JICA緒方研究所

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ワーキングペーパー

No.127 Deciphering Capacity Development through the Lenses of "Pockets of Effectiveness" - A Case of Innovative Turnaround of the Phnom Penh Water Supply Authority, Cambodia -

本ペーパーは、カンボジア・プノンペン水道公社(PPWSA)の革新的な変革事例の分析により、公的機関における都市水道事業におけるキャパシティ・ディベロップメントの過程を明らかにしようとするものである。「成功の孤立地帯 (pockets of effectiveness)」の分析視点を用いて、初期の変革プロセスにおいて、組織の機能的・内部的要因が政治的・文脈的要因との間で積極的に相互作用する「相関的空間 (relational spaces)」の力学を考察する。

公共セクターのパフォーマンス改善は依然として課題である。政府の持続的な能力向上を目指すはずの公共部門の改革は、特に援助依存の大きい国では、政治文脈の分析の難しさや政策の整合性の問題もあり、うまくいっているとはいえない。膨大な先行研究が、介入の失敗事例から国横断的な教訓やマクロレベルの戦略を抽出することに集中しているなか、「成功の孤立地帯」研究は、ガバナンスの悪い環境においてもパフォーマンスのよい公的機関が周囲の環境要因を克服する成功要因の分析に着目している。
事例分析の結果、次の点が示唆される。「成功の孤立地帯」研究からの示唆と重なるのは、公共セクターに変化を呼び込む条件づけである。有力政治家からのトップダウンによる改革意思、有能かつ意思疎通スキルに優れた技術官僚の総裁任命、政治介入の回避に必要な政治家からの支援である。

分析結果から導かれる独自の示唆は、都市水道のサービス能力が向上する過程において生じる、組織の機能的・内部的・外部的要因が相互に作用・補強しあう3つの連結のパターンである。すなわち、サービスの質と社会からの信頼回復、ポジティブな組織内文化と実質的な組織自治、水道事業に対する政治的な正当性の確保と援助の触媒的役割、の相互関係のパターンが見いだされた。具体的には、供給側主導による顧客関係の早期改善が、水道サービスを能動的に運営する機能的能力や、社会における支払文化の醸成につながった。パフォーマンス志向のポジティブな組織文化の形成が、組織自治を実効化させた。総裁による政治家との意思疎通が介入から組織を守り、政治的正当性の獲得の鍵になると同時に、国際援助がそのための重要な資源、変革の触媒として作用した。

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