JICA北海道(帯広)における大学連携の取り組み

JICA北海道(帯広)では、1995年のセンター開設後、帯広畜産大学との緊密な連携のもと開発途上国への国際協力を進めています。2005年の連携協力協定に続き、新たに獣医・農畜産分野の「国際協力に資する人材の育成」と「開発途上地域への国際協力」を目的に、2010年に新連携協力協定をJICAとの間で締結しました。

また、2011年8月に署名した「帯広‐JICA協力隊連携事業」では、パラグアイ共和国にてJICAが行う青年海外協力隊事業に同大学の専門知識・技術を活用することで、同国の小規模畜産農家の生計を向上させるとともに、同大学でのグローバルな視点を持った人材の育成に資することを目的としています。同大学の学生を長期(12名程度)及び短期ボランティア隊員(25名程度)として同国イタプア県に派遣し、家畜飼養管理、家畜の健康・衛生管理の向上に係る支援を2012年より開始し6年間実施します。本事業を通じ、JICAは「国際社会が求める食の安全・安心をめぐる諸課題を解決できる人材」や「重要性が増す十勝農業の国際化へ対応するための国際的視点を持った人材」の育成に同大学と連携して取り組んでいきます。

課題別研修「国際獣疫対策上級専門家育成」コースの実施

背景

世界の人口は21世紀半ばに現在の約1.5倍(90億人)に達すると見込まれることから、特に新興国・開発途上国ではこれに対応して未来の動物性蛋白質の安全を確保するため、家畜感染症による食料生産阻害の現状を打開することが懸案となっています。これら感染症のほとんどは人畜共通感染症で、食糧問題のみならず人々の健康や安全な社会活動を脅かしており、感染症のコントロールを国際社会と協調して実践する高度専門家の育成が途上国では喫緊の課題です。

世界172カ国が加盟して家畜と畜産品の安全・安心確保を目指す国際機関「国際獣疫事務局(OIE)」では、世界最先端の感染症研究組織をコラボレーティングセンターとして認定し、同組織の研究成果を新たな感染症診断法やワクチンの国際標準化に活用していますが、アジアで唯一のOIEにおいても、途上国における感染症診断技術、公衆衛生の向上を図るべく、途上国に対するコラボレーティングセンターの貢献を重視しており、2008年5月にOIEに認定された帯広畜産大学原虫病研究センターに大きな期待が寄せられています。

本研修では、教員等のスタッフと研究設備が整った同センターにおいて、人畜共通感染症の制圧に携わる途上国専門家が、感染症対策に関連する予防・診断・治療技術とその実践に役立つ周辺専門知識を習得することで、途上国での人畜共通感染症の予防・診断・治療技術の質の向上に寄与することを目的とします。

本コースによる帯広畜産大学のメリット

研修実施機関である帯広畜産大学は、本研修への受け入れを通じて構築した帰国研修員との人的関係を活用し、同大学原虫病研究センターで研究活動を行なう共同研究員への応募を帰国研修員に勧奨したり、同大学の教授陣による現地調査に際して帰国研修員から必要な情報を収集しています。本邦研修中に留まらない長期にわたる帰国研修員とのこうした協働関係が、国際レベルにある同大学の研究に寄与しています。

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トキソプラズマ原虫の分子生物学的機能解析

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LAMP法を用いたアフリカトリパノソーマ病の検出

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ウシ血清および乳からのブルセラ菌の迅速検出法の評価

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渡り鳥における鳥インフルエンザの調査

本コースの目標

人畜共通感染症に関する国際水準の知識・診断技術を習得させるとともに、公衆衛生、疫学等技術の実践や国際防疫に必要となる関連分野の研修を実施することにより、国際的な視点を持って自国の感染症対策の中心的役割を担う上級専門家を養成すること目的とします。

コース内容

導入共通科目として、人畜共通感染症、原虫病、細菌性感染症、ウイルス性感染症、食物が媒介する感染症、実験器具や実験動物の取り扱い、血清診断の基本について学んだ後、以下のいずれかの研究ユニットでの指導教官による個別指導を通じて先端研究技術を習得します。なお、帯広畜産大学原虫病研究センターや動物・食品衛生研究センターといった国内外の研究機関の専門家による、原虫病、細菌性感染症、ウイルス性感染症に関連する特別講義も提供します。

【研究ユニット】

本コースへの参加者(2011年度)

大学獣医学部の講師・動物病院スタッフ、獣医学研究所の研究員、農業省の畜産局技官等、生物学・動物学分野での学士・修士または獣医学部・医学部の卒業者で、感染症にかかる教育・研究活動または感染症対策の計画・実務に3年以上の経験がある研究職・技術職・教職にある者を募集要件としており、4か国5名が10カ月のコースに参加しています。