『クリーンダッカ・プロジェクト ゴミ問題への取り組みがもたらした社会変容の記録』
JICA研究所では、これまでに行ってきたJICAの事業を振り返り、その軌跡と成果を分析してまとめた書籍「プロジェクト・ヒストリー」シリーズを刊行しています。本シリーズの第17弾として、『クリーンダッカ・プロジェクト ゴミ問題への取り組みがもたらした社会変容の記録』を刊行しました。
目覚ましい経済成長を続けるバングラデシュ。首都のダッカでは、ゴミが河川や空き地に投棄されたり、街のあちこちにたまって悪臭を放ったりと、発展の裏側でゴミ問題が大きな社会的課題に。ゴミの排出量が増加しているにもかかわらず、収集率は44%にとどまり、最終処分場は汚水処理もされずにただ埋め立てるだけの場所でした。こうしてダッカのゴミ問題は「アジアに残された最大の懸念」と評されるまでになっていました。
そこで日本は2000年から15年にわたり、短期専門家の派遣、技術協力プロジェクトの実施、青年海外協力隊やシニア海外ボランティアの派遣、無償資金協力による資材の供与など、さまざまな側面から支援を進めてきました。ゴミ問題の解決には、組織体制、マネジメント、財政、将来計画、住民との協力など、廃棄物管理に携わる地方自治体であるダッカ市の組織強化とその職員の能力強化が不可欠。そこでダッカ市職員と共に、ワード(区)ごとに清掃事務所を設置して住民への窓口を設け、ゴミを総合的に管理する組織をつくり、最終処分場を衛生的な埋め立て処分場へと生まれ変わらせていきました。
本書の著者の一人であり、JICA専門家として現地で活動した石井明男氏は、1970年代に東京都清掃局の職員として「東京ゴミ戦争」に取り組んだ経験を生かし、住民参加型の廃棄物管理アプローチに力を入れました。廃棄物管理を自分の問題として考える—それが、家庭からのゴミの出し方という住民の生活習慣を変えていくことになったのです。
ダッカをきれいにするという共通の目標に向かい、行政と住民が協力しあうようになったクリーン・ダッカへの道。単なる「ゴミ収集」ではなく、総合的な「廃棄物管理」へと現地の人々の意識が変わっていった成功の軌跡がつづられています。
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