No.228 Perceived Home and Host Country Institutional Environment Pressures by Bilateral Development Cooperation Agency's Constituents

  • #ワーキングペーパー

新制度派組織論では「組織を取り巻く制度的環境が組織の行動を決定づける」ことを前提とする。同理論を用いる研究者は、多国籍企業の海外子会社が本社と受入国双方の制度的環境の影響を同時に受けるユニークな状況に置かれていることから、これらを頻繁に研究対象としてきた。しかし、同様の状況にある公的組織の在外事務所を対象とすることはほとんどなかった。また多国籍企業を対象とした研究でも、組織の構成員が制度的環境をどう感じているのかを扱うものは限定的であった。そこで本研究は、公的組織の一つである二国間開発協力機関を対象に、同機関に属する4つのグループ、すなわち、本部管理職、本部非管理職、在外事務所管理職、在外事務所非管理職が、本国と受入国からの制度的環境の圧力をどのように感じているかを調査した。

具体的には、6つの仮説を立て、オンライン調査を通じて入手したデータをマン・ホイットニーU検定を用いて分析した。結果は、本国及び受入国からの制度的環境圧力に関しては、本部と在外事務所の職員間では統計的に有意な差異は見られなかった。例えば、本部の職員も在外事務所の職員も、本国からの非常に強い説明責任の圧力を感じていたが、受入国政府や技術協力プロジェクトのカウンターパートからの支援に対する要望や期待に関する圧力はそれ程強くなかった。一方で、本国からの説明責任の圧力については、本部管理職と同非管理職間で有意な差が確認された。同様に、受入国政府からの要望や期待に関する圧力についても、在外事務所管理者と同非管理者の間で有意な差が見られた。また、在外事務所の管理職と非管理職はそれぞれ「重複する制度的環境」を感じていたが、両者間の差異はわずかであった。

調査結果を新制度派組織論の視点で解釈するならば、二国間開発協力機関の在外事務所は受入国からの要望や期待よりも、本国への説明責任に対する正当性をより重視すると捉えることができる。在外事務所の管理職がより強く制度的環境圧力を感じていることが、在外事務所が本国の制度的環境への正当性をいっそう重視することにつながっている可能性もある。

キーワード: 重複する制度的環境、制度的環境圧力、説明責任、新制度派組織論、国際開発、グローバル・プロジェクト、開発協力機関、管理職対非管理職、公的組織

著者
伏見 勝利
発行年月
2022年3月
言語
英語
ページ
39ページ
研究領域
開発協力戦略
研究プロジェクト