JICA緒方研究所

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ワーキングペーパー

No.116 Volunteer Disappointment and Outcome of Activities -Regional Perspective of Japan Overseas Cooperation Volunteers (JOCV)-

本稿は、筆者が1987年以来人類学的調査研究をおこなっている太平洋島嶼地域を取り上げ、派遣地域の社会および文化に関わる特定文脈で青年海外協力隊を包み込むことによって見えてくる協力隊の地域的実態を示し、隊員活動の成果を捉える新たな質的視点の可能性を提示する。

太平洋島嶼地域は、産業外的要素や相互扶助的人間関係を特徴とするサブシステンス経済が顕著である。しかし、人々はその特徴に基づき社会的・食糧的には「豊か」ではあっても、一般的に職務に積極的ではなく、現状を改善しようという向上心も不足している。外国などからの援助を待ち続けるだけの姿勢も見られる。多くの隊員は、派遣前に想定していなかったそのような現実に戸惑い、落胆する。しかし彼らは、滞在期間を経る中で現地の人々への期待と現実との乖離を、「理想的な隊員像」としての「現地の人々との一体化、相互交流」を通じて克服しようとし、やがて人々の労働観や価値観、慣習などに関わる地域性を内面化し、落胆の対象であったはずの人々の思考や振る舞いを賛美するようにもなる。本稿では、現地の「豊かさ」に起因する現実とそれに対する隊員の「落胆」の感情を手がかりに考察し、多くの隊員が任国の現実を知ることによって落胆を経験すること、それは各国・地域固有の社会文化的条件によって異なること、落胆は協力隊の主要な目的の一つである日本青年の成長という成果と関係していることを派遣前研修等において具体的に示すことを通じて、その後の隊員活動の円滑化を図っていく必要性を指摘する。

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