No.14 The Puzzle of the Universal Utilization of the Logical Framework Approach: An Explanation using the Sociological New Institutional Perspective

  • #開発協力文献レビュー

開発協力プロジェクトの目標、成果、活動等をマトリックスで整理したロジカルフレームワーク(ログフレーム)は、1970年代初頭に米国の国際開発庁で採用された後、一気に二国間開発協力機関や国際NGO間で普及。ログフレーム・アプローチという開発プロジェクトの運営手法として進化し、今や国際開発の世界では「標準ツール」と呼ばれるようになった。JICAの技術協力プロジェクトでも義務付けられるこの手法は、常に批判に接しながらも、多くの開発協力機関が代替を見つけられずにいる。

批判は、外部要因の影響が強く、関係者が多岐にわたる複雑なプロジェクトでは、ログフレームのように事前にプロジェクト目標達成への「ロジック」を組み立てることは不可能だ、というものだ。実際に複雑性に適した事業マネジメント手法は数多く提唱されている。では、どうして開発協力機関は、複雑なプロジェクトの最たるものと比喩される開発途上国での技術協力プロジェクトで、ログフレーム・アプローチという、必ずしも複雑性に適さず、開発協力分野以外では殆ど知られていないツールが使用され続けているのか。

残念ながらこの不可解な現象を解明する先行研究はない。しかし、「組織を取り巻く環境が組織の活動を決定する」という社会学の視点で見ると答えが見えてくる。つまり、ログフレームは、効果的な事業運営ツールとしての有用性よりも、対外説明責任の観点で開発協力機関にとって有益だからだと解釈することができる。本稿は、ログフレーム・アプローチの有効性や批判を巡るこれまでの先行研究と、社会学的新制度派組織論の文献のレビューを通じて、これまで論じられなかった「なぜ開発協力機関がログフレームに依存し続けるのか」という謎の解説に光を当てる。併せて、更なる解明にむけての今後必要な研究を提案する。

著者
伏見 勝利
発行年月
2018年12月