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パプアニューギニア 東ハイランド州で農業の力を育てるVol.4 ~展示圃の設置から見えてきた「人が動き始める瞬間」~ 

#9 産業と技術革新の基盤を作ろう
SDGs
#15 陸の豊かさも守ろう
SDGs

2026.01.21

APO(やあ:東ハイランド州方言)。 パプアニューギニア・東ハイランド州ゴロカの州農畜産局(DAL)に、野菜栽培分野の隊員として派遣されている JOCV 2024年1次隊・原 大 です。これまでの活動をJICA PNG事務所内で共有したところ、他地域の隊員や、今後協力隊を目指す方にも参考になる内容との助言をいただきました。本シリーズでは、現場での調査・技術支援・関係者との協働のプロセスを、全5回にわたり整理してお伝えします。

1.展示圃と採種圃の設置
 今年、緑肥導入の柱となる展示圃と採種圃を確保しました。当初はコロフェグ地区に採種を兼ねた展示圃を置く予定でしたが、土壌・環境条件が採種向きではないことが調査で分かり、関係者と協議の結果、採種圃はゴロカ地区農地へ変更となりました。
一方、コロフェグ展示圃は、地力の低い土地だからこそ緑肥の効果がより明瞭になるという利点に着目し、予定通り設置を進めています。現在は動物侵入を防ぐ柵の完成待ちで、準備が整い次第、播種を開始するところです。

写真1 コロフェグ地区の普及展示圃予定地、各ブロックともEC値[SK1] が低く肥料分が少ないため採種地としては適してない。家畜侵入防止柵設置後播種予定
※EC値(電気伝導度)とは 土中に溶けている肥料成分量の目安となる指標で、 低すぎると肥料不足、高すぎると施肥過多を示す。

2.土壌分析から施肥判断へ
 採種圃では土壌分析の結果、土質は適しているが窒素が極めて少ないことが判明しました。そのため適量の化成肥料を投入し、既に播種を完了しています。今後は発芽状況と生育推移を観察し、播種・採種の時期や管理内容を整理していきます。

写真2 ゴロカ地区の採種展示圃、畑地のため土質は良いがEC値は低く、採種のため化学肥料の施用を決定した11月下旬に播種済み

3.職員の反応と意識変化
 緑肥の導入に伴い、現場職員の反応にも変化が出始めました。以前は説明を聞くだけの姿勢でしたが、現在は質問が出る、他者へ説明する、という動きが見られています。小さな変化ですが、ここから何かが動くのだろうと感じています。

4.展示圃は「置けば良い」ものではない
 今回の展示圃設置を通じて感じたのは、展示圃は土地があれば成立するのではなく、農家が知りたいことと条件を整理して設計する必要があるということです。土壌条件、降雨や標高などの環境、農家が求める内容(土づくり、施肥、病害虫管理など)を踏まえ、失敗を減らす仕組みを作ることの重要性を再認識しました。

5.展示圃は「人の動き」を生み始めた
 緑肥自体の生育はまだ始まったばかりですが、その前段階として、
 ・職員が相談する
 ・判断に関わる
 ・現場が動く
といった、人と組織の動きが芽生え始めています。技術の普及とは作物だけでなく、人が動き、考え、共有する仕組みが生まれることなのかもしれません。

6.今後の予定
 展示圃と採種圃の進捗は、近く開催される農家リーダーとDAL職員の会議で共有予定です。また、現地での体験型講習会の開催について職員と検討を始めています。

 次回(Vol.5)では、今回の活動を「続けられる形」にするため、任地での引き継ぎや継承の工夫について紹介したいと思います。

【過去の記事】
Vol.0「東ハイランド州で農業の力を育てる 」  
Vol.1 「東ハイランド州で農業の力を育てる」 ~課題の発掘と整理~
Vol.2「東ハイランド州で農業の力を育てる」 ~緑肥導入に至るプロセス~
Vol.3「 東ハイランド州で農業の力を育てる」~緑肥試験の開始と現地で見られた反応~

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