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大阪万博を通じてフィリピンの未来を形作る!(第2回)ミンダナオ和平に取り組むBARMM研修員の想いをインタビュー

#1 貧困をなくそう
SDGs
#8 働きがいも経済成長も
SDGs
#16 平和と公正をすべての人に
SDGs

2025.07.03

JICAの協力は2025大阪・関西万博でも!

2025年国際日本国際博覧会(以下、「2025大阪・関西万博」)開催に際して、フィリピンから来日した行政官研修員(以下、「研修員」)にJICAの協力や万博への想いをインタビューする本企画。

第1回では、JICAが実施する「2025年大阪・関西万博を通じた博覧会及び国際会議開催能力向上」研修に参加し、未来のフィリピンに繋がる学びを得た観光促進委員会職員の声をお届けしました。※1
※1 第1回記事はこちら

第2回の今回は、6月7日の「フィリピンナショナルデー※2」に合わせて、中小企業振興を学びに来日した「バンサモロ自治政府能力向上プロジェクト(CDPB) 」の研修員(バンサモロ暫定自治政府(BTA)の行政官及び中小零細企業の経営者ら)の万博やミンダナオ和平への想いをインタビュー形式でご紹介します。

「バンサモロ自治政府能力向上プロジェクト(CDPB)」とは?

半世紀以上にわたり、「モロ」と呼ばれるイスラム教徒たちとフィリピン政府との対立が続いてきたフィリピン南部、ミンダナオ島。2025年10月には、バンサモロ・ムスリム・ミンダナオ自治地域(BARMM)で自治政府の発足に向けた選挙が予定されています。ミンダナオ和平プロセスが次のステップに向かって着実に前進している今、平和の持続のために人々が安定して収入を得られる環境づくり、「産業振興」が重要となっています。※2
※2「ミンダナオ紛争」とJICAの平和構築支援についてさらに知りたい方はこちら

JICAは「バンサモロ自治政府能力向上プロジェクト(CDPB)」を通して、BTAの人材・組織の能力強化、農業分野の生計向上活動の整理・強化支援を行うことにより、BTAの行政管理能力の強化を支援しています。今回、日本の各地域における中小企業の現状や、起業家精神を育成するための政策・ビジネス慣行を学ぶことを目的とした本邦研修に、貿易産業観光省(MTIT)の行政官とBARMM内の中小零細企業の経営者ら15名が参加しました。研修では万博訪問に加えて、近畿・関西地方を拠点に、みなべうめ振興館や水産加工業者、繊維関連の製品製造会社、ハラール肉の加工工場の視察等、実際に日本の様々な業種の中小企業等への訪問を通して学びを深めました。

万博に訪れた研修員の声

Q1:万博を訪問してどのようなことを学びましたか。

各パビリオンでは、各国がどのように自国の歴史や技術進歩に向き合い、持続可能な社会の形成に取り組んでいるかを紹介していました。戦略的に展示内容を考えたり、ストーリーを伝えたりすることで、より人々を惹きつける展示になることを学びました。(MTIT行政官)

フィリピンのパビリオン内で、伝統的な織物に焦点を当てていることが印象的でした。私たちが他国と肩を並べられる、世界クラスの文化を持っていることを誇りに思ったからです。BARMM内の異なる地域から集められた様々な織物は、芸術性だけでなく、フィリピンに深く根付いたアイデンティティを表現していました。(MTIT行政官)

観光業の発展は平和と繁栄への入り口です。万博に参加したことで、紛争から平和へ、排除からエンパワーメントへと変革する地域としてのBARMMの物語をもっと伝えなければならないと気づきました。(MTIT行政官)

万博に参加したことで、自分自身のビジネスを通じて自分の文化を表現し、コミュニティの他の小規模な起業家を支援するという、より大きな夢を抱くきっかけになりました。(バシラン州 小売店経営者)

Q2:本研修や万博で得た学びは、BARMMの和平プロセスにどのように貢献すると思いますか?

私たちの織物がパビリオンで展示され、他の国の人々に評価されるのを見たことで、私たちが世界に共有できるものを持っていることを知りました。地元の人々にこのことを伝え、誇りや人生を支える力を与えたいです。反乱や過激主義は、感謝と包容力のある国際社会には根付きません。(マラウィ市 小売店経営者)

BARMMの和平プロセスは、単に武装解除や平和的な統治だけではありません。地域産業の振興により、地域の人々に持続可能な生計と経済的機会へのアクセスを提供することは、平和の繁栄において重要な役割を果たします。(MTIT行政官)

万博で各国がそれぞれの歴史や文化を展示し、改めて誇りを抱いたり、ビジネスチャンスに変えたりしていた様子を見て、BARMMの豊かな文化資産(伝統的な織物、工芸品、先住民の知識など)が、紛争影響地への癒しと成長のための強力なツールになり得ることに気づきました。特に女性、若者、先住民が主導する地元産業を支援することで、地域の平和と安定を強化する持続可能な生計向上手段の確保に繋がると考えています。(MTIT行政官)

みなべうめ振興館の視察の様子

三田食肉センターでハラール肉の加工を視察している様子

Q3:中小零細企業支援はBARMMの持続的な平和にどのように貢献すると思いますか?

地元の起業家たちにスキル、知識、市場へのアクセスを提供することで、数十年にわたる紛争の影響を受けたコミュニティに直接恩恵をもたらし、安定した生計と包括的な成長を創出する手助けをすることができると思います。(MTIT行政官)

中小零細企業が支援されると、単に収入が向上するだけでなく、コミュニティにおける自信と希望も築かれます。努力する価値のある未来があることを実感できるのです。特に地方でこのような機会が増えれば、貧困を減らし、若者を紛争から遠ざけることができます。中小零細企業を支援することは、BARMMにおける平和を維持する方法のひとつです。(バシラン州 小売店経営者)

中小零細企業の振興により地域経済が活性化すれば、資源をコミュニティ内で循環させられます。収入を生み出す機会があることで、人々、特に若者は過激派グループや犯罪組織による勧誘になびきにくくなります。起業活動は、若者のエネルギーを反抗ではなく、創造と進歩に向けるでしょう。(タウィタウィ州 飲食店経営者)

Q4:最後に、日本やJICAの印象を教えてください。

日本の人々がどれほど献身的にフィリピンの経済成長を支援してくれているかに感銘を受けています。(コタバト市 飲食店経営者)

JICAと日本は単なるドナーではなく、真の平和のパートナーです。包括的な開発と平和構築に取り組んでいる、ミンダナオの真の友人です。困難な時にもミンダナオに寄り添い、私たちの尊厳と意思を尊重し、平和で持続可能な未来を築くために活動してくれていると感じます。(タウィタウィ州 飲食店経営者)

BARMMにおける平和と持続可能な発展への揺るぎない長年のコミットメントに対し、深い敬意と心からの感謝を送ります。JICAの支援は、単なる経済的・技術的援助を超えて、常に地域の歴史、文化的多様性、紛争後の課題に対して深く理解してくれました。JICAは解決策を押し付けるのではなく、地元の人々と共にプログラムを創り、地元の状況を尊重し、コミュニティが平和と発展の担い手となることを支援する「人間中心のアプローチ」で私たちに寄り添ってくれています。(MTIT行政官)

日本のJICAを通じた支援が称賛に値するのは、その一貫性です。多くのドナーが去っていく中で、日本は初期の和平交渉から移行期、そして現在の制度構築と経済回復に至るまで、和平プロセスのあらゆる重要な段階において、私たちのそばにいてくれました。私は、日本とJICAを単なるドナーや開発パートナーとしてではなく、バンサモロの人々の真の友人として見ています。BARMMでの平和と開発の取り組みを続ける中で、日本とJICAとの協力が続き、さらに深まることを心から願っています。日本は長年共に旅路を歩む中で、真の平和を一緒に目指してきた、信頼できる仲間です。(MTIT行政官)

ミンダナオの未来に向けて

BARMMの研修員の方々は本邦研修や万博訪問を通して、BARMMの経済的発展のみならず、ミンダナオの平和と繁栄に繋がる学びを得ました。研修員たちはその学びを今後フィリピンに持ち帰り、ミンダナオのこれからの平和のために活かしていくことでしょう。

また、インタビューの中では日本やJICAに対する信頼の深さが垣間見える声を多くいただきました。日本のこれまでのミンダナオへの協力は、着実にミンダナオの人々に届いているように感じられました。JICAはこれからも、開発協力を通したミンダナオのすべての人々への平和を実現するため、様々な協力を続けていきます。

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