JICA緒方研究所

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ワーキングペーパー

No.93 Human Security in Practice: The Case of South Korea

韓国は経済協力開発機構(OECD)開発援助委員会(DAC)に加盟した最も新しい国の一つであり、その勢いは被援助国が援助国となった歴史的にも稀な模範事例として高く評価されてきた。とりわけ、韓国が先進工業国へと台頭したのは朝鮮戦争を経た後のことであり、それゆえ韓国が政府開発援助(ODA)を通じた開発協力の中で「人間の安全保障」の概念を採用するか否かには関心が寄せられてきた。本稿では、中央省庁、援助実施機関、市民社会組織、国際機関、学術界を含む韓国ODAコミュニティの主要関係者を抽出し、「人間の安全保障」という語が明示的あるいは黙示的に使われているかを確認するため、政府の公式文書や代表的研究者により発表された研究成果の分析を行った。また、こうした文献レビューを補完するものとして、少数の関係者に対するインタビューを実施した。その結果、韓国政府は明示的に「人間の安全保障」という語を使ってはいないものの、ODA政策の中で人間の安全保障の3つの要素--恐怖からの自由、欠乏からの自由、尊厳を持って生きる自由--および2つのアプローチ--保護とエンパワメント--を積極的に取り入れていることが明らかとなった。他方、ODA政策においては同概念が全面的に採用されているものの、それがODAの実際の活動の中で十分実践されているかは明らかでない。人間の安全保障が実践されているか否かについては、韓国内における公式文書のレビューのみならず、ODAの実施サイトにおける更なる研究が求められる。最後に、近年「人間の安全保障」という言葉がパク・クネ大統領およびユン・ビョンセ外交部長官の演説において明示的に使われたことが確認されている。これら2人の要人による言及が、「人間の安全保障」という語の公式文書での明示的な使用、さらには韓国ODAの重要戦略としての採用に繋がっていくのかをフォローしていくことは興味深い問題であろう。

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