パプアニューギニア 東ハイランド州で農業の力を育てるVol.5 ~技術は、人との関わりの中で広がります~
2026.02.05
APO(やあ:東ハイランド州方言)。 パプアニューギニア・東ハイランド州ゴロカの州農畜産局(DAL)に、野菜栽培分野の隊員として派遣されている JOCV 2024年1次隊・原 大 です。これまでの活動をJICA PNG事務所内で共有したところ、他地域の隊員や、今後協力隊を目指す方にも参考になる内容との助言をいただきました。本シリーズでは、現場での調査・技術支援・関係者との協働のプロセスを、全5回にわたり整理してお伝えします。
パプアニューギニア・東ハイランド州ゴロカでは、緑肥を活用した土づくりの取り組みが少しずつ形になり始めています。導入から4か月、展示圃や研修を通じて、農家や行政職員の行動に変化が見られています。
1.行動変化が見え始めました
緑肥の展示圃に携わる 州農畜産局(DAL)の職員は、播種方法や次期作の圃場配置を自ら提案するようになりました。また地域の農家からも「次の説明会はいつですか?」と問い合わせが寄せられ、展示圃が学びの場として定着しつつあります。
土壌講習会の様子(DALが実施)職員や学生の間で意見交換が活発に行われました。
2.現地に合わせた栽培方法が育っています
採種圃では、現地の慣行技術を尊重しながら栽培を進めました。その結果、緑肥作物では日本で一般的なばら播きが条播きへ、施肥も全面散布から条施用へと自然に改善が生まれました。さらに、日本では等高線栽培が一般的ですが、山地が多い現地では排水性を重視した斜面方向の作付けが合理的であることも確認できました。同じ技術でも、土地が変われば形が変わることを示す実例となっています。
条播きされたクロタラリアの発芽状況(現地の慣行技術を活用)
3.普及に向けて見えてきた課題
一方、種子の保存方法や技術理解の定着には課題が見られます。そのため説明時に質問形式を取り入れるなど、相互理解を深める工夫を進めています。PNG では口頭情報が残りにくいことから、「伝え方」と「残し方」の改善が重要であることが分かりました。
4.記録が普及と技術継承の鍵に
緑肥の導入だけでなく、地域内の協力関係づくりにも動きが見られています。職員と農家が展示圃や見学会を通じて話し合う中で、緑肥の波及方法について議論が始まりました。また、苗の成長、収量調査、土壌変化などを体系的に記録し、次の改善につなげる仕組みづくりも進んでいます。種子輸入手続きから栽培方法、日本の農業組織紹介に至るまで、蓄積した情報を冊子化し、職員や JICA 事務所にも共有しています。
資料例(左:採種方法、右:輪作化の考え方)
5.技術は人が動かすもの
この活動が進んだ背景には、
・DAL 職員の主体的な動き
・NAQIA(国立農業検疫検査機構)の調整
・JICA の支援
がありました。技術普及は、人の変化と組織の協力によって支えられている——現地で強く実感された点です。
6.今後に向けて
展示圃は作物が育つ場所であると同時に、人が育つ場所です。緑肥の根が土をつかむように、現地スタッフの経験と技術が根づき、自立的に続いていくことを目指しています。
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Vol.0「東ハイランド州で農業の力を育てる 」
Vol.1 「東ハイランド州で農業の力を育てる」 ~課題の発掘と整理~
Vol.2「東ハイランド州で農業の力を育てる」 ~緑肥導入に至るプロセス~
Vol.3「 東ハイランド州で農業の力を育てる」~緑肥試験の開始と現地で見られた反応~
Vol.4「東ハイランド州で農業の力を育てる」 ~展示圃の設置から見えてきた「人が動き始める瞬間」~
●関連リンク
・令和7年度在外公館長表彰:元JICA専門家・大野政義氏、JICA専門家・大原克彦氏
・パプアニューギニア 東ハイランド州で農業の力を育てるVol.4 ~展示圃の設置から見えてきた「人が動き始める瞬間」~
・「KAIZEN PROJECT」活動日記vol.5
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