JICA緒方研究所

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ワーキングペーパー

No.100 The Concept of Human Security in Vietnam

人間の安全保障は、ごく近年登場した概念であるにも拘らず、世界中の政府および研究者の注目を集めている。しかし、多くの国では、同概念および関連する問題への理解は低いレベルにとどまっている。本稿は、人間の安全保障がベトナムにおいてどのように理解されているのか明らかにすることを目的としている。最初に、人間の安全保障に関わるベトナムの法律および政策を概観する。そこから明らかとなるのは、人間の安全保障の概念は同国の公式文書においては全く言及・規定されていないということである。しかし、人間の安全保障を構成する要素については、その繋がりが明示されてはいないものの、法律の中に見出すことができる。また、本件に関する文献レビューからも、人間の安全保障が有識者コミュニティにおいて頻繁に議論の俎上に上るテーマではないということが示される。同概念をベトナムの文脈で分析しようと試みた研究者の数はごく数名に止まっている。最後に、政府、有識者コミュニティ、市民社会、メディア、民間企業を含む5つのセクターの代表者に対して行ったインタビューの結果から、ベトナムにおける人間の安全保障に関する認識について、より正確な実像が提示される。全体として、インタビュー回答者は人間の安全保障の概念に馴染みがなかった一方で、即座に同概念および人間の安全保障に対する脅威を彼らの生活の様々な側面とを結びつけることができた。さらに、ベトナムにおける人間の安全保障の確保と推進においては、政府が主導的役割を果たすことに対する高い期待があることが明らかとなった。

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