『いのちの水をバングラデシュに 砒素がくれた贈りもの』

  • #プロジェクト・ヒストリー

『いのちの水をバングラデシュに 砒素がくれた贈りもの』

JICA研究所では、これまでに行ってきたJICAの事業を振り返り、その軌跡と成果を分析して書籍としてまとめた「プロジェクト・ヒストリー」シリーズを刊行しています。本シリーズの第12弾として、『いのちの水をバングラデシュに 砒素がくれた贈りもの』を刊行しました。

本書は、宮崎県を拠点に活動するNGOアジア砒素ネットワーク(AAN)が、バングラデシュの飲み水の砒素(ヒ素)汚染の問題に20年以上にわたり取り組んできた軌跡を描いたものです。飲料水に砒素が溶け出すメカニズムが明らかではなく、これを完全に取り除いた飲料水を提供することが、技術的にも、文化の面でも容易ではない砒素。本書はAANが多くの人びとと協働し、JICAとも連携して進めてきた活動の記録です。

本書の著者川原一之氏は、朝日新聞の若き記者として宮崎支局に勤務していた1971年、宮崎県高千穂町の旧土呂久鉱山による砒素公害の問題を知ります。川原氏はこの「砒素」によって、飲み水の砒素汚染に悩まされる南アジアの一国、バングラデシュに運ばれます。そしてバングラデシュという国で、まさに人生をかけてバングラデシュの人びとの飲み水の問題に取り組むことになるのです。「砒素」はまた、川原氏に多くの人との出会いをもたらします。土呂久鉱山による砒素公害からの救済を支援するためのネットワークから始まったアジア砒素ネットワークの活動を支える人、参加する人。また、応用地質研究会という科学者や技術者のネットワークやJICAとの出会い。そして砒素の健康被害に苦しむ村の人びと、命を奪われる人びと。自らの国の問題に取り組む立場にあるバングラデシュの政治家や政府関係者、これを支援する国際機関や諸外国の関係者。本書は、「砒素」によって人生が変わり、「砒素」によってもたらされた出会いとつながりの中で、砒素がもたらす問題に全力に取り組んできた川原氏のライフヒストリーです。

著者
川原 一之
発行年月
2015年3月
出版社
佐伯印刷
言語
日本語
ページ
208ページ
関連地域
  • #アジア
開発課題
  • #水資源
  • #環境管理
  • #市民参加
研究領域
地球環境
ISBN
978-7-905428-52-7