No.139 Twin Peaks: Japan’s Economic Aid to India in the 1950s and 2010s

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 本論文は、日本のインドに対する政府開発援助(ODA)が、日本とインドの外交関係においてどのような戦略的重要性を持っていたかについて検討することを目的とする。
 日本の対インドODAは、1960年代前半に活発化し、その後の停滞期を経て、2000年代半ばから再び活発化した。そしてこの二つの時期(twin peaks)は、日本とインドの外交関係が良好となって活発化した時期と一致する。ODA供与の二つのピークと両国の外交関係の改善・活発化の時期が一致しているのは、日本がインドのみならずアジア諸国全体との関係強化や新たな関係の構築を欲している意図を明確に発信するうえで、対インドODAが極めて有効な戦略的手段であったことに起因する。
 1950年代末から60年代にかけて、日本は援助と貿易・投資を一体化させながらアジア諸国との経済関係強化を模索していたが、インドは他のアジア諸国に先駆けて円借款を受領し、日本との経済関係の深化への期待を表明した。これは日本にとっては、インドがアジア諸国への重要な足掛かりとなったことを意味した。また2000年代半ばには、日本はODAの増額を通じて、経済力を伸長させたインドとの関係強化を図り、中国の政治的・経済的台頭に起因するアジアの地域秩序の変化に共同して積極的に対処していく姿勢を示した。
 今後、日印両国は利害関係の共有を基盤とした戦略的パートナーシップの関係をますます深めていくことが予想され、ODAは引き続きその重要な手段となると考えられる。

著者
プルネンドラ・ジェイン
発行年月
2017年2月
関連地域
  • #アジア
開発課題
  • #日本の開発協力
研究領域
開発協力戦略