて製品を売り込もうとしているのです。一村一品は2、3ケ月で膨大な収入を確約するようなものではありません。しかし、自分たちの現地資源を再発見し宣伝するための費用を賄うことができます。ですから、この運動はさらに多くの事業を生んで広がっていくことと思います。

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