JICA緒方研究所

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ワーキングペーパー

No.92 Human Security in Practice: The Chinese Experience

本稿では、「東アジアにおける人間の安全保障の実践」研究プロジェクトで提示された3つのリサーチ・クエスチョンに取り組んでいる。まず、中国において人間の安全保障の概念が政府および社会的アクターにどのように理解・定義されているか。次に、人間の安全保障における「保護」と「エンパワメント」という二つの側面の区別がどのように理解され、受容されているか。そして、中国ではどのようなダウンサイド・リスクが人間の安全保障に対する差し迫った脅威として認識されているか。3つ目の問いについては、主なものとして大気汚染、食料安全保障、サイバー・セキュリティが挙げられる。研究で確認された事実から、中国では「人間の安全保障」という言葉は頻繁には使われていないものの、実践では人間の安全保障のための様々な取り組みがなされていることが明らかとなった。中国において、人間の安全保障の概念は確立してきており、人間の安全保障に対する脅威の存在も認識されている。同国では、政府および学術界の双方において、人間の安全保障と国家の安全保障は必ずしも対立するものではなく、むしろ両者は結び付き補完し合うものと捉えられている。近年の中国に見られる変化は、人間の安全保障の観点から正しい方向に向かっているものと言えよう。

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