jica 独立行政法人 国際協力機構 jica 独立行政法人 国際協力機構

ITの専門性を、現地行政の力へ ― 市民相談を支える「仕組み」をつくった2年間 ―(望月 賢人隊員)

#3 すべての人に健康と福祉を
SDGs
#5 ジェンダー平等を実現しよう
SDGs
#10 人や国の不平等をなくそう
SDGs

2026.02.10

パプアニューギニア東部、ミルンベイ州アロタウ。この州のコミュニティ開発局では、日々、多くの市民が生活上の困りごとを抱えて相談に訪れています。家族問題、ジェンダーに関わる課題、地域社会でのトラブル―。その一つひとつに向き合う現地職員の業務を「仕組み」から支えたのが、2025年度に帰国するJICA海外協力隊員・望月賢人さんです。

配属先の課題は「記録が残らない」ことだった
望月さんの配属先は、ミルンベイ州政府・コミュニティ開発局。着任当初から求められていたのは、ITを活用した業務改善でした。「市民相談は行われているものの、情報が個人の記憶や紙資料に留まり、組織として活用できていない。そこが一番の課題だと感じました」そこで望月さんは、職員一人ひとりへの丁寧なヒアリングを重ねながら、市民相談を一元管理するデータベースの構築に取り組みました。

重要視したのは、「形だけのシステム」にしないこと。現地職員が実際に使えるかどうかを最優先に、業務の流れそのものを整理するところから着手しました。

言語の壁を越えた「見える化」の工夫
活動を進める中で直面したのが、言語や働き方の違いによる意思疎通の難しさです。 そこで望月さんが取り入れたのが、スライドを使った視覚的なコミュニケーションでした。「言葉だけで説明するのではなく、今話している内容を1枚のスライドで“見える化”する。そうすると、英語力に関わらず、議論が一気に深まるんです」

この工夫により、職員側からも具体的な意見が引き出され、システム設計はより実務に即したものへと磨かれていきました。

システムの構築、そして「使われ続ける」仕組みづくりへ
データベースは着任から約半年で構築され、2025年9月から本格運用が始まり、市民相談の内容を記録・検索できる仕組みとして活用されています。一方で、運用面では新たな課題も見えてきました。
「対面相談が一日の中心の業務。データ入力の時間を確保することが難しい――。」
そこで、相談時に市民が記入する紙フォームを整備するなど、入力負担を減らす工夫を職員と共に進めています。


引き継ぎ」まで見据えたボランティア活動
望月さんが特に重視したのが、任期終了後も活動が続くことでした。IT人材の育成には苦労もありましたが、最終的には複数名体制での引き継ぎを実現。組織内の事情や人間関係にも配慮しながら、現実的な形での定着を目指しました。

「完璧ではなくても、続く形を残す。それが一番大事だと思っています」

専門性と人間性、その両方が生きる国際協力
望月さんは、活動を通じてカウンセリング資格も取得しました。それは、市民相談に真剣に向き合う現地職員の姿勢を理解し、より良い協力のあり方を考えた結果でした。「まず相手の価値観を尊重すること。それが信頼関係の出発点だと思います」

ITという専門性を軸にしながらも、人と人との関係性を大切にしながら進められた協力のあり方は、業務改善の取り組みを支える一つの要素となっていました。

成果を引き継ぎ、次に進むために
活動の締めくくりには、州政府の関係者を招き、構築されたデータベースのお披露目とあわせて送別の場が設けられました。会場では、これまで共に業務に取り組んできた同僚たちが集い、和やかな雰囲気の中で意見交換や感謝の言葉が交わされました。

業務改善の成果とともに、人と人とのつながりが自然と共有される時間となり、2年間の活動を締めくくる場となりました。

JICAは今後も現地関係者と連携しながら、持続可能な行政サービスの実施に向けた支援進めていきます。

アロタウ市内が一望できる望月さんお気に入りの場所

望月さんの配属先

望月さんが2年間過ごした住居

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