JICA緒方研究所

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ワーキングペーパー

No.134 Perceptions and Practice of Human Security in Malaysia

本稿では、マレーシアにおける人間の安全保障の理解について議論する。マレーシアは、2020年までに先進国入りするという自らのビジョンの達成に向け準備を進める過程でグローバリゼーションの力と世界経済およびASEANコミュニティへの統合にさらされ、それによって国・人々の経済的地位は向上した。一方で、過去に達成した人間開発の成果をも損ないかねない多岐に渡るダウンサイド・リスクや脅威にもさらされることとなった。本稿では、主に以下の3点を扱う。第一に、人間の安全保障の考え方について、国際的・地域的観点から描写し、その上で国およびローカル・レベルでみられる人間の安全保障の解釈や理解について説明する。第二に、様々なステークホルダーによって取り組みが不可欠と考えられている課題や脅威を分析する。第三に、人間の安全保障を損なう状況を緩和するために採用されているいくつかのアプローチを確認し、マレーシアにおける人間の安全保障のレベルを一層改善するために不足している方策について議論する。マレーシアにおいては、人間の安全保障という言葉は未だ周縁に留まったままであり、それを主流化させるにはその重要性についてより高いレベルの気づきが求められる。人々やコミュニティが不安全な状況から脱することはもちろん、より重要なのは尊厳を持って生きられるということであり、そのために必要な個々の人間およびコミュニティを実際的にエンパワーする政策を優先させるには、全ステークホルダー、とりわけ政府からのより大きなコミットメントが必要不可欠である。

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