【関西発!SDGsビジネス】アフリカ人留学生がビジネスのかけはしに -辻プラスチック(滋賀県東近江市)-

2021年4月9日

左から、辻プラスチック林さん、辻取締役

滋賀県にある辻プラスチック株式会社は、2021年西アフリカのニジェールとセネガルで製品の販売を開始しました。アフリカ人留学生が現地への「かけはし」となり、SDGsビジネス(SDGsの達成に貢献するようなビジネス)につながったストーリーをご紹介します。

アフリカの最貧国ニジェールでビジネス展開

ソーラー充電器とランタン

ニジェールは、世界のなかでももっとも貧しい国のひとつ。砂漠に囲まれており、暑い時期は気温が40度を超える過酷な場所です。
そんなニジェールで辻プラスチック社が普及をめざしているのがソーラー充電器。アフリカでは田舎でも携帯電話が普及しており、電気がない地域では携帯電話等を充電する商売が盛んです。辻プラスチック社はこの充電ビジネスに目をつけ、ソーラー充電器を開発しました。従来品と違い、発電しながら充電可能なこと、丈夫で長期間使える点が強みです。機能を最低限に絞り価格を抑えたこともあり、現地でデモをすると大人気です。
日本企業どころか外国企業もあまり進出していないニジェールに、なぜ進出できたのでしょうか。

アフリカ人留学生がビジネスのかけはしに

ソーラー充電器を使って携帯を充電中

ニジェールで辻プラスチックの商品を販売するのは、同社でインターンを経験した元留学生です。
同社は2018年からの約3年間の間に、JICAのABEイニシアティブで来日した、14か国20名のアフリカ人留学生をインターンシップで受け入れました。きっかけは「アフリカビジネスに取り組む中で、精度の高い現地情報や信頼のおける現地パートナーの重要性に気づいた」ためだと辻取締役は言います。
辻プラスチックでのインターンシップの特徴は、単なる「職場体験」ではなく、留学生を「将来のビジネスパートナー」として受け入れていること。インターンシップ中は、留学生の提案をもとに現地の悩みを解決できるビジネスを一緒に考え、市場調査や実証事業、販路開拓を任せます。「母国への帰国後一緒に事業をしてくれる人」という条件でインターン生を募集しているため起業意欲の高い学生が応募し、インターンを申し込む学生は年々増えているそうです。

「本気でアフリカに投資してくれる会社」

インターン中、製品を組み立てるムタリさん

辻プラスチックで3か月間のインターンシップを経験後、ニジェールで起業したNouhou Makeri Dayewe Moutari(ヌフ マケリ ダウェイ ムタリ)さん(以下、ムタリさん)にお話を伺いました。

Q.留学前はどんなお仕事をしていたのですか。
A.ニジェール政府の観光省で統計の専門家として働いていました。JICAのABEイニシアティブで日本の大学のMBAコースを修了し、昨年帰国して起業しました。

Q.インターンシップ先として辻プラスチックを選んだ理由は?
A.彼らが本気でアフリカに投資したいと思っていたからです。インターンシップ中、「辻プラスチックの技術をどう使えば、ニジェールの貧しい人たちの役に立つビジネスができるか。」と聞かれました。それを聞き、この会社はどんなビジネスのアイデアでも応援してくれそうだと感じました。

Q.インターンシップではどんな点が勉強になりましたか。
A.すべての経験が勉強になり、起業のアイデアを広げることができました。ソーラー充電器を組み立てたり、ソーラーポンプの設置方法を学んだりと、今のビジネスにつながる実務も経験できました。

Q.帰国後、なぜ起業したのですか。
A.ABEイニシアティブの目的は、アフリカと日本企業のビジネスの「かけはし」となることです。このことが後押しとなりました。辻プラスチックが私の起業アイデアを支援してくれたので、力を合わせてニジェールでのビジネスが実現できました。

農村に電力を届けるプロジェクトも開始

学校でソーラーランタンを配る様子

現在辻プラスチックとムタリさんは、ニジェールの学校でのソーラーランタンプロジェクトにも取り組んでいます。生徒たちに充電式のソーラーランタン(ランプ)を配布し、充電器は学校に設置することで、学校に来れば充電ができるというコンセプトです。地方の電化率がわずか6%程度と言われており。就学率も低いニジェールにおいて、画期的なプロジェクトとして同国の教育省からも注目されています。

アフリカ諸国でSDGsビジネスをめざす

【画像】ニジェール以外にも辻プラスチックの活動は広がっています。セネガルでは、ムタリさんとは別の元ABEイニシアティブ留学生が辻プラスチックの現地支社を立ち上げ、水不足の農村向けにソーラーポンプを普及させるビジネスを計画中です。それ以外にも、ウガンダ、マラウイなどで、現地の人びとの悩みを解決するようなビジネスの実現にむけて、辻プラスチック社は意欲的に準備を進めています。

留学生がかけはしとなって、アフリカでのSDGsビジネスがますます花開くことを願っています!

(企業連携課 小西陽子)