最高の遠隔研修を届ける -「ものづくりコース」に参加して-

2021年3月8日

 JICA九州では毎年多くの短期研修員が開発途上国から訪れ、各国課題に応じた研修に参加します。しかし今年度は新型コロナウイルスの影響で来日が叶わず、初のオンライン実施となりました。先日、1カ月に及ぶ「品質管理・生産性向上(日本的ものづくり)コース;以下ものづくりコース」のオンライン研修が修了しました(2021年後半に来日研修も実施予定)。今回ものづくりコースのオブザーブを通じて発見したリモート環境ならではの事前準備やハプニングなどについてまとめました。

コースの概要

 ものづくりコースは名称の通り、「製造業における品質管理と生産性向上を担う人材の育成」を目的とした研修です。オンライン研修には、オンディマンド型、ライブ型、ハイブリッド型(オンディマンド+ライブ)といった選択肢があるなか、このコースは完全ライブ型で実施されました。研修員は、エチオピア、タンザニア、ナイジェリア、カメルーンの4か国から8名が参加しました。時差の関係で、夕方の日本から「Good morning!」という挨拶を研修員と交わす時間が新鮮でした。

研修前の準備

 初のオンライン研修に向け、念入りな準備が求められました。研修をスムーズに行うため、事前に撮影した講義動画に英語字幕を付けたり、パワーポイントに英訳の音声を吹き込んだりする作業などです。コースリーダー(専門的知見を持ち、コース全体の運営を行う)、コーディネーター(通訳や研修員のケアなどを行う)、JICA担当者(コースの企画、契約、関係者間の諸調整を行う)の並々ならぬ努力の末、研修が実現したことを強く感じました。

※コースリーダー・コーディネーターの業務に関しては過去の特集記事(関連リンク)をご参照ください。

研修中のハプニング

研修参加者で集合写真

 リモート環境にはハプニングが付き物です。まず、一部の研修員が、ネット接続の不具合で研修を受けられないという事態が起こりました。このトラブルに対処するために、研修員母国のJICA事務所が必要なインターネットデータを研修員に提供したり、日本側では毎日の研修を録画し研修員向けに公開したりするという対応がとられました。
 研修員だけではなく、研修を提供するコースリーダーやコーディネーター側も困難に遭遇することがありました。例えば、コーディネーターは、ファシリテーションの困難さを危惧されていました。対面で行われていれば、研修員の顔色をうかがいながら進められていたことが、遠隔では研修員の心境を直接感じ取ることが難しいからです。コースリーダーが、毎回の講義の理解度をチェックする小テストや、レポートの提出を義務付けていたことは、研修員の理解度を把握することに役立ったのではないでしょうか。また、研修員が遠隔で集中力が途切れてしまうことへの対策にもつながったのではないかと思います。

全体を通して

 手探り状態で開始されたものづくりコースですが、初めてのオンライン実施とは思えない程順調に進められた印象が強いです。物理的には研修員とは遠く離れていますが、毎日顔を合わせるうちに親近感がわくのは不思議で嬉しいことでした。オンライン研修最終日には、研修員から1カ月という期間を長く感じたという声もあるなかで、よく構成された講義だったという評価が多かったです。また、懸念されていた時間厳守に関しては、コースリーダーの熱心な声かけにより、ほとんどの研修員が大幅な遅刻をせずに毎回参加しました。遠隔であっても、時間を意識して仕事に取り組む日本人の姿勢を伝えることができたのではないかと思います。

 イレギュラーな状況に適応するため、努力を惜しまれないコースリーダー、コーディネーター、JICA担当者の姿勢はもちろんのこと、強い忍耐力が試される中、毎回参加された研修員にも深い感銘を受けました。来日研修では、対面の交流を通してお互いが学びあえる充実した時間を過ごされることを心から願っています。
  
 取材/文章 JICA九州インターン 鳥羽乃愛(長崎大学)