No.4 The Role of Infrastructure in Mitigating Poverty Dynamics: The Case of an Irrigation Project in Sri Lanka

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物的なインフラへのアクセスが家計の厚生を高めることは広く理解されている。一方で、インフラの貧困削減効果をミクロデータを用いて実証的に分析した既存研究は非常に少なく、とくに貧困動態という観点からはほとんど分析されてこなかった。本稿は、こうした既存研究の穴を埋めるべく、スリランカで実施された大規模な灌漑事業をケースとして、独自に収集された世帯レベルの月次パネルデータを用い、計量経済学的な分析を行った。インフラの効果を識別する際には、政府による灌漑インフラの割り当てがくじびきによってなされたという自然実験的状況を利用した。計量経済モデルとしては、Paxson(1993)による消費平滑化モデルを拡張し、信用制約を内生化した。実証分析の結果、灌漑へのアクセスが、所得を増加させると同時に、流動性制約に陥る確率の減少を通じて一時的貧困を解消させることが示された。これらの結果は、灌漑というインフラが、慢性的貧困・一時的貧困の両方の削減に寄与し得ることを示している。さらに、構造モデルの推計によって、我々の理論枠組みが妥当であるという結果も得られた。

著者
庄司 匡宏、 菅原 慎矢、 新海 尚子
発行年月
2010年3月
関連地域
  • #アジア
開発課題
  • #経済政策
研究領域
経済成長と貧困削減
研究プロジェクト