『バングラデシュIT人材がもたらす日本の地方創生—協力隊から産官学連携へとつながった新しい国際協力の形』

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『バングラデシュIT人材がもたらす日本の地方創生—協力隊から産官学連携へとつながった新しい国際協力の形』

JICA緒方貞子平和開発研究所では、これまで行ってきたJICAの事業を振り返り、その軌跡と成果を分析してまとめた書籍「プロジェクト・ヒストリー」シリーズを刊行しています。本シリーズの第28弾として、『バングラデシュIT人材がもたらす日本の地方創生—協力隊から産官学連携へとつながった新しい国際協力の形』を刊行しました。

IT資格という武器を若者たちに—。2008年、バングラデシュに赴任したIT関連の青年海外協力隊員たちは、現地の若者たちが即戦力のIT人材として成功できるよう、自身のIT能力を証明できるIT国家資格を同国に導入できないかと動き出します。この草の根の普及活動から始まったIT人材育成のムーブメントは、2012年には技術協力プロジェクトへと発展。バングラデシュ政府関係者と共に、国家資格である情報処理技術者試験(IT Engineers Examination: ITEE)の導入に向けて突き進みます。トライアル試験の実施日がホルタル(ストライキ)と重なり車が手配できず、試験問題をリキシャで運搬するはめになるなど、同国ならではの難関が次から次へと立ちはだかりましたが、ついに2014年、バングラデシュはITプロフェッショナル試験機構に正式加盟。これにより、同国でITEEに合格すれば、フィリピンやベトナムといったアジア13カ国と相互認証される国家資格を手にできるようになりました。

そして、バングラデシュのIT人材と日本をつなぐという新たな課題に向けても、さまざまな関係者が動き出します。モンゴルの高校でeラーニングを開始していた宮崎県の企業という「産」、IT企業の誘致や人材の流出に悩み、地方創生の一手を探していた宮崎市という「官」、日本語教育に強みがある宮崎大学という「学」。その「産官学」の3者と、新時代の国際協力を模索していたJICAが連携した結果、日本の労働力不足や地方創生に貢献し、かつ、バングラデシュのIT産業開発やバングラデシュ人ITエンジニアの日本での就職を同時に目指す新しい国際協力の形として、「宮崎—バングラデシュ・モデル」が2016年に誕生しました。同モデルを他の地域でも活用してほしいという関係者の願いの下、技術協力プロジェクトで支援したIT人材育成プログラム(B-JET)修了生のうち、7割を超える200人近くが日本全国で活躍しています。

両国の数多くの関係者の一人一人がバングラデシュのIT人材育成に共感し、強い想いを持っていたからこそ、つながってきたバトン。その14年間の軌跡を追った物語です。

著者
狩野 剛
発行年月
2021年7月
出版社
佐伯印刷
言語
日本語
ページ
169ページ
関連地域
  • #アジア
開発課題
  • #情報通信技術
ISBN
978-4-910089-13-3