「KAIZEN PROJECT」活動日記vol.5
2026.01.13
JICA海外協力隊の中西と申します。現在、ミルンベイ州アロタウ(以下、任地)にある同州政府工事監督局(以下、当局)に勤務しています。さて、前回までの日記で、道路施設の予防保全による維持管理への理解を促すため、当局スタッフと共に現地で橋梁点検を実施しました。今回は、点検結果に基づいた健全度の評価と今後の対策を考えるワークショップの様子を報告します。
この度、点検を実施した橋梁は州都アロタウ郊外の州道ノース・コースト線キバ橋です(写真1)。
(写真1)対象橋梁
対策すべき損傷として、上部工ではジョイント(遊間)からの浸透水が原因と思われる遊離石灰の溶出(写真2)、下部工では橋台基礎の洗堀と沈下(写真3)があげられます。
(写真2)遊離石灰
(写真3)橋台の洗堀と沈下
前者の遊離石灰の溶出への評価については、残置された型枠を一部撤去して内部の状態を改めて把握する必要があります。現段階では健全度を評価せず、被害の拡大防止のため、路面の排水機能を維持するため定期的な清掃と、建設時にジョイントに接合するアプローチ(踏掛版)を上り勾配とするよう改善策(写真4)を提案しました。
(写真4)技術的提案
(参考図1)損傷図/縦断面図
次に、沈下している橋台ですが、橋梁の荷重を直接支持する基礎(パイリング)の保護が目的であり、橋台の沈下自体が道路橋の機能に直接影響するものではありません。しかし、これまで2年間で洗堀された河床の範囲(参考図1)が、同じ速度で拡大すれば、2年以内に基礎(パイリング)が浸食され、道路橋の機能に支障が生じる恐れがあります。
日本の道路橋定期点検要領1)では、橋梁とその部材毎の健全性の評価は健全「Ⅰ」から緊急措置段階「Ⅳ」までの4段階としています。緊急措置段階は「道路橋の機能に支障が生じている、又は生じる可能性が著しく高く、緊急に措置を講ずべき状態」と定義され、措置の期限は明示されていません。一方、JICAが支援して作成された途上国のガイドライン2)3)には、1年又は2年以内と措置の期限が示されており、2年以内とする背景として緊急措置への予備費的な予算が少ないことが窺えます。
ここ当局でも同様に次年度以降の当初予算で対応することから、工事費の予算確保に最大2年かかります。そこで、橋梁毎の健全度評価へ予算確保の観点も考慮することとし、この度の対象橋梁を2年以内の措置が必要な「緊急措置段階」と評価しました。この評価基準については、今後、橋梁点検のマニュアル化を考える際、管理する施設数を踏まえて、当局スタッフと十分に議論する必要があります。
この度、点検に同行頂いたプロジェクトマネージャーを交えてディスカッション(写真5)することができ、予防保全による維持管理への理解が少しでも進んだかと思います。
これらの結果を踏まえて、今後、それらを担う人材育成について、同僚とともに焦らず取り組みたいと思います。
(写真5)洗堀対策へのディスカッション風景
参考文献
1) 国土交通省(2025):道路橋定期点検要領(技術的助言の解説・運用標準)令和6年3月 https://www.mlit.go.jp/road/sisaku/yobohozen/tenken/yobo7_6.pdf
2) Road Development Authority, Democratic Socialist Republic of Sri Lanka・JICA(2017):Bridge Management Guidelines
3)JICA・CTI Engineering International Co. Ltd.・Central Nippon Expressway Co. Ltd.・Central Nippon Highway Engineering Tokyo Co. Ltd.(2024):The Project for Capacity Development for Bridge Management in the Republic of Tajikistan, Project Completion Report
【過去の記事】
・より良い工事をめざして:「KAIZEN PROJECT」活動日記 vol.
1
・より良い工事をめざして:「KAIZEN PROJECT」活動日記 vol.2
・より良い工事をめざして:「KAIZEN PROJECT」活動日記 vol.3
・より良い工事をめざして:「KAIZEN PROJECT」活動日記 vol.4
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