JICA緒方研究所

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ワーキングペーパー

No.22 Ethnicity and Democracy in Africa

アフリカにおいて民主主義を再構築しようという過去20 年間の取組みが直面してきたパラドックスとは、それが民族紛争を鎮火させるよりも、むしろ悪化させてしまう事態が頻繁に起きていることにあり、特に最近の10年間は土着性に由来する暴力的紛争や「その土地は自分たちに与えられた」と称する者同士の衝突に繋がり、多民族社会の社会秩序や結束の根幹を揺るがせるような事態に発展してきている。民族多様性と民主主義の関係性はどのように変遷してきたのだろうか。本稿では、まず、欧州諸国による植民地統治が行われるようになって以降のアフリカ諸民族の社会構成について、特に国家と市場の役割および現地社会の対応に焦点を当てながら検証した。第2 に、植民地国家と独立後の国家の特殊な関係について、国家や近代化に由来するリソースへの接近と民族集団とを繋ぐ重要なリンクとして、「大物(Big Man)」政治やパトロネージの制度化がある—という観点から論じた。第3 に、アフリカではナショナリズムとエスニシティは同じ起源を持ち、いずれも、国民国家に顕著な特徴を切り崩すよりもむしろ強化する方向で国家機構による支配権を掌握しようとしてきた。しかし、新自由主義的な国家・市場改革が進められるにつれ、民族的亀裂を悪化させ、多党制による民主化を困難にするような政治的社会的経済的荒廃がもたらされた。民族的分裂が政治化するのを抑えるため、憲法改正に真剣な努力が払われている国においても、この傾向は見られる。本稿では4 つのまったく異なる国の状況下でも勃発した土着性に由来する紛争を検証した。ここからわかることは、民主化プロセスにあると見られるいずれの国民国家においても、経済危機と社会の衰退、不平等の拡大との関係が共通して観察されることである。

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