JICA緒方研究所

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ワーキングペーパー

No.106 Convergence of Aid Models in Emerging Donors? Learning Processes, Norms and Identities, and Recipients

本稿は、いわゆる新興ドナーの援助モデルを、DAC援助モデルとの距離において比較分析するものである。新興経済国を含む新興ドナーには、DACが考える援助の理想型を積極的に取り入れるドナーもあれば、むしろDACとの距離を保ち続けるドナーも見られる。では、なぜDAC援助モデルとの距離が異なるのであろうか。

この問いに対し本稿は、第一に、先行研究のレビューを行い、DAC援助モデルを要約し、援助モデルの形成・変容をもたらす要因について整理する。特に、国際政治論では注目されつつも、新興国分析には応用されてきたと言い難い構成主義のアプローチを取り入れると同時に、これまで援助研究で受動的なアクターとして描かれがちだった援助受入国についても、新興ドナーの援助モデル形成に一定の役割を演じうることを示す。

第二に、アラブ・ドナー、中国、インド、南アフリカ、韓国といった主要ドナーの特徴を簡潔に概観する。分析の結果、アラブ・ドナーはイスラム援助モデルを、中国・インドは新興超大国援助モデルを、南アフリカは南南協力を取り込んだハイブリッド援助モデルを、そして韓国はアジア版のDAC援助モデルを形成していることを示した。DAC援助モデルとの距離については、中国・インドがDAC援助モデルから距離を保つ一方、南アフリカとアラブ・ドナーの援助モデルはDAC援助モデルを取り込み、韓国援助モデルはDAC援助モデルを大胆に導入するようになっていると論じる。

第三に、新興ドナーの援助モデルがDAC援助モデルとの距離において多様であるのは、援助受入国の認識や、ドナーの学習プロセス、ドナーの規範・アイデンティティが各ドナーによって異なるからである。ドナーへの認識に関して見ると、中国援助が援助受入国から一般的に高い評価を得ている理由の一つは、中国がDAC援助とは異なったアプローチを採っていることによる。南アフリカは、自国と近隣諸国の間の非対称的な政治的・経済的関係に起因する自国に対する近隣諸国の警戒心を和らげるために、SACU・DBSAを通じたある種の実質的「支援」を行いつつも、DAC援助モデルを取り込むことになる。ドナーによる他の援助モデルに関する学習は、南アフリカと韓国で明確に見られる。規範・アイデンティティは援助モデルの構築・再構築に強い影響があり、中国は「超大国アイデンティティ」を、アラブ・ドナーは「宗教アイデンティティ」を持ち、これらの強いアイデンティティ・規範は各援助モデルの独自性の基礎となり、既存の国際援助レジームに潜在的に挑戦する可能性を内在している。「規範構成者」(norm-maker)としての中国とは異なり、ミドル・パワーは「規範利用者」(norm-takers)として既存の国際援助レジームを総じて遵守する。すなわち南アフリカは、DAC援助モデルとアフリカ諸国との連帯のバランスをとり、韓国はDACの正式メンバーとしてDAC援助モデルへの収斂を推進することになる

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