No.201 Personal Determinants of Volunteering for Former International Volunteers: A Case of Japan Overseas Cooperation Volunteers

  • #ワーキングペーパー

近年世界各国のボランティア団体では、帰国後の国際ボランティアがどのように市民社会へ貢献をしているのか実態を把握して、どのように彼らの活躍を支援できるかについて模索している(King 2018)。本研究では、帰国後のボランティア活動を市民社会への貢献と位置づけ、その個人要因について調べ関係性を明らかにした。

ボランティア活動の個人要因についての先行研究では、利他性や外向性が高く社会経済的地位が高い人がよりボランティアに従事していることなどが報告されている(Bekkers 2004; 2010)。しかし、国際ボランティアをテーマにした研究は少なく、さらに国際ボランティア経験者を対象とした研究は皆無である。

本研究では、JICA海外協力隊(以下、「隊員」)が帰国後およそ10年間経過した今、どのような分野でボランティア活動をしており、またそれにはどういった個人要因が関連しているかについて、価値観とパーソナリティに着目して調査した。帰国後平均10年が経過した元協力隊228名が、10の分野における去年一年間のボランティア活動日数、価値観(自己超越・変化への開放性)、パーソナリティ(開放性・誠実性・外向性・調和性・情緒不安定性)、および社会経済的地位(年齢、性別、配偶者の有無、個人の収入、世帯収入、職務時間など)について回答した。

各10分野におけるボランティア活動日数を従属変数に、価値観、パーソナリティ、社会経済的地位を独立変数にして、多重代入を用いた重回帰分析を行った。主に、「変化への開放性」への価値観(刺激や自己決定を重んじる一方、保守性が低い傾向)がより高い元隊員が、教育及び国際協力の分野においてより多くのボランティア活動を行っていたことが分かった。一方で、ボランティア動機と関連深い利他性に関連する「自己超越」への価値観(普遍主義や慈善を重んじる一方、自己高揚が低い傾向)はボランティア活動日数と関係がなかった。パーソナリティについては、より外向性が高く、情緒不安定性が低い元隊員が比較的多くのボランティア活動をしている分野があった。

本研究では、「変化への開放性」という価値観が教育及び国際協力分野でのボランティア活動に関連していることが判った。国際ボランティア経験者の教育及び国際協力におけるさらなる社会貢献を促すには、ボランティアの意義や活動内容を、「社会の変革をもたらし得る、刺激的で自己実現の可能なもの」と位置づけることで参加を促進することが効果的であると考えられる。

キーワード: 元国際ボランティア、価値観、パーソナリティ、市民社会

著者
大貫 真友子、 Yuzhi Xiao
発行年月
2020年2月
開発課題
  • #市民参加
研究領域
開発協力戦略
研究プロジェクト