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作業療法を通じて地域に寄り添う ‐PNGで新たな挑戦を始めた神崎隊員‐

#3 すべての人に健康と福祉を
SDGs

2026.08.31

2026年5月、JICA海外協力隊としてPNGに赴任した神崎正成隊員。ミルンベイ州保健局のもと、アロタウ病院理学療法部門に配属され、作業療法士として活動しています。

PNGでは、作業療法士という職種はまだ広く知られておらず、その役割も十分に理解されているとは言えません。神崎隊員は患者へのリハビリテーション支援に加え、現地スタッフや学生への指導、作業療法の普及活動にも取り組んでいます。

●想像を超えていた退院後の暮らし

赴任後、神崎隊員が最も印象に残ったのは、病院スタッフと共に実施した訪問リハビリでした。

退院後の患者がどのような生活を送っているのか気になっていた神崎隊員は、活動開始から約2か月後に患者宅を訪問しました。そこで目にしたのは、日本とは大きく異なる生活環境でした。

両足にまひのある方が高床式の家で生活し、舗装されていない凸凹道を車いすで移動していました。さらに、障がいがあっても畑仕事など家庭内での役割を担いながら暮らしていたといいます。

「実際の生活は私の想像を超えるものでした。この生活様式に対して、作業療法士である自分に何ができるのだろうかと考えさせられました」

病院の中だけでは見えない患者の暮らしを知ったことは、神崎隊員にとって大きな学びとなりました。

●日本との違いに戸惑いながらも学ぶ

活動開始直後の病棟回診でも、大きな衝撃を受けました。

日本では大腿骨を骨折した場合、手術後すぐにリハビリを開始することが一般的です。しかし、アロタウ病院ではさまざまな事情から手術を行わず、6週間もの間ベッド上で安静を保つ保存療法が選択されることがありました。

「6週間安静」という現実に、当初は信じられない思いだったといいます。

一方で、限られた医療資源の中で行われている現地の医療を知り、「自分が教えるだけでなく、現地の人たちから学ぶことも多くある」と感じるようになりました。

●作業療法の理解を広げるために

神崎隊員は、病院スタッフを対象に作業療法を紹介するプレゼンテーションも実施しました。

しかし、反応は決して大きなものではありませんでした。

スタッフからは、「学校で作業療法や言語聴覚療法については学ぶけれど、それ以外のことはよく分からない」という声が聞かれ、プレゼンテーション中も質問はほとんど出なかったそうです。

神崎隊員は、日本で行われている作業療法をそのまま紹介しただけでは、限られた医療環境の中で働く現地スタッフにとって実践のイメージが湧きにくかったのではないかと振り返ります。

一方で、説明会をきっかけに病院スタッフから話しかけられる機会が増えるなど、コミュニケーション面では前向きな変化も生まれました。

今後は現地の状況やニーズを踏まえながら、より実践的な形で作業療法の考え方を共有していくことを目指しています。

●言葉を超えて生まれた信頼関係

神崎隊員が関わった患者の中で、特に印象に残っているのが結核性脊椎炎の男の子です。当初は足がまったく動かず、回復の見通しも分からない状態でした。それでも神崎隊員は可能な限り病室を訪れ、機能訓練に加え、身振り手振りを交えながら励まし続けました。

言葉が十分に通じなくても、「いいね」「頑張っているね」という気持ちを伝えることを大切にしたといいます。やがて信頼関係が生まれ、男の子は自主訓練やコルセットの着用に熱心に取り組むようになりました。家族にも笑顔が増え、日本に興味を持った男の子が動画を見せてくれることもあったそうです。

そして今年8月、その男の子は自らの足で歩いて退院しました。
神崎隊員は退院後の生活指導書を家族へ手渡し、地域へ戻る彼を見送りました。

●人材育成への期待

患者支援と並行して、神崎隊員は学生や若手医療従事者への指導にも力を入れています。

あるレジデントからは 「病院だけではなく、私たちの学校にも教えに来てほしい」 と依頼を受けました。

「協力隊員が持つ知識や技術をもっと多くの人に伝えてほしい」と言われたことは、神崎隊員にとって大きな励みになったといいます。

学生たちは日本のリハビリテーション技術だけでなく、日本そのものにも関心を持っており、「どうすれば日本で研修を受けられるのか」と熱心に質問してくることもあるそうです。

●自ら考え行動できる環境を目指して

神崎隊員は、帰国する時に残したいものについて次のように語ります。

「アロタウ病院や地域の障がい者の生活をより良くするために、自分たちで考え、主体的に行動できる人が増えていてくれたらうれしいです。」

現在は、医療資源の限られた地域でも活用できる「医療リハビリブック」の作成や、障がい当事者の声を聞き取る調査にも着手しています。活動はまだ始まったばかりですが、現地のカウンターパートからも協力の申し出があり、新たな挑戦が動き始めています。

「まだ赴任して2か月です。これからどんな困難があるか分かりませんが、その困難も楽しみながら全力で活動していきたいと思います。」

PNGでの作業療法の普及と人材育成に向けて、神崎隊員の挑戦は続きます。

JICAは、神崎隊員をはじめとする海外協力隊員の活動を通じて、PNGの人々と共に地域の課題解決に取り組んでいます。現地に根ざした活動や人材育成を支援しながら、一人ひとりがより良い生活を送ることができる社会づくりに貢献していきます。

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