地域保健医療をアフリカへ!未来のリーダーを育てる青年研修!

JICAへ転職したばかりのJICA東京の新入職員・塚元が青年研修に潜入! 驚きと発見だらけの国際協力の現場をレポートします。

2022年2月10日

「そもそも青年研修って何??」 

「そもそも青年研修って何?」というあなた、お気持ちわかります。

どうやら、
「開発途上国の将来を担う若者を集めて、日本の技術や経験を教えちゃうよ!自分の国に持ち帰って、開発課題を解決するヒントにしてね!」
という、未来のリーダー育成の場のようです。詳しくはリンクを見てくださいね。

研修テーマは「地域保健医療の実施管理」、1月17日~27日の期間で6日間のWeb研修。
本来は研修員の皆さんは日本に来て学ぶのですが、今回はコロナ禍によりオンラインでの実施です。

対象はフランス語圏アフリカの医療従事者。
医師、薬剤師、公衆衛生行政官など様々な職種の12名の研修員が集まりました。

参加国は9か国。

アフリカの地図

ジブチ、モロッコ、モーリタリア、チュニジア、アルジェリア、セネガル、ガボン、コンゴ共和国、ブルンジ・・・。
アフリカの中のどこにある国なのか、皆さんわかりますでしょうか?
分からない方はぜひアフリカの地図で探してみて下さい!

さらに本研修では、JICA東京で所管しているアフリカ仏語圏のJICA留学生もオブザーバーとして参加しました。

講師陣は長野県佐久市の佐久大学や佐久医療センターなどでご活躍の医師、佐久市近隣の保健師さんや助産師さんなど、そうそうたる顔ぶれ!!

長野県と言えば、“ご長寿”日本一で有名ですよね。
世界一のご長寿大国である日本で、さらにNo.1の長野県。
その地域保健医療の取り組み・・・

これは、とんでもない秘訣を学べちゃう予感!!
さてはて、どんな研修になるんでしょう?

日本人でも思わず「へぇ~!」チーム佐久による講義

まず驚いたのが、佐久学園の盛岡理事長による「佐久地域における地域保健医療の歴史」の講義です。

1944年に開設された佐久総合病院では、“農民とともに”というスローガンを掲げ、

「田舎の医師だからと言って知識や技術が劣ってはならない!」
「村にいるときは“農民”になれ。農民の暮らしや気持ちを学ぼう。」

と、地域医療への熱い志と住民に寄り添う覚悟を持ち、地域住民の信頼を得るために様々な努力を重ねてきたそうです。

寄生虫で腹痛が起こることを演劇で伝える医師たち
(出典:佐久総合病院・映像史より)

例えば、
「講演をするな、“演劇”で分かりやすく伝えよ!」

・・・ということで、
巡回診療後の医師・看護師・事務職員が演劇を行い、住民へ保健医療の知識を伝えていたそうです。

演目は「腹痛(はらいた)」など。
なんと、脚本からメイクアップまで医療従事者たちのオリジナル!
きっと「うう、おなかが痛い~~~!!」と、迫真の演技だったでしょうね。

赤ちゃんが飲み込みやすいものをイラストで紹介する坂本医師

また、佐久医療センターの坂本医師による「子どもの事故予防」の講義では、溺水や窒息、誤飲など、乳幼児に起こりやすい家庭内での事故の原因や対策についてのお話がありました。

「子どもは声を出したり手をあげたりせず、静かに溺れるから注意して下さいね。また赤ちゃんが異物を飲み込んでも、ホームケアでは無理に吐かせないことが基本です。」

家庭内にもいろんな危険が潜んでいるんですね!

「とは言え、24時間子どもから目を離さないのは難しいです。小さなケガを通して子供は成長します。
家庭内で起こりやすい事故を知り、後戻りできないような大きな事故を防ぎましょう。」

なるほど、勉強になります!

講義のあとは質問の嵐!!  

講師からの「何か質問ありますか?」の直後、

真剣に意見を交わす研修員と講師陣

日本では、シーーーーンと沈黙して周りの様子をうかがいがちですが、
研修員の皆さんからは質問の嵐!
様々な疑問に回答が追い付かないほど!

「日本の大学では妊娠している学生はほとんどいませんが、特別な性教育をしているのですか?」
「日本の妊婦は地方でも病院で出産するのですか?自宅で産まないのですか?」

などなど、
日本人の私では考えもしなかったような質問が飛び交います。
アフリカと日本の感覚の違いにびっくりです!


最後に、研修員と講師の声をご紹介します♪

★ブルンジのバユバエさん(医師)
「家庭での子どもの事故防止という考え方に感銘を受けました。産婦人科医師として診療に活かしていきます。」

★チュニジアのリムさん(薬剤師)
「演劇での啓発活動が面白い取り組みだと思いました。日本の医療ケアは住民との距離が近いですね。私の国でも遠隔医療や訪問医療で家庭に近い医療を検討したいです。」

★セネガルのディヤさん(コミュニティヘルスカウンセラー)
「他の研修員の国のことも知ることができて良かったです。いつか日本を訪れて研修を受けたいです。」

★ガボンのヌサングさん(医師)
「ガボンの過疎地域では感染症や母子保健が大きな課題で、まさに昔の佐久地域と同じです。私は診察時に患者や家族に話しかけるようにしていますが、もっと地域へ出て行ってリーダーシップを取っていきたいと思いました。研修での学びを一言で表現するならば、やはり“予防”です。私の国では手遅れの状態でようやく病院に来る患者が多いですが、きちんと予防ができれば患者を少しでも救うことができ、費用も安く済むことがわかりました。」

★講師を務めた黒澤かおり先生(助産師・東御市立助産所とうみ)
「世界の皆さまの熱意に心を動かされました。私も毎日悩みながら一生懸命やっています。一緒に頑張ってまいりましょう!」

6日間共に学んだ仲間と「またお会いしましょう!」


6日間があっという間に過ぎた青年研修でした。

地域医療のプロフェッショナルによる専門的ながらわかりやすい講義、
研修員からの飛び交う質問と議論の嵐、
それらをスラスラと日仏通訳しながら研修を取り仕切る、スゴ腕の研修監理員・・・

全てが驚きと発見の連続で、世界と日本が繋がる現場を肌で感じました!


世界中の未来のリーダーを育てる青年研修、次はあなたの街で行われるかもしれません♪


●研修コース名:青年研修「アフリカ(仏語圏)地域保健医療実施管理」
●単元目標(アウトプット)
(ア)日本における地域保健医療体制や医療機関の取り組みを理解する
(イ)日本の保健医療職の地域保健医療実施に対する考え方を理解する
(ウ)参加国の状況を共有しお互いに学ぶ
(エ)日本を含む参加国の情報共有を通して、自国に参考になる政策や活動を整理し述べることができる
●研修期間:2022年1月17日~2022年1月27日
●研修員人数:12名
●参加国:9か国(アルジェリア、ガボン、コンゴ共和国、ジブチ、セネガル、チュニジア、ブルンジ、モーリタリア、モロッコ)

報告者:JICA東京 市民参加協力第一課 塚元夢野