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- BOPビジネス支援の経験から得られた知見・教訓
- BOPビジネス実現のためのポイント
【A】企業の中長期戦略の中に位置付けられていること
多くの場合、BOPビジネスは短期的な収益確保が難しいのが事実です。実際、これまでの支援事業の中にも、事業性調査の結果として、採算確保の見通しが立たないと判断する例が少なくありません。しかし、そうした中でも、調査後に事業化が決定された例は存在しています。
短期的には収益に貢献しないと判断されたBOPビジネスが事業化につながっている例は、BOPビジネスが自社や現地にもたらす長期的なメリットを経営層や事業責任者が理解しているケースがほとんどです。自社に対する長期的なメリットとは、「BOPビジネスの支援実績から得られた知見・教訓」で紹介した、ブランディングの向上、イノベーションの促進、先駆者利益の獲得が挙げられます。これまでの支援事業において、事業化が判断された根拠が「採算性」よりも「将来性」や「新規性」であると回答する企業が多いことからも、短期的な採算性確保よりも長期的な戦略を見据えてBOPビジネスの事業化を決定する企業の姿が読み取れます。
そのため、調査の前に、企業の中長期的戦略におけるBOPビジネスの位置づけが明確であるか、経営層のコミットメントが示されているか、という点を確認しておくことが、BOPビジネス実現に向けて重要なポイントと言えます。
【B】実施体制が具体的かつ適切に想定されていること
事業性調査の後、BOPビジネスを誰がどのような体制で運営していくのか、また、その体制が持続的なビジネスを可能とするかについては、調査開始の前に具体的に検討されることが必要といえます。
BOPビジネスの実施主体は様々ですが、どれだけ自社のリソースを投入するかによって考慮すべきリスクは異なります。例えば、現地法人を設立するなど、自社単独の事業運営を想定する場合は、新たな市場を開拓することは容易ではありませんが、人員や資金などのリソース配分やその管理を自社で行うために事業化実現を左右する外部要因は小さいと言えます。一方、現地パートナーをはじめとする外部リソースの活用は、BOPビジネスの実現に向けて有効なアプローチとなる反面、パートナーの性質や意向が事業化実現に影響を与えることに注意が必要です。
過去にも、パートナーとの共同体制を前提に調査を進めてきたにも関わらず、事業化に向けた目的意識が一致せずにパートナーとの契約が折り合わず、事業化を見送った事例がありました。また、現地パートナーであるNGOに対して事業運営を委託したものの、現地パートナーにはビジネスとして推進していくという認識が薄かったため、事業化や事業拡大に向けて支障となった事例もありました。
最終的なパートナーの選定や、体制の構築は事業性調査の中で確立されるものですが、事前に具体的な体制を想定し、その体制が適切かを確認しておくことは重要と考えられます。
自社リソースの投入レベルに応じて考慮すべきリスク
【C】現地ニーズに沿った事業であること
現地で展開したい製品やサービスが、現地の人々が求める期待水準に合わず、受け入れられないということはしばしば起きます。顧客のニーズを捉えることはあらゆるビジネスにおいて必要ですが、中でもBOPビジネスでは、現地で必要とされている「期待水準」に配慮することが求められると言えます。
BOP層の人々は、電気や衛生設備など基本的なインフラの整備や、生活を支える安定した雇用・収入の確保、基礎教育や保健サービスへのアクセスといった、先進国で想像されるよりもはるかに本質的・根本的なニーズを抱えている場合が多いといえます。そのような根本的なニーズが満たされていない場合、例えば、使いこなすのに高度な技術が必要となるITを駆使した教育サービスの提供や、技術力や知識が要求される複数作物の栽培といった事業は受け入れられにくいと考えられます。
BOPビジネスの検討に当たっては、対象の地域において、現地が求めるニーズの優先順位は何か、基礎的なニーズが満たされているかを事前に把握することが重要といえます。それにより、BOP市場において先進国企業が陥りがちな失敗を回避することにつながります。
初期段階でのニーズ
- インフラ環境の整備(例:電気、衛生設備等の整備)
- 雇用・収入源の確保(例:農民への技術移転、能力開発の実施)
- サービスの充実(例:水、教育、医療等の基本サービスへのアクセス提供)
発展段階でのニーズ
- 高度なインフラ環境の整備(例:ITを活用したコミュニティ)
- 収入向上の取り組み(例:複数作物栽培、転作)
- 付加価値サービス(例:タブレット端末を活用した教育サービス)
【D】基礎的な事業環境を確認していること
事業環境の中でも、「事業対象地の概要」、「無料公共サービスとの競合有無」、「許認可取得手続き」は、BOPビジネスの実現を大きく左右する要素であるため、事業性調査の前に確認しておきたいポイントです。
過去の事例においても、事業環境についての事前確認が不足していたことにより、調査中の段階でBOPビジネスの実現をあきらめざるを得ない例が見られました。こうした失敗を回避するためにも、基礎的な事業環境はあらかじめ押さえておくことが必要といえます。
項目 | 確認が必要な項目の例 | 失敗例 |
---|---|---|
事業対象地の概要 | ・対象地の基本的な環境・社会情報把握 ・製品・サービスの現地への適合性 ・候補地の比較分析、適地選定、技術的調査の実施 |
気候や水質が原因でそもそも事業に必要な原料が育たなかった。 |
無料公共サービス との競合有無 |
・無料提供サービスの有無、普及の度合い ・有料提供に対するBOP層の受容性 ※競合する場合、比較優位性の高い商品・サービスでなければ販売が難しいことに留意が必要。 |
政府が競合商品を無償提供しているため、BOP層が敢えて有料で購入するインセンティブがなかった。 |
許認可取得手続き | ・関連する許認可 ・交渉が必要な所管省庁 ・類似企業による過去の取得所要日数 ・パートナーによる許認可取得の可能性 |
役所でたらいまわしにされ、許認可取得に時間がかかった。取得時期が不明確であり、結果として、追加投資ができなかった。 |
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