No.7 日本による台湾水道開発の歴史—明治政府が欧米から吸収し、日本と台湾で応用した考え方

  • #フィールドレポート

世界で高い技術を誇る日本の水道は、明治政府が公衆衛生の考え方を欧米からいち早く吸収し、法制度や経営、人材育成に適用したことに端を発する。その経験は植民地であった台湾でも応用された。本土を凌ぐ劣悪な衛生状況と低い技術水準であったにもかかわらず、日本の台湾水道開発は卓越した成果を挙げ、現在の中華民国でも利用・評価されている。

日本の台湾水道開発の特徴として、①政策面では、防疫と貿易促進の観点から衛生改善を急務と考えた後藤新平により、本土と変わない早さで水道整備が進展した。また「日本近代水道の父」バルトンの丁寧な調査により、特に台北では上下水道と都市計画を一体で見て、経済性や地域性、緊急度を踏まえた比類ない公衆衛生政策を実現した。②財務面では、バルトンの教えに沿った、受益者負担が可能な範囲内で最良の公衆衛生を保つための水道経営が実践された(日本統治前の清でも住民負担原則での改革が取り組まれたが、挫折した)。③能力面では、本国が官学一体で進める技官育成体制に台湾人は含まれず、自治体での限定的な技術移転のみだったが、戦後中華民国で活躍する台湾人技官の登場に寄与した。

キーワード:水道行政、衛生、明治維新、台湾、長与専斎、後藤新平、バルトン、劉銘伝、清、中華民国

著者
石丸 大輝
発行年月
2021年9月
言語
日本語
ページ
25ページ
関連地域
  • #アジア
開発課題
  • #水資源
  • #日本の開発協力
研究領域
地球環境