三上研究員が日本比較政治学会で発表

2011.07.08

三上了研究員は、北海道大学札幌キャンパスで6月18~19日に開かれた日本比較政治学会第14回研究大会で「自己正当化された民族投票の起源:アフリカ諸都市における政治意識調査による経験的検証」のテーマで発表しました。JICA研究所が進める研究プロジェクト「アフリカにおける暴力的紛争の予防」の一環であるこの研究は、アフリカの一般大衆の間では他民族への敵意はどこからくるのか、とのリサーチクエスチョンに対して定量的にアプローチしたもので、今回の発表ではこの結果を提示しました。会場からはミクロレベルの対立・協調を分析するマクロ政治学的な意義についての懐疑的な意見も出ましたが、これに対して三上研究員は、今日のアフリカ諸国で広く採用されている脱民族主義的制度が機能するためには普通の人々による民族間協調が不可欠だと強調しました。

三上研究員の研究の最大のポイントは、社会心理学の理論に基づいて、他民族への敵意が生まれるメカニズムに関する4つの仮説(接触仮説、報復仮説、制裁仮説、競争仮説)を立て、これらをアフリカの意識調査データで検証したことです。他民族への敵意の指標には「民族投票」への態度を利用しました。民族投票とは、選挙で投票する際に、業績や公約ではなく「自分と同じ民族か否か」だけで投票先を決めてしまう行為のことです。

分析の結果分かったのが、第一に、国民の10%未満のマイノリティー民族と、それ以外の民族ではかなりパターンが異なるということです。特に、接触仮説や競争仮説はマイノリティーには当てはまりませんでした。第二に、報復仮説よりもむしろその逆の傾向、つまり自民族が優位であると認識しているほうがむしろ敵意レベルが高い傾向が見られたということです。第三に、国民意識の強さがかえって多様性への寛容の妨げになるという制裁仮説は、実際にはあてはまらず、やはり民族意識の強さのほうが他民族への敵意を強める傾向にあるということです。

また、民族対立緩和ための政策的インプリケーションとして三上研究員は「民族間交流と民族間関係の透明化は主に非マイノリティーの間で効果が期待でき、民族間格差の是正が露骨に度を越して推し進められると、むしろ紛争の火種になる危険性がある」と指摘しました。

関連研究領域:平和と開発

関連研究プロジェクト:アフリカにおける暴力的紛争の予防

開催情報

開催日時:2011年6月18日(土)~2011年6月19日(日)
開催場所:北海道大学札幌キャンパス

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