トンガ火山災害から1年

2023年1月18日

展示会場の日本ブースでのウトイカマヌ外相(左)、ヴァイプル首相代行(中央)、宗永大使(右)

緊急援助物資供与の写真展示

日本ブースの様子

現在のヌクアロファ市内

アタタ島からの避難住民用の移転村及び住居

野菜の生産・販売が再開

津波で冠水し枯れた木々

昨年1月15日のフンガトンガ・フンガハアパイ火山災害から1年が経ちました。1月13日と14日に、トンガの首都ヌクアロファで政府の呼びかけによる一周年記念式典・展示会が開催されました。

式典はヴァイプル首相代行(司法大臣)を主賓に、トンガ政府高官・関係機関、外交団、国際機関関係者、地元の民間・NPO関係者など多数の出席を得て13日に行われ、挨拶に立ったヴァイプル首相代行は、昨年の火山・津波災害の被害、その後の政府、民間、一般市民の復興努力を振り返り、時折涙で声を詰まらせながら、日本を含む外国政府・市民、国際機関からの支援に感謝の意を表明しました。また、ウトイカマヌ外相は、火山・津波被害の詳細とこれまでにトンガ政府が行ってきた復興努力に言及し、これら復興にパートナー国や国民、国際機関、市民団体等が差し伸べてくれた寛大な支援、連帯の志が大きな力になったこと、今後も復興に努めていきたい旨のスピーチを行いました。

展示会場では、災害後の復興に尽力した省庁や関係諸機関が復興に関連した展示を行うともに、支援を行った各国政府、国際機関などがそれぞれの活動を紹介するパネル等を展示しました。

日本のブースでは、日本大使館とJICAトンガ支所が協力し、航空自衛隊の輸送航空機や海上自衛隊の輸送船「おおすみ」による緊急援助物資の供与の状況を示す写真や、自衛隊員から贈られた日の丸の寄せ書き、千羽鶴、「よりよい復興(Build Back Better (BBB))」に向けてJICAが進めている技術的検討の資料などを展示しました。また、被災後、以前トンガで活動した青年海外協力隊員を中心に日本の多くのサポーターによって制作されSNSで公開されたトンガ応援ビデオ映像「”Cheer for Tonga! Popoaki fakalotolahi ki Tonga! トンガへエールを!”」を、作成者の許可を得て披露しました。

式典後、ヴァイプル首相代行、ウトイカマヌ外相、宗永健作日本大使など多くの方々が日本のブースを訪れ、日本からの支援について理解を深めました。

災害後1年が経ち、街中は落ち着きを取り戻しています。街中から火山灰は目立たなくなり、ヌクアロファ市の海岸沿いに打ち寄せられた護岸の岩や壊れたコンクリート堤は応急処置されています。市内の水道、電気は通常運転に戻り、各家の雨水タンクによる天水利用も再開しています。一時大きな被害を受けた農作物の生産ももとに戻ってきています。通信の断絶を招いた海底ケーブル切断も、国際ラインは災害1か月半後の昨年2月下旬に修復、回復が遅れていた国内通信用海底ケーブルの修復工事も今年の4、5月には完工予定と報じられています。

ただし、津波によって家をなくした離島や沿岸部の住民など直接の被害を受けた人々の生活再建はこれからです。昨年末にようやくアタタ島とマンゴー島の避難住民に対する移転村、住居が完成、それまでトンガタプ島の教会や地域ホール、親類の家等に身を寄せていた住民の移転が始まりました。こうした住居、コミュニティ支援は今後も続きますし、移転先での就業も課題です。津波で船が流された漁民に対しては、政府、民間から代わりの船の提供が行われていますが、まだ一部です。

津波は、トンガタプ島の他、エウア島、ハアパイ諸島での公共インフラにも被害をもたらしましたが、この復旧も道半ばです。政府は海外からの支援も活用し、被害を受けた護岸、船着き場、道路、公共サービス施設の復旧を徐々に進めていますが、資金制約も大きく対象範囲は限られます。政府としてはより災害に強い施設の整備を目指していますが、この実現には海外からの支援が不可欠な状況です。

また、ほぼ壊滅的な被害を受けた離島や海岸沿いの観光施設は、まだほとんどが瓦礫の姿のままで、持ち主の手による再建には時間がかかりそうです。災害後の国民生活支援や農漁業を含む国の産業振興も大きな課題です。

JICAは、今後もトンガの復興に向けた支援を継続していきます。