JICAと教育委員会のタッグで! 次世代のグローバルリーダーを育てる高校生向け研修

2023年2月1日

JICA関西は2021年から、京都市教育委員会と共催のもと、高校生を対象とした「グローバルリーダー育成研修」を実施しています。

京都市の「グローバルリーダー育成研修」は、市立高校生を対象に、世界の文化・経済・歴史などに対する幅広い教養、国際貢献の大切さ、自国の文化等を深く理解するなど「グローバル人材」としての素地を育むこと目的に、京都市教育委員会が実施する研修です。

従来はイギリス等における語学研修が中心だった内容が見直され、2019年にはフィリピンでのボランティア活動を盛り込んだ研修が実施されましたが、新型コロナウイルス流行に伴い海外への渡航が難しくなったため、国内でもより有意義な学びを提供するため、JICA関西との連携が本格的にスタートしました。

2022年度は、テーマを「MY・ACTION-行動にうつすSDGs-」として、7月から12月までの半年間にわたる研修を実施しました。その様子を時系列で紹介します。

ステップ1 オンライン事前研修【先輩の声を聞いて、モチベーションをアップ!】

画面下のファシリテータ2人は昨年度研修参加の先輩。

内2022年度の研修初日は7月27日。
その準備として7月11日に、参加者は、オンライン(zoom)で研修概要の説明と、2021年度の研修に参加した先輩の声を聞く事前研修に参加しました。
先輩たちが感じた「研修に参加する意義」やそこで得たもの、現在の自分に影響していることなどを聞くことができるほか、自ら司会進行を行う頼もしい姿も参加生徒の印象に残ったと思います。

ステップ2 研修本番【盛沢山の5日間には学びと出会いがいっぱい!】

1日目:カードゲームでSDGsの概要を捉える

2日目:フィリピンのスラム街出身の若者との対話

3日目:ロールプレイングを通して「人権」について考える

3日目:ウクライナに関するパネルディスカッション

4日目:企業の方との対話

5日目:アクションプランへの講評

 7月27日を皮切りに、8月19日の最終日まで前半と後半に分け全5日間の研修を実施しました。
前半の講義とワークショップでインプットをしつつ思考を深め、最終日にグループごとの「アクションプラン」を発表して終わるのがこの5日間の着地点。

SDGsの必要性とその達成の困難さを、ゲームを通じて実感する1日目、フィリピンとオンラインで繋いでスラム街の若者と交流もした2日目のスタディ・ツアー、ウクライナ出身の女性とJICAガバナンス・平和構築部の職員をダブル講師に迎え、「ロールプレイング」も通じて平和と人権について考えた3日目。ここで前半が終了。


<参考>講師(所属団体)

1日目:栗田佳典氏(関西NGO協議会)

2日目:野田沙良氏(NPOアクセス)

3日目:アナスタシーア・ホロシコ氏(京都市立日吉ケ丘高校)/齋藤有希氏(JICAガバナンス・平和構築部)

少し間を空けて、8月18日からの後半2日間では、ソーシャルビジネスと言われる事業で京都に展開する2つの企業からストア・マネージャーを講師に迎え「つくる責任・つかう責任」に関するワークショップを実施。参加者間で「本当の意味で物を大切にする・使い続けるとはどういくことなのか」について、アイディアをぶつけあいました。そして迎えた最終日、違う学校に通う参加者による4~5人のグループで、【グループでアプローチしたい社会課題=SDGs】と【アプローチの具体的な方法】を参加者全員の前で発表し、夏の研修が終了しました。


<参考>講師(所属団体)

4日目:益田晴子氏(IKEUCHI ORGANIC) / 月原光基氏(Mother House)

5日目:講師なし・講評:栗田佳典氏(関西NGO協議会)

ステップ3 アクションの実践【机上では終わらない!体当たりのマイ・アクション!】

夏の研修が終了してからは、教育委員会の開設したグーグル・クラスルームを活用し、オンライン上でグループ交流や連絡事項の共有が行われました。高校生たちは、夏に決めた対象の「SDG」にアプローチすべく、自分たちで企画もスケジュール管理も行って、中学校に講演に出かけたり、専門組織に講師を依頼したり、アンケート調査を行ったりして、思い思いに体当たりのアクションを実践しました。
学業やクラブ活動等でなかなかメンバーのスケジュールが合わなかったり、想定と違うことが起きて困ったり、紆余曲折がありつつも、1か月に1度のペースで実施される「オンライン進捗報告会」では、どのグループも歩みを着実に進めていることが伝わりました。

ステップ4 成果発表会@JICA関西【英語でのプレゼン、JICA長期研修員との交流は正にグローバル!】

JICA関西での成果発表会

JICA長期研修員との対話

 12月17日(土)JICA関西で「グローバルリーダー育成研修・成果発表会」を開催し、夏の研修終了後の4か月間「とにかくやってみた」からこそ見えた、彼らの学びと結論を発表してもらいました。研修の締めくくりです。
発表会にはJICA関西のスタッフ数名もグループに入り、高校生に向けて質問やコメントを投げかけました。また、関西の大学院に通う、JICA長期研修員(出身:アフガニスタン・ガーナ・キルギス・ナイジェリア・ベトナム・モンゴル)も駆けつけ、参加生徒と同じテーブルで交流しました。
発表の冒頭は、各チーム英語での「アクション概要説明」を行い、長期研修員からの英語のコメントや質問に、一瞬たじろぎながらも、未来のグローバルリーダー達は堂々と回答していました!

参加生徒の感想

全てのプログラムを終え、参加者した高校生が寄せてくれた感想を、以下に抜粋します。

●アクションプランを通して一歩踏み出すことができました。今の世界の課題を知り、成長するきっかけとなりました。
●濃密な期間になりました。フィリピンの方のお話は、普通に生活していたら知り得ない別世界のようで、すごく印象に残っています。将来国際協力に関係したことをできたらいいなと思っています。
●SDGsの中でもさまざまな種類のものを取り扱い、複数の視点で学べることが嬉しかったです。
●発表会では、留学生の人と話せて、勇気の出る言葉に、英語を使って気持ちや質問を伝えようとする姿勢に、感動し、自分と今日会った大人たちのようになりたいと思いました。
●一生に一度の経験をさせて貰えたと思うし、これからの時代を生きていく上で大切な視点を養えました。
●大変で困った時もありましたが、その度にアドバイスをいただき、支えてくださってとても感謝してます。少しばかりは自分の自信に繋がりました。
●海外の方と交流する機会を持てて,自分の知識の幅,考え方の幅が広がりました。海外の方と交流していて感じたのは,海外の方はポジティブだなということです。成果発表会の時にも,「高校生は未来を引っ張る」と、未来に対しての考えが明るく、僕も、そういった見方ができるようになればなと感じました。
●夏休みのいろいろな方のお話を聞くプログラムから、最後の発表まで私にとってとても価値のある体験が出来ました。参加してよかったし、1年生の時にも参加したかったと思いました。

【画像】 2022年7月から12月まで、研修に取り組む皆さんの姿勢を傍で見てきて感じているのは、高校生の皆さんが持つ力の大きさです。
夏の研修で、真剣に講師の話を聞き、初めて会った他校の生徒とも交流し、意見を交わし合う姿。また仲間と協力し合って、授業外の活動を進めた行動力。グループファシリテーションの能力、見る人を惹きつけるプレゼンテーション能力、そして英語を用いたコミュニケーション力。様々な場面で、目を見張るものがありました。
一方でお互いの違いを尊重する敬意と受容の姿勢、優しさを持っているとも感じました。
社会課題に気づき、SDGsへの等身大のアプローチを試みた、この度の研修を心に留め、彼らがこれからも、自分らしく、多様性あふれる優しい「グローバルリーダー」として歩んでいってくれることを願います。(JICA京都デスク)